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映像制作の名わき役『スクリプター(記録)』の仕事

映像制作の名わき役『スクリプター(記録)』の仕事

映像の制作現場では非常に珍しい仕事がある。それは「スクリプター(記録)」というものだ。

スクリプターとは?

簡単にいうと、監督の『女房役』もしくは『秘書』である。監督がやりたいことを実現できるように他のスタッフとの橋渡しを行うのだ。

日本映画 テレビ スクリプター協会によると

映画やドラマは、撮影が始まる前の【準備期間】、撮影を行う【撮影期間】、編集やダビング・МAを行い完成するまでの【仕上げ期間】の3つに大きく分けられます。その全てに携わり『作品のすべて』を把握することがスクリプターの仕事です。

と記載されている。

一番インパクトがあるのは、実際に映像を制作する際に「何分何秒に何がどのようにあったか」を全て記録しておくことだ。そのことで、監督がほしいシーンを後で簡単に切り出すことができる。また、他スタッフもスムーズに監督の意図をくむことができるし、場面ごとの不一致を防ぐことができる。

それ以外にも、台本を見てそれが何分ぐらいの尺になるのかを想像して尺を出したり、衣装合わせをしたりなど、仕事は多岐にわたる。つまり、セリフ、道具、ヘアメイク、衣装、音、台本……文字通り、監督が思う世界観全てを記録していくのだ。

スクリプターがいないとどうなるのだろうか? 例えば、Aという場面では小道具が置いてあるのに、Bというシーンでは小道具がなくなっているとか。同じキャラなのに髪型が変わってしまうとか不一致が起こるかもしれない。

実際、私はとある映画で同じ時系列なのに登場人物の髪型が変わってしまった映画を見たことがある。

元々の名前は「記録」

長らく「記録」「記録さん」と呼ばれてきたこの仕事は、男社会だった映像制作の世界で珍しく女性の専門職として確立され今日に至る。

監督の『女房役』とあってか監督の妻が務めることも見られる。また、監督の仕事をすべて見られる役職なため、将来的には監督、助監督へとステップアップするケースも多い。実際に、松竹ではセカンド助監督がスクリプターを兼任し、チーフ助監督、監督への昇格条件になっていたという。

第二次世界大戦で英語が禁止されたため「記録」と日本語変換され以降ずっとその名前で呼ばれてきた。しかし、日本映画 テレビ スクリプター協会が発足し「スクリプター」という名称で統一されることになった。

これは和製英語なので、本来の英語は「スクリプト・スーパーバイザー(script supervisor)」であり、英語の「スクリプター(scripter)」は台本作家の意味である。また、ゲーム業界の「ゲームスクリプター」とも全く違う仕事内容なので気を付けておこう。

どこで使われているの?

映像制作の現場全てに「スクリプター」がいるわけではない。映画の制作では自主制作であっても存在することはあるが、テレビ業界でも小さな局などのバラエティやドラマでは予算によってつかないこともある。

伝統的な仕事場であるほうが、存在することが多いように思える。

一方で、デジタル的な作業が多い現代では監督がスクリプター的な仕事も兼ねることもある。

どうすればスクリプターになれるの?

実際に、スクリプターの方の話を聞くとなり方はさまざまであった。まず一つが、専門学校を出てアシスタント的に業界へ入りそのままスクリプターになる人だ。

だが、なり方はそればかりでなく、たまたまアルバイトで興味があってはじめ、それ以来継続しているとか、多岐にわたる。専門職ということもあり多くはフリーランスである。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊するも現在は自粛中。

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