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なぜ人気?au「三太郎シリーズ」から見る好感度のつくり方

なぜ人気?au「三太郎シリーズ」から見る好感度のつくり方

さまざまな新CMがお披露目されていたお正月シーズン。その中でもロングシリーズとして長く親しまれ、年末年始に公開された新作も大きな話題を読んでいるのがauの「三太郎シリーズ」です。

日本人ならば誰もが一度は目にしたことがあるであろう本CMシリーズ。なぜこれほどまでに多くの人々の共感を呼び、愛され続けているのか? 今回は、au「三太郎シリーズ」人気の秘訣に迫ります。

もはや国民的人気。三太郎シリーズの新作って?

桃太郎、浦島太郎、金太郎にかぐや姫と誰もが知る日本の昔話のキャラクターを豪華キャスト陣が熱演するau「三太郎シリーズ」。

2015年にスタートして以来、CM好感度ランキングで4年連続一位を獲得するなど不動の人気を獲得。RPGゲーム風の演出がユニークな新作CMも大きな反響を呼んでいます。

和ぬかさんの歌う「進む!そっちだ」のフレーズが非常に印象的ですよね。楽曲名がそのまま新CMのタイトルにもなっており、ミュージックビデオ風の映像作品として捉えることもできます。視聴回数は、なんと年末年始に公開されてからわずか二週間で500万再生回数に肉薄。

au「三太郎シリーズ」は、なぜこれほどまでに多くの人々から支持を集め続けることが出来るのか?次からは、その人気の理由を三つの視点から解説いたします。

POINT1:携帯のCMなのに携帯がいっさい出てこない

【ポイント】
・商品説明やサービス紹介を省くことで顧客のターゲットを広げることができる

「三太郎シリーズ」を語る上で見過ごすことができないのは、携帯電話のCMなのに携帯を使うシーンがシリーズを通していっさい登場しないことです。

プロモーションの中で商品説明やサービス紹介を行わないことから生まれるメリットは何か? それは、ずばりより多くの人に視聴者の心に刺さる一本になることです。

マスマーケティングでは説明的なプロモーションはマイナスイメージに

CMを見ていて商品や社名の宣伝が鬱陶しいと感じたことがある人は少なくないのではないでしょうか?

もともと関心のある視聴者や潜在的な購買意欲のある顧客を前提としたニッチなプロモーションでは、そうしたアプローチは正攻法となり得るのですが、マスマーケティングに基づいて行うプロモーションでは、モノの魅力に特化したテレビショッピング的なアプローチは逆効果になるリスクを考慮しないといけません。

「面白さ」に全振した視聴者ファーストの姿勢

もとより、15秒、30秒というCMのフレームで商品やサービスを知ってもらうのは限りなく困難です。

「三太郎シリーズ」では、商品説明やサービス紹介に割く時間は捨てて、まずは視聴者にCMを好きなってもらうための“観ていて面白いストーリー作り”に時間を全振りしています。

視聴者にプロモーション自体を好きになってもらえれば、人気や認知度もあとからついてくる。こうした徹底した視聴者ファーストの姿勢が「三太郎シリーズ」では一貫しており、長きにわたる好感度の高さも繋がっています。

これは携帯電話という特性もあるのかもしれません。商品自体を知らなくても日本人であればほとんどが携帯電話を持っています。ならば絶対に携帯電話は使う、買う。あとは「どのブランドを選んでもらうか?」に全振りすることができるからです。

POINT2:ネタ・ベタ・メタの絶妙なバランス

【ポイント】
・ベタなショートストーリーは大衆受けが抜群
・シリーズものはメタな視点から変化を与える

三太郎シリーズのテーマは、通信会社の企業理念とも重なる”コミュニケーションの大切さ“です。

老若男女が知っているキャラクターに物語の王道である男女の三角関係を取り入れつつロングランを続ける本作は、みんなの共通認識をうまく利用した”ベタベタ“な作りが基本路線です。

ベタなショートストーリーには安心感があり、興味を持ってもらうとっかかりとしては最善手と言えるでしょう。

シリーズものは、メタな視線で脱マンネリ化

ただ、ベタなだけでなく、メタな視点から視聴者のネタになるような要素もさりげなく盛り込んでいいます。桃から生まれたことにコンプレックスを抱く桃太郎、名前に金と付くだけであってお金が大好きな金太郎、純情でいてどこか抜けている浦島太郎。

個性豊かなキャラクターたちには、どれも既存のイメージを覆すフレッシュな魅力があります。また、視聴者の飽きが懸念される絶妙なタイミングで新キャラも登場します。

こうした一つ先を見据えたメタな視線からシリーズものマンネリ化を防ぐアプローチは、CMに限らずさまざまなプロモーションのシーンにも援用することができます。

POINT3:音楽が圧倒的に良い

浦島太郎役の桐谷健太さんが歌った『海の声』、AIの『みんながみんな英雄』、WANIMAの『やってみよう』と言ったCM楽曲の作詞は全て本CMのデイレクターの篠原誠さんが担当。

テーマソングはどれもCMの内容とリンクしており、新作CM『進め!そっちだ!』では、和ぬかさんの歌う楽曲名とCMのタイトルが同一のものになっています。

YouTubeのコメント欄の多くが、楽曲の素晴らしさについて言及しており、プロモーションにおける音楽の重要性が際立つ一本になっていますよ。なお、視聴者からのリクエストに応え、2015年にアップされた『海の声』のフルバージョンの再生回数は一億回を超えています。

『三太郎シリーズ』のテーマソングに共通していることは、楽曲の歌詞や曲調にショートストーリーの内容と映像が完全に一つのイメージを共有していることです。

一般企業にも通用。音楽と映像で魅せるプロモーション

より多くの人の琴線に触れるプロモーションを行うためには、テロップやナレーションだけでなく、音楽と視覚に訴えた映像表現が不可欠です。

オリジナルのテーマソングを制作するのは一般企業では敷居が高いのでは?

そう思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、音楽業界とは無縁の会社がユニークな社歌を自前で制作したところYouTubeで人気を博し、新卒の応募数が増加したような前例も少なくありません。

音楽と映像で魅せるPR映像というアプローチもブランディング、マーケティング、新卒採用等を考える際に頭の片隅に入れておくことが大切です。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は、国民的CMの一つであるau「三太郎シリーズ」について少し深掘りしてみました。豪華キャスト陣による、和気藹々としたやりとりが人気の本CMですが、観光プロモーションや企業プロモーションにも活用できるアプローチも多く見出すことができます。

・視聴者に面白いと思ってもらうためにはどうすれば良いのか?
・長年にわたって高い好感度をキープするにはどうするべきか?

7年が経過しても多くの人々から愛され続けている三太郎シリーズには視聴者ファーストのエッセンスがぎゅっと詰まっています。

近年では、地方のゆるキャラや市長メインキャストにした観光動画、社長や社員のキャラクターや人柄で魅せる企業動画も非常に人気が高いので、ぜひそうしたプロモーション作りの模範としてぜひもう一度「三太郎シリーズ」をチェックしてみて下さいね!

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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