HOW TO・TIPS
グッと提案が良くなる!提案書の構成の組み方
こんにちは、プロデューサーの相場です。
本メディアを運営するエレファントストーンのプロデューサーは、お客様に1番近いポジションとして、ディレクターと一緒に映像の企画をお客様に提案する機会が多いです。そのため、「どう提案すればお客様に刺さるのか?」を日々考えています。
今回は、以前執筆した「グッと提案が良くなる!映像制作における与件整理&ヒアリング術」に続く、グッと提案が良くなる!シリーズ第二弾ということで、今回は提案書の組み立て方について触れたいと思います。
ヒアリング・オリエンを経て、アイディアも練り上がった。さあ提案書を作ろう!と思ったとき、いつもどんな風に提案書を書き上げていますか?
思いつくままに勢いで!という方もいらっしゃいますよね。天才タイプ、うらやましいです。残念ながら僕は勢いで書き上げられないので、提案書作成の1歩目として、提案書の全体の骨組みを書き出して整理するようにしています。
この方法を意識するようになってから、「説明がわかりやすかった」「納得感がある提案だった」とプレゼン後にお客様にコメントをいただく機会が増えた気がします。この記事ではそんな提案書の全体の構成の組み方についてお役に立てることが書けたら、と思っています。
※提案書のデザインやレイアウトの小技・Tipsのようなものではないですので、その点ご容赦ください。
大前提:提案書(企画書)はラブレターだ!
と、弊社のディレクターも熱弁していました。完全に同意見です。
提案書(企画書)は、あなた(会社や商品・サービス)がどれだけ魅力的で、私ならこんなこと(企画や提案)で幸せにできます!ということを伝えるものです。告白の仕方は様々だと思いますが、「シンプルにわかりやすく想いを伝えてほしい」という方も多いのではないでしょうか。時には「好きです」と伝えるだけで関係が成就することも…。
一方、ビジネスシーンではそうはいかないケースがほとんどです。「私のことは好きで付き合いたいってことはよく分かったけど、それはなんで?」=「企画案はカッコいいなって思うけど、なんで今回ウチに対してこの企画・提案が良いと思ったの?」を1本の筋書きで論じる必要があります。
決裁権を持たない企業の担当者に「ぜひこの企画やりたい!」と思っていただいても、上長が納得しないと稟議が通りません。そこで、その企画の納得感・妥当性が稟議を通す上で必要になります。ノリと勢いだけでは押しきれないことがほとんどです。
裏を返すと、素敵な企画や提案にロジックが下支えされていれば、提案が否決されにくくなるのではないでしょうか?右脳(アイディア)と左脳(ロジック)がかけ合わされば、あなたの提案は更に磨かれるはずです!
構成を考えるコツ:“空・雨・傘”のフレームワーク
ロジカルな筋書きがあるか否かで、聞き手の納得感が左右されると言っても過言ではありません。今回は“空・雨・傘”のフレームワークでロジカルな筋書きを立ててみましょう。
“空・雨・傘”のフレームワークとは、シンプルながら汎用性の高い、論理的なストーリーを組み立てるためのフレームワークです。
「“空”が曇っていて、“雨”が降りそうだなって思ったので、“傘”を持って行くことにした」
この一文の“空” “雨” “傘”は、以下の通りそれぞれが異なる意味合いを持っており、これこそがロジカルな筋書きを立てるためのエッセンスとなります。
空:“空”が曇っていて(事実)
雨:“雨”が降りそうだなって思ったので(解釈)
傘:“傘”を持って行くことにした(解決方法・提案)
こうして文章を分解すると、“空”(事実)と“雨”(解釈)によって、なぜ“傘”(解決方法・提案)を持ってきたのかの納得感を補強しています。ロジックがない提案の多くはこの補強ができておらず、“傘”が先行してしまっています。企画先行の提案といったりしますね。
お客様は映像を通して課題を解決したい・実現したいからこそ我々にご相談いただいています。だからこそ、課題に対して、なぜその企画(=解決方法・提案)だと思ったのか、をきちんと事実と解釈で道筋をたてて説明をする必要があるのです。
制作事例でのケーススタディ
弊社の制作実績を“空・雨・傘”に例えて考えてみましょう。今回は、独立行政法人国際協力機構(JICA)東京センター様のインタビュー映像制作を例に挙げさせていただきます。
<事例>
CLIENT:独立行政法人国際協力機構(JICA)東京センター様 https://service.elephantstone.net/works/675/
本ケースでお客様からご相談いただいた課題は「映像を通じて、国際協力や協力隊を知らない若い世代にJICA海外協力隊のことを幅広く知って欲しい」というものでした。この課題に対し、“空・雨・傘”を考えていきます。
まずは空です。
空:(事実)
– (例)ここ数年若い世代の応募数は横ばいだが、そこからの協力隊への参加が減少している。
– (例)参加辞退の理由には「海外での生活がどんなものかがわからないから不安で踏み切れなかった」「帰国後のキャリアが不透明で心配」といった回答が多かった。
– 若い世代(10〜20代)のYouTube利用率が97%越えで動画系メディアの利用が活発化。(参考:総務省令和3年度 主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率 )
次に雨。
雨:(解釈)
– 普段から15秒ほどのショート動画を見慣れている若い世代は説明的な冗長な動画を最後まで見てくれないのではないか。
– JICA(青年海外協力隊)って聞いたことがあるけど、なんだか堅苦しそうで自分には縁がないと思っている人が多いのではないか。
そして傘。
傘:(解決方法・提案)
– インタビューをメインとしたドキュメンタリー形式で映像を展開し、リアリティのある見せ方に。説明ではなく、体験者のありのままの言葉で伝えることで安心感を与える。
– デザイン性を感じるテンポの良い映像に仕上げることで、ターゲットである若い世代に堅苦しい印象を与えず、最後まで視聴したくなる映像に。
– 現地の写真・動画や、手書きイラストを用いたアニメーション表現・コラージュを採用する演出に。おしゃれさを出して身近に感じてもらう。
– 若い世代(10〜20代)の利用率が97%越えの媒体であるYouTubeでの広告配信による認知拡大をはかる。
ここに「テンポ感が良い映像やコラージュといった手法が若い世代にウケやすい」という調査データやファクトがあるともっとGOODですね。このようにお客様の課題に対して「事実→解釈→解決方法・提案」と筋道を立てて企画を考えることが、説得力のある提案に繋がります。また、どの事実に着目してどのように解釈をするのか?が非常に肝要です。
前回の記事「グッと提案が良くなる!映像制作における与件整理&ヒアリング術」に着眼点のヒントをまとめておりますので、ぜひご参考ください。
もっと提案が良くなる!+@で意識したいこと
クライアントが馴染みのある言葉におきかえよう
資料内に使用する単語や言葉はお客様が使うワードに合わせるのが吉です。たとえばターゲットのことを「会員様」と呼ぶお客様の場合は、資料内のターゲットに関する記述では「会員様」に合わせましょう。細かいことですがこういうちょっとしたところが、「あ、なんかウチの空気感わかってるな」と不思議と感じてもらえるきっかけになります。
知識・情報の差があるものと心得よう
「多分知ってると思うから細かいところまで記載しなくていいや」は危険なことが多いです。みなさんもご経験がないでしょうか。例えば風邪で1週間休んだ明けの数学Aの授業。「え?数珠順列ってなに…?」と、一瞬でパニックになりもうそれ以降は何も話が入ってこないイメージです。
これは提案でも同じです。一つでも分からないことがあってしこりができると、ずっと後に引きずります。一つ分からないが全部分からない、に繋がってしまうものです。そして、得てして、聞き手は分かってるフリをしてしまいます。
「ちょっと専門的かな?」と感じたら丁寧に補足する必要がありますし、提案時に本当に理解してもらえているかを確認することは大事です。
資料は一人歩きするものだと考えよう
決裁者が提案時に出席していなかったというパターンも少なくないでしょう。ただ、出席していた先方の担当者の方が自分と同じ温度感でで決裁者の方にプレゼンができるか、細かいニュアンスの説明ができるかというと…よっぽど担当者の方が自分の味方でない限り、難しいと思った方が良いです。
そのため提案書は、それを読んだだけで提案内容が分かる+誰が見ても分かる粒度と深度でまとめる必要があります。「どれくらいの粒度と深度でまとめるべきか?」は提案前に先方の担当者の方にしっかりヒアリングしておくと良いでしょう。
また、提案書の大トロ(=結論)を提案の冒頭に持ってきてあげるのもおすすめです。僕はよく「提案のパンチライン」と言っているのですが、記事やコラムで、思わず続きがみたくなるような見出しを作ることが大事なように、提案の冒頭で思わず「詳しく知りたい!」と思わせる仕掛けをつくるのは効果的です。
終わりに
以上が僕が提案書をまとめる際に意識していることでした。
エレファントストーンではアイディア豊富なディレクターが多数在籍しているのはもちろん、ロジカルなリサーチと分析が得意なマーケターも在籍している面白い映像制作会社です。「こんな視点で映像の提案書をつくっているんだ!」と、少しでもヒントになるポイントがあれば嬉しい限りです!
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