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宇多田ヒカル✖庵野秀明のトークセッションが映像クリエイター必見だった(前編)

宇多田ヒカル✖庵野秀明のトークセッションが映像クリエイター必見だった(前編)

先日、アーティストの宇多田ヒカルさんがエヴァンゲリオンで知られる庵野秀明さんとインスタグラムで対談を行ったのをご存知でしょうか? 二人が揃って公の場に出るのは今回がはじめてのこと。第三者を交えず、ゆっくりとお話しをされたのも何と10数年ぶりだそうです。

突如として実現された、日本を代表する天才クリエイター同士によるトークセッションは、
「よい映像とは何か?」
「クリエイティブとは何か?」
といった表現行為をするうえで誰もが直面するテーマについて熱く語り合った充実の内容で、まさにクリエイター必見!

そこで本記事では、およそ35分にわたる対話のエッセンスを印象的な発言をピックアップしながら簡単にご紹介します。ぜひチェックしてみて下さい!

宇多田ヒカル✖庵野秀明は当日の昼に突如として告知

二人がInstagramで対談を行ったのは、さる2021年6月26日。

宇多田ヒカルさんのインスタ生配信番組「ヒカルパイセンに聞け!」のワンコーナーでのことです。

 

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当日の昼にTwitter上で告知されるまでいっさい前情報が流れておらず、青天の霹靂のようなビッグニュースにビックリされた方も多かったのではないでしょうか。

ピンチをチャンスに変えたMV「One Last Kiss」

トークセッションは、映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のエンディング曲でもある「One Last Kiss」のMVの制作秘話からスタート。ご存知の方も多いと思いますが、本作で撮影監督を担当したのは庵野秀明さんです。

プライベート感あふれるカットが満載で、これまでになかった宇多田さんの魅力や庵野さんの映像センスを堪能できる素晴らしい作品になっています。

本作は、宇多田ヒカルさん自身がデジカメや8ミリを使用し、現在の居住地であるイギリスで素材となる映像を撮影。それを元に、庵野秀明さんサイドが編集(女性スタッフの辻田さんが担当)をディレクションするスタイルで制作されています。

人の交流が限定されたコロナ禍という状況が生み出した分業性だからこそ、これまでの庵野さんのイメージを覆すような「予期せぬ映像」に仕上がったのかもしれません。

庵野さん自身も、通常の状況だったら「いつも通りのもの」にしかならなかったはずとも語っており、まさにピンチをチャンスに変えた映像作品と言えます。

「強い画」とは何か

宇多田ヒカル「(庵野さんのいう)強い画って何だ? ってすごい考えた」(20分35秒〜)

『One Last Kiss』を制作するにあたって、庵野秀明さんが宇多田ヒカルさんにリクエストしたのは、“なるべく「強い画(え)」が欲しい”ということ。(20分28秒〜)

宇多田ヒカルさんは、この「強い画」というキーワードに呼応し、いろいろと自分なりの解釈を試みながら撮影に臨んだそうです。

ところが…。

庵野秀明「(宇多田さんが最初にくれた映像は)一枚画みたいのが多くて、アートではなくて、こう手持ちでやってるようなカメラ目線のものを下さい」(22分12秒〜)

庵野秀明「客観的な画ではなくて、カメラ目線とプライベート感のあるものがほしい」(22分27秒〜)

トークセッションのなかで庵野秀明さんは、自分を見ていてくれていると観客に感じさせる「カメラ目線の画」がいちばん「強い画」であることを繰り返し主張しています。それに対して、「アーティスティックな画」「客観的な画」は視聴者への訴求力が低いことも指摘しています。

一目で心を鷲掴みにするカットの重要性については、日本映画の世界でも「綺麗な自然描写」「既視感のないカット」など、さまざまな議論がなされていますが、「カメラ目線」というシンプルな要素を庵野さんが指摘していることは、映像作品を手がける上で大きなヒントを与えてくれます。

結局、宇多田さんは庵野さんの提案した「子供にカメラを持たせる」という手法で「カメラ目線の画」を実現しています。この内容はテレビ番組『ZIP!』でも「庵野監督が宇多田ヒカルさんにダメ出しをした」という形で報道されました。

(後編に続く)


 

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この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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