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メンズ化粧品が成長中、英コスメブランドに学ぶビデオマーケ術
新型コロナウィルスの影響で美容・化粧品業界では化粧品を中心に売り上げが大幅に低下しています。その中では唯一スキンケアの注目度があがっていますが、コロナウィルス前から成長を遂げてきたのがメンズ美容、メンズスキンケアの世界です。
これまで、美容・化粧品業界はなんとか男性にも化粧品を売ろうと取り組みをしてきましたが、あまり功を奏したとは言えませんでした。ところが、最近ではTHREEが男性向け総合コスメブランドであるFIVEISMを立ち上げ、CHANELがメンズ化粧品を取り扱うなど動きが激化。
特に資生堂UNOのフェイスカラークリエイター(BBクリームのようなもの)が大ヒットし潮目が変わってきているように思えます。
1位はアメリカ、2位はブラジル
『Cosmetic Business』によるとメンズ化粧品の世界市場は成長を続けていて日本は5位、1位アメリカを筆頭にブラジル、ドイツ、中国と続きます。
アメリカの総売り上げは92億ドル(約1兆円)というのだからビジネス規模としてはなかなかのものです。世界全体では500億ドルを超え年に5%の規模で成長を続けています。
『Beauty Business Journal』はいいます。「メンズスキンケア部門は2029年までの2けた成長が見込まれています」
いかに男性にスキンケアや化粧品を訴求するか?
では、女性と同じように広告を打ち、雑誌や宣伝で憧れの芸能人を出せばいいのでしょうか? 傾向としては男性は憧れの芸能人を真似したいと買う層はそう多くなく、それだけではうまくいかないようです。
さらには色々な壁があります。Kantarのマット・マクスウェル氏はこう指摘します。「ブランドが高齢の消費者に彼らのやり方を変え、そのカテゴリーに投資してもらうように説得することは、ブランドにとって難しい販売です」
そして、ユーロモニターも「男性は女性と比べて、余暇に買い物をする傾向が低く、プライバシー上の理由からオンラインで買い物をする傾向がある」と男性ならではの事情を説明しています。
ではどうすればいいのでしょうか?
War Paintの例
自身が体の問題から化粧品を20年間使っていたというダニエル・グレイさんは「性的にノーマルな自分が化粧品を買うのは快適とはいいがたい環境があった」として男性的なメイクアップ用品としてWar Paintブランドを設立しました。
ロンドンで始まった同ブランドは、今では英ヴァージン航空に初めて採用されたメンズスキンケアブランドとしても販売が始まっています。
グレイはいいます。「人々は男性がセフォラ(化粧品のセレクトショップ)に行って化粧を買うことができると言いましたが、にきびを持っている35歳の男性にとって、これは起こりそうにありません。」「私たちの顧客ベースの35%は45歳以上です」
War Paintを有名にしたのは『Twitter』にあげた映像がバズり、それに伴う炎上が起きたことでした。
Struggling with blemishes or dark under-eye circles?
See how War Paint can help: https://t.co/X0xaeIOBsV pic.twitter.com/1TkWzye2FE— War Paint (@warpaintformen) May 8, 2019
目の下のクマをコンシーラーを使って隠すという動画や「男性らしさ」のキャンペーン(削除されたと思われる)をうったところそれがバズり後に炎上。男性が化粧をすること、それなのに「男性らしさ」を強調したメッセージ性に批判が集まりました。
批判コメント(既に削除)に対してWar Paintは声明を出します。
Hi Amy, male skin is actually very different to female skin. If you would like to read more you can do on our site: https://t.co/2ewuX8jmh2 pic.twitter.com/LLOzeslcFV
— War Paint (@warpaintformen) May 8, 2019
男性の肌は女性の肌よりも難しい、とするもので男性こそ肌をケアするべきだという声明です。
元々War PaintはYouTubeでも「新しい男性性」といった動画をあげるなど、とにかく「普通の男性」へメイクを訴求しようというアプローチが見られます。
そこに登場するのは決して顔立ちの整った美しい芸能人ではありません。髭もじゃだったり初老の男性だったり、いわば普通の人に売ろうとしています。
なので、YouTubeもTwitterも動画のほとんどは「HOW TO」ものと呼ばれる商品の解説とその使い方というリアル志向です。このあたりは男性向けというマーケティングを意識したものでしょう。35%の顧客が45歳以上というのもうなづけます。
カナダFormenのケース
一方で肌を美しく見せたい男性とターゲットを絞り成功したのがカナダのFormenブランドです。すでに実店舗55を数え、イタリアの高級百貨店にも出店しているといいます。
こちらが一番力を入れているのは『Instagram』でフォロワーは1.2万人を数えます。そして、投稿の多くは化粧品のイメージビジュアルや創始者のアンドリュー・グレッラのちょっといかした写真です。
そう、War PaintがTwitterを中心にしていたの大してこちらはInstagram、そしてHOW TOものよりもイメージビジュアル重視と全くマーケティングが違うことがうかがえます。このあたりは対象とする層が同じ男性でも違うということがうかがえます。
潮流はジェンダーニュートラル
ニッチなケースを2つ見てきましたが、世界的な潮流は化粧品をジェンダーニュートラルにするという流れにきています。
『CNBC』はこう伝えています。「NPDのiGen Beauty Consumerのレポートによると、18〜22歳の成人のほぼ40%が、ジェンダーニュートラルな美容製品に関心を示しています」
化粧品業界の最大の取り組みは化粧品から「FOR MEN」という記述を削除することといわれています。男性用化粧品といっても中身は女性用と変わらないか、そう大した変化はありません。だいたい黒い容器にメントールが入るだけ、のような変更です。それなのにロット数の関係からか値段は女性用よりも高くならざるを得ません。
War Paintは化粧品でありながら男性性を出すことでアピールし炎上しました。ところが、化粧品業界は依然女性限定であるという雰囲気があります。つまり、化粧品はジェンダーニュートラルなものだという認識になっていくように作り手側は配慮していかなければならないでしょう。
War Paintとはインディアンが行っていた化粧です。そう、古来化粧とは女性だけでなく、男性が戦闘などの際に行っていたものでもありました。トレンチコートやセーラー服などもそうですが、気が付いたら男性発症のアイテムが女性向けになっていたということは多々あります。
しかし、そこからまた男性向けにシフトすることはあるのでしょうか? それを伝えるのはSNSであり映像の力なのかもしれませんね。
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