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媒体ごとに動画を使い分け!「クラシル」の戦略を考える。

媒体ごとに動画を使い分け!「クラシル」の戦略を考える。

レシピコンテンツを公開している「kurashiru[クラシル](https://www.kurashiru.com/) 」(以下、クラシル)。「きちんとおいしく作れる」をコンセプトに、簡単でおいしい料理レシピの作り方を動画で毎日配信しています。

クラシルはレシピ業界に動画というわかりやすさで大きな風穴を開けました。現在もいろんな取り組みを行っていて、その戦略性はお手本にぴったり。

今回はクラシルの動画戦略を分析してみました。

クラシルとは?

「くらしをおいしく、あたたかく」をコンセプトに、管理栄養士が監修した「かんたんにおいしく作れるレシピ」を提供する国内No.1のレシピ動画プラットフォームです。

【運営会社】
dely株式会社 (https://dely.jp/

【レシピ数】
約43,000件(2022年1月)

【ダウンロード数】
3,400万を突破(2022年1月)

引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000207.000019382.html

ここがすごい!クラシルの動画の使い分け

これまでレシピ業界は、誰でも投稿できるレシピサイトが人気がありました。一般の方が投稿する分、手軽に家にある材料で美味しいものができるという点でよく利用されていたのでしょう。一方で、クラシルは専門の料理人を使った「プロのレシピ」を「動画という形」で提供したことが大きな特徴になりました。

クラシルは媒体の特性に合わせて投稿する動画を変えています。「動画」「映像」と一言に戦略を立てるのではなく、きめ細かな動画の使い分けが継続した成長を支えています。

動画や映像を出しておけば、ヒットする。もはやそんな時代ではなく、クオリティの高いものでも再生回数が100に満たないなんてことがざらになってきました。

そんなレッドオーシャンになった映像業界の中で、クラシルはどのように動画を使い分けているのでしょうか?今回は、媒体ごとにご紹介いたします。

アプリやWebサイトでは「ショート動画」を強化

ZOORELでは何度もショート動画が来ていることを紹介しています。クラシルでも昨年12月に「kurashiru shorts(クラシルショート)」と呼ばれるショート動画サービスを一般に開放。

(引用:クラシルHP FAQ

プロの料理人から一般の人までが15~60秒のショート動画にして投稿をすることができるようになりました。

「タクシー」広告でビジネスマンを取り込む

私が最初にクラシルを知ったのはタクシーでした。タクシーの車内映像広告は過去にもpaymo、ベルフェイスなど名作の宝庫なのですが、その1つにクラシルもあるといってよいでしょう。

いきなり、レシピ動画が車内に流れれば「今日は何を食べようかなぁ」とか「帰りにスーパーで豚肉を買って帰ろうかな」と気になってしまうのは間違いがありません。

実はクラシルがTokyo Primeと連携しタクシー広告を始めたのは2017年の5月末、つまり5年弱前になります。その後、2018年2月よりタイアップ広告を開始。2017年12月に1,000万DLを達成すると、それまでクラシルを見てくれなかったビジネスパーソンを狙って取り込むことに成功したのです。実際、私が知ったのもその時期になります。

個人的に惹かれたのは動画がサクサクと進むこと、次にフライパンの真上という画角からか簡単に作れそうに見えたことです。それまで料理動画といえば料理人と食材を移すような斜めの角度や前からの角度が多かったので、フライパンの真上というのはとてもわかりやすく、ずばり、自分でもできそうかなと思わせてくれました。

Twitterは真上からの動画で共有を促す

Twitterではタクシー広告同様、フライパンの真上からの動画を活用。料理をしている人の主観の動画になっているため、手軽に美味しい料理を作る自分を想像しながらの視聴が可能です。クラシルのレシピを実際に試しているユーザーの投稿をリツイートしており、自分も作ったら投稿してみようかなと共有、拡散を促す戦略が見られます。

YouTubeでは長尺の動画でファンを獲得

YouTubeでは10分程度の比較的長い動画が多く、1-3万の再生回数がメイン。その中で帝国ホテル料理長の直伝レシピシリーズは50万回、100万回と再生回数を稼ぐ人気コンテンツになっています。こちらのポテトサラダも50万回以上の再生回数を突破。

つまり、YouTubeでは「プロ」に注目をした長物を軸にしています。

また、YouTubeでは先に紹介したフライパンの上という画角ではなく、テレビで長年使われてきた斜めの角度が使われています。

YouTubeではYouTube単体でファンをつけようとする一方で、もちろんリンク先として本Webサイトやアプリに誘導することも欠かしてはおりません。

Instagramはショート動画と複数投稿でレシピ帳に

Instagramは、ユーザーが投稿を保存して見返せる「保存機能」によって保存されやすい動画を投稿しています。例えば、家事に追われている方向けにショート動画を活用し、アプリへの「入口」として機能。30秒程度の動画が多いので、詳しい手順やレシピはアプリで見ようとユーザーを誘導ことができます。

また、「〇〇なレシピ3選」のように複数の動画をまとめて投稿しています。

こちらは「意外と簡単」という副題がついた和菓子レシピ5選。5つの動画をまとめて投稿することで、1つの投稿がまるでレシピ雑誌のようになっています。和菓子って作るの難しそうなイメージがありますが、スワイプしているだけでなんか作れそうな気がしてきませんか。

このように、Instagramではユーザーが自分オリジナルのレシピ帳を作るために、思わず保存したくなるような動画が活用されています。

ビジネスアカウントが開始

クラシルの特徴の1つがプロによるレシピというところでの差別化でした。今では一般の人も投稿することができ、レシピ数の拡大とともにそのクオリティが気になる方もいるでしょう。

そこでこの3月からスタートしたのがビジネスアカウントです。企業がクラシル内にチャンネルを持て、その中でレシピを公開できるというものです。

(引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000209.000019382.html

それまで企業は自分たちのホームページやYouTubeなどでレシピ動画を公開してきましたが、クオリティの割にあまり見られない、そうしたプロのレシピがWebの中に散らばっていてまとめてみることができないという課題がありました。

これからはGoogleに変わってクラシルで名だたる企業の料理動画を調べることになるかもしれません。もちろん、あまり動画やインターネットに詳しくのない企業にはきちんとサポートしてくれそうです。

まとめ

このようにクラシルでは3つの方向性から動画・映像戦略の基礎があることがわかります。

1つはYouTubeが総合動画サービスとして1強になっている一方で、クオリティの高い動画でも埋もれてしまうこと。そうした時代背景を読んで専門性のある動画プラットフォームとして自らを機能していること。

これからは同じように音楽・スポーツ・ITなどそれぞれのジャンルごとに動画サービスが細分化していく可能性を感じます。

2つ目は、SNSやタクシーCMまで含めて「動画」と一口に戦略をたてるのではなく、ターゲットごとに「ショート動画」「長尺」を使い分けていることです。

そして3つ目はビジネスアカウントを含めて「プロ」という目線を忘れていないこと。例えば、音楽配信サービスがあってそれが素人のカラオケばかりだったら嫌だと感じる人もいますよね。きちんとクラシルクオリティとして質の高いレシピを提供する、という思いが感じられます。そう、クラシルのコンセプトは「きちんとおいしく作れる」レシピサービスでした。

今後も映像づくりのロールモデルになるようなYouTubeチャンネルを見つけ次第、定期的にお届けしていくつもりです。お楽しみに!

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊するも現在は自粛中。

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