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『これがいい』ではなく『これでいい』無印良品のYouTube活用

『これがいい』ではなく『これでいい』無印良品のYouTube活用

YouTubeチャンネルを運用する、あるいは制作した動画をYouTubeに掲載するニーズが増えている昨今。企業YouTubeチャンネル紹介シリーズでは、BtoB・BtoC問わずその企業や事業、サービスの目的に沿うかたちでYouTubeチャンネルを活用している事例を取り上げます。

今回は、その独自の思想や美意識が動画コンテンツにも色濃く反映されている無印良品の「MUJIglobal」チャンネルについてお届けします!

無印良品のYouTubeチャンネル「MUJIglobal」とは?

【チャンネル創設】
2009年11月

【登録者数】
約7万人

【再生回数】
約1636万回

【概要】

洗練されたナチュラルな美意識から不動の人気を誇る無印良品。その製造・販売元である株式会社良品計画が運営するYouTubeチャンネルのひとつが、「MUJIglobal」です。

衣料品から生活雑貨、食品と私たちの生活に欠かせない衣食住の分野で幅広いプロダクトを手掛けている同社。2009年11月に創設されて以来ロングランを続けている「MUJIglobal」について、今回はご紹介いたします。

「MUJIglobal」の特徴

「MUJIglobal」の特徴は、チャンネル開設以降、徐々にコンテンツの裾野を広げながらも、一貫した視点や思想を変わらずに持ち続けていること。良品計画が大切にしている「『これがいい』ではなく『これでいい』」という価値観が、動画シリーズや動画コンテンツの一つひとつにも色濃く反映されています。

「天下取っても二合半。」というタイトルが付けられた動画シリーズでは、陶芸家や彫刻家などの文化人や地域に根を張り活動している人々の声を届けることで、無印良品が土着化していくためのヒントを探っています。

「毎日使う、くらしの基本」シリーズでは、30秒前後のショート動画でコンパクトに自社製品をアピール。「スタッフおすすめシリーズ」では、スタッフ一押しの商品を組み立て方、使い方を交えながらも一分程度の時間内で丁寧に紹介しています。

こうした「MUJIglobal」の地道な取り組みが実を結び、現在では、元スタッフや人気インフルエンサーをはじめ数多くのYouTuberが無印良品にまつわる多種多様なコンテンツを動画にして公開する現象が起きました。今では「無印系YouTuber」という言葉が使われ、「それだけで一つの動画プラットフォームが出来上がるのでは?」と思える程、ユニークな文化圏が形成されています。

「天下取っても二合半。」

2020年に40周年を迎えた無印良品が、メモリアル企画の一環として現在に至るまで60本以上の動画を公開し続けてるのが、「天下取っても二合半。」シリーズです。

上記は記念すべきシリーズ1本目の動画で、彫刻家の富井大裕さんのインタビューを通して彫刻の可能性と無印良品の今後を探求。

無印良品の良い点だけでなく、不満点や改善点をふくめ、ユーザーからの率直な意見をうかがう内容になっています。

人気ファッションブランド『N.HOOLYWOOD』のデザイナー尾花大輔さんのロングインタビューは、大きな話題を呼び3万再生を突破。

クリエイターならではの研ぎ澄まされた視点から便利で普遍的なモノづくりという無印良品の特徴が浮かび上がってくる1本です。

旧白州邸・武相荘の館長を務めている牧山圭男さんをゲストに招いた回では、白洲次郎と正子をめぐった文化色の強い話題を展開。

ヤナセ・西武百貨店で六本木WAVEやLOFT創設に参画するなど小売業の経験が豊富な牧山さんのお話は学びがたっぷりあります。

ゲストの目を通して「『これがいい』ではなく『これでいい』」という無印良品ならではの思想・理念を見つめ直した「天下を取っても二合半。」シリーズには、自社のフィロソフィーやアイデンティティーを映像コンテンツとしてメッセージ化するためのヒントが詰まっています。

毎日使う、くらしの基本

「毎日使う、くらしの基本」シリーズは、2022年4月からスタートした「MUJIglobal」の新しい企画です。

ショート動画でレコメンドアイテムを紹介するのが基本路線となっています。

Instgramでも公開されており、スマートフォンでの動画視聴を意識し、現在SNSで主流となっている正方形動画のスタイルを採用しています。

スマホで撮影されたような映像には良い意味での身近な生活感があって、くらしのなかで実際に商品を使用している自分を簡単に想像することが出来ますよね。

使い古した後の利用方法までを提案した親切設計になっている点もグッドです。

現在「毎日使う、くらしの基本」シリーズで最も再生されているのは、”みんなでつかう化粧品”を紹介したこちらの1本。子供から夫婦まで家族全員で一つの化粧品をシェアするというコンセプトが秀逸でインパクトに残りますよね。

「毎日使う、くらしの基本」シリーズは、他の動画でも毎日に寄り添う無印良品の商品を1つずつ紹介しており、白を基調とした無印の商品が日常のワンシーンに溶け込むようなかたちで商品の魅力や使いやすさ(着心地)を伝えています。ただの商品説明というよりは、無印ならではのシンプルさや品質の良さ、価値を伝えている点も見過ごせないポイントです。

スタッフおすすめシリーズ

「スタッフおすすめシリーズ」の主役は、無印良品の実店舗で働くスタッフたち。それぞれの一押しアイテム、おすすめコーディネート、収納など暮らしに役立つ情報をユーザーに向けて定期的に発信しています。

インテリアアドバイザーのスタッフが、ロングセールスを記録しているポリプロピレン収納ケースの使い方を映像でレクチャーした本動画は、13万回再生を超える大注目コンテンツに。(2022年6月時)

こうしたHowTo動画では、畳み方のポイントなど細かなところにも行き届いたユーザー目線の説明を行うことが大切です。

スタイリングアドバイザーのスタッフが、コーディネートを提案してくれる動画も好評です。

自由に折り畳めるダウンジャケットのコンパクトさが映像からよく伝わってきますよね。

商品の素材感や特徴をチェックしつつ、コーディネートに幅を広げることができるなんて視聴者からするとメリットばかりなのではないでしょうか。

こちらのスタッフは、「発酵ぬかどこ」を紹介。動画を通して、普段は店頭に立っている無印スタッフの人柄や個性が垣間見えることも人気の要因となっています。

こうしたYouTube動画による商品プロモーションには、わざわざ実店舗に足を運ばなくても顧客が商品の詳細を確認できるため、ECサイトの収益増にも繋がります。シリーズ内の他の動画もスタッフのセンスが光る魅力的な商品ばかり。限られた時間の中で商品PRとHowTo動画を同時に行うアプローチも非常に参考になるので、ぜひまとめて目を通してみてくださいね!

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はシンプルかつ普遍的なプロダクト作りでグローバルな人気を獲得している無印良品のYouTubeチャンネルをご紹介しました。

お届けしたように「MUJIglobal」では、縦型のショート動画を活用したトレンドをおさえた視聴者が見やすいコンテンツから、クリエイターとの対話を通してものづくりの本質を見つめ直した文化的なコンテンツまで、非常に視野の広い運営がなされています。

そして、その一つ一つの動画に「『これがいい』ではなく『これでいい』」という無印良品の価値観や理念が反映されています。

なぜ、多くのファンから無印良品は愛され続けているのか?その理由が垣間見えるチャンネルになっているので、本記事で紹介しきれなかった他の動画もぜひ視聴してみてくださいね。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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