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【私的映像分析】サマーウォーズの台詞「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!!」について

【私的映像分析】サマーウォーズの台詞「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!!」について

皆さん、こんにちは!エレファントストーン ディレクターの瀬戸口です。

細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』が本日7月16日(金)に公開されますね!今回は最新作公開にちなみ、細田監督の映画『サマーウォーズ』についての私的分析を書いていこうと思います。 (※以下、映画のネタバレを含みます。)

なぜ、「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!!」という台詞なのか

サマーウォーズといえば、映画の終盤のあのシーンがとても有名ですね。

そうです。主人公の健二が「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!!」と言いながら、パソコンのエンターキーを叩き、敵を倒すシーンです。

でも、なんで、「よろしくお願いします」なんでしょう。

敵を倒す決め手となる瞬間なのだから、「いっけぇぇぇ!!」などの言葉の方が自然ではないでしょうか。
健二はなぜ、あの言葉を選んだのでしょうか。

おばあちゃんの言葉

「よろしくお願いします」という言葉は、夏希のおばあちゃんも劇中で使っています。おばあちゃんは、健二に向けて2回「よろしくお願いします」と言っています。

1回目。健二と夏希が“自分たちは付き合っている”と嘘をついたとき。
おばあちゃん「健二さん、どうぞ、よろしくお願い致します。」
健二「いや、こちらこそ、よろしくお願い致します。」

2回目。嘘がバレたあと。おばあちゃんと健二が花札をするシーン。
おばあちゃん「もし私が勝ったらーーーあの子をよろしく頼むよ。〜〜夏希を、よろしく頼むよ。」
健二「僕は、まだ僕は自分に、自信が持てません。」
おばあちゃん「あんたならできるよ。」
健二「ーーーやってみます、としか今は言えません。」
おばあちゃん「私の勝ち。ハハハハハ」

嘘の自分と本当の自分

1回目の「よろしくお願いします」に対して、2回目の「よろしくお願いします」は健二が返答をできずにシーンが終わります。

1回目、健二は「東大生で、旧家の出身で、アメリカ帰り」という設定の、嘘の自分としておばあちゃんに返答しています。それに対して2回目は、高校生の、ちょっと頼りない本当の自分のまま、おばあちゃんと会話をしています。

つまり、健二はおばあちゃんの「よろしくお願いします」に対し、“嘘の自分”として返答はしたけれど、“本当の自分”としては返答できていませんでした。

健二が映画の終盤、エンターキーを押すときに言う「よろしくお願いしまぁぁぁすっ!!」という言葉は、
おばあちゃんの2回目の「よろしく頼むよ。」に対しての、本当の自分としての返答なのではないか。というのが、個人的な予測です。

「陣内家の人間に半端な男はいらない。じゃなきゃ、家族や郷土を守れるものかい。」

と劇中でおばあちゃんが言っているように、陣内家の男は家族や郷土を守れなければならない。おばあちゃんは「健二ならできる」と言うけれど、健二は自分がそんな男になれるとは思わない。

「よろしくお願いしまぁぁぁすっ‼︎」は、そんな健二がOZのパスワードを解いて家族を守る瞬間であり、
陣内家の一員になった瞬間であり、おばあちゃんへの返答をした瞬間なのでは! と、想像しています。

ちなみにの話。高校野球のシーンについて

ちなみにもう一つ、サマーウォーズについてお伝えしたいことがあります。テレビ放映ではカットされがちな、高校野球のシーン。(出場しているのは、夏希の親族である了平くんです。)

あのシーン、実は健二たちのOZでの戦いと、シンクロしているのです。

例えば健二たちが優勢のときは、甲子園で了平のチームも優勢で逆に健二たちがピンチのときは、甲子園で了平のチームもピンチに陥っています。面白い。

もしサマーウォーズのノーカット版を観る機会があれば、ぜひそこにも注目してみてくださいね。

さいごに

さて。大変長くなってしまいました。ここまで読んでくださって、ありがとうございます。とても嬉しいです。

もうすぐ夏ですね。おうちでゆっくり過ごす時間に、大切なひとと過ごす時間に、お友達と一緒に、健二と夏希の、一夏の物語を観てみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

瀬戸口史賀
エレファントストーンのディレクター

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