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アメリカを代表する現代アーティスト。リチャード・セラ展が東京で開催中

アメリカを代表する現代アーティスト。リチャード・セラ展が東京で開催中

アメリカを代表するアーティストのひとり、リチャード・セラ。現在、日本では2年ぶりとなる彼の個展が、青山のファーガス・マカフリー 東京で開催されています。

ミニマルな彫刻で知られるセラですが、その作品領域は多岐にわたり、映像表現の面でも確かな爪痕を残しています。本記事では、これまでのリチャード・セラの足跡をたどりながら、開催中の個展について紹介したいと思います。

リチャード・セラについて

アメリカを代表する世界的な彫刻家

カルフォニア州出身のリチャード・セラ(Richard Serra)は、アメリカを代表する現代アーティストの1人です。巨大な金属板を加工して作られる彫刻作品、抽象的なドローイング作品等、ミニマリズムの表現領域を押し広げ、現在に至るまで世界のアートシーンに大きな衝撃を与え続けています。

映像表現でも高い評価を得る

他分野の芸術家とのコラボレーションを好むセラは、1968年から10年ほどの間、フィルムやビデオを用いた作品の制作も精力的に行っていました。実際に、彫刻的なテクスチャーを持つ独特の映像世界を構築し、多くの美術史家やアーティストから高い評価を得ています。

リチャード・セラの事例紹介

①映像デビュー作『鉛をつかむ手』

リチャード・セラが自身のスタイルを確立していった1960年代は、家庭向けのビデオ機材が販売され、映像表現のすそ野が急速に広がっていった時代です。そんな中、1968年に制作した『鉛をつかむ手』は、リチャード・セラの映像表現の端緒を開いた作品です。

セラにしか撮れない彫刻的な手触りを持つフィルム作品で、独自の世界観がよく表れています。各媒体の特徴や固有の性質を見極め、表現の可能性を拡張していく。カテゴリーやジャンルを自由に横断しながらも一貫する彼の創作態度は、作品・商品のプロモショーンを考える上でも参考になります。

②創作プロセスを明示した映画『フレーム』

リチャード・セラは、キャリアの早い段階からロシア映画や実験映画に強い関心を寄せており、その影響も垣間見える作品がショートフィルム『フレーム』です。1970年代の芸術表現を特徴づける“プロセスの提示”の要素をふんだんに取り入れています。

この作品でリチャード・セラは、創作者がフィルムを通して対象化したものと、私たちが直感的に視覚から受け取ったイメージの違いを具象化しています。「同じ空間や事象を扱いながら、なぜ人間の目とビデオ機材では見え方が違うのか?」という根源的な問いから出発した本作は、自らを制作のプロセスに巻き込んでおり、そのプロセスもまた映像として残しています。

こうした自己批評的かつ自己言及的な視点は、現代では“メタ”というカジュアルな言葉で広く定着しており、自身のクリエイティビティを再考して拡張する上で欠かせない要素になっています。

➂伝説的な屋外アート 『傾いた弧』

1981年に制作された『傾いた弧』は、20世紀の屋外アートで最も知名度のある作品の一つです。マンハッタンの連邦ビルの広場前に建築され、1989年までの8年間展示された本作は、アートと公共性の関わりを巡りニューヨーカーたちの間で様々な議論を巻き起こしたことでも有名です。

上の動画で紹介されている『傾いた弧』は、巨大な建造物です。リチャード・セラのアートの多くは、スタジオから抜け出して公共の場に設置されてこそ真価を発揮し、その圧倒的なパワーと迫力は他に類を見ない個性を放っています。『傾いた弧』は、展示される空間を深く意識して設計されており、“場所”や“時間”というアート作品の成立条件について問い直すきっかけを与えてくれる作品でもあります。

④砂漠をアートに変えた代表作『East-West/West-East』

2022年にワールドカップが開催されたカタールは、スポーツの分野にとどまらず、国家的なプロジェクトとして文化芸術活動に力を注いでいます。昨年、同国で世界的な現代アートの巨匠オラファー・エリアソンの新作が公開され大きな話題になりましたが、2014年にはドーハから西に60km離れた砂漠エリアにリチャード・セラのインスタレーション作品を展示し、国際的な注目を集めています。

彼の代表作でもある『East-West/West-East』は、無機質な4枚の鋼板から構成された高さ約15mの巨大なインスタレーション作品です。縦長の黒い物体が置かれるだけで荒涼とした砂漠の眺めが、アーティスティックで崇高な景色に一変していく。そんなアートの魔法を感じさせてくれるリチャード・セラの創作は、彫刻の枠にとどまらずみるものに大きなインスピレーションを与えてくれます。

展示空間を作品の一部として自身のクリエーションに包摂する彼のアイデアは、映像制作の領域とも深い関わりがあるので、ここで紹介できなかった作品もぜひチェックしてみてくださいね。

リチャード・セラ展概要

現在、青山のファーガス・マカフリー 東京で開催されているリチャード・セラの個展では、壁に設置されるインスタレーション・ドローイングを展示。板金の巨大な彫刻で一世を風靡し名声を得たセラの現在地を概観することが出来ます。

【会期】 2023年9月30日~12月23日
【会場】 ファーガス・マカフリー 東京
【住所】 東京都港区北青山3-5-9
【開館時間】 11:00~19:00
【休館日】 日、月、祝
【アクセス】 地下鉄表参道駅A3出口徒歩5分
【URL】 http://fergusmccaffrey.com

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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