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自転車の話とクリエイティブの話。自転車とクリエイティブってちょっと似ている。

自転車の話とクリエイティブの話。自転車とクリエイティブってちょっと似ている。

こんにちは、映像ディレクターの齊藤雄基です。

自転車が好きなので、クリエイティブと絡めながら自転車の話をしたいと思います。(結果的に自転車の話が9割になりました)

自転車は、乗るのも、見るのも、いじるのも、ロードも、MTBも、ママチャリも、なんでも好きです。どのくらい好きかというと、1台の自転車をバラバラに分解して、磨いて、元に戻しながらお酒を飲むくらい好きです。今はあまり乗れてませんが、以前はレースに出たり、移動はほぼ全部自転車だったり、休みの日は大体100km以上走ってたりしたくらい好きです。

あまり大きな声では言えませんが、映像より自転車の方が好きです。むしろ自転車をお仕事にしたいくらい、、ですが、そこはまぁワークライフなんとかというやつで、映像のお仕事をなんだかんだで25年ほどやっています。

自転車の何が好きなのか

好きなところはたくさんありますが、とりあえず一つ挙げるとしたら“自分のチカラを最大限引き出して、自分だけでは到底出来ないような体験をさせてくれる”ところです。これは深掘りしていくとベアリングの球(機械のなかの軸をなめらかに回転させる部品)の話になり、幼少の頃から金属の球体が好きというフェチの領域に入ってしまうので、今回はだいぶ手前のところで止めます。

自転車には色々な種類があります。僕は自転車という構造のものは基本全部好きなのですが、今回は例としてわかりやすいのでロードレーサーで話します。ロードレーサーとは、昨今は街中でもよく見かけるようになった、細いフレームに細いタイヤ、ドロップハンドルという端の方がクルッとなったハンドルがついているあれです。弱虫ペダルでみんなが乗っているやつ。想像できますかね?

ロードレーサーという呼び名の通り、そもそもは舗装路で競争をするための自転車です。ざっくりいうと、遠くにあるゴールまで少しでも速く行くための自転車です。ツール・ド・フランスという、自転車に興味のない人もちょっとは聞いたこともあるのではないかという世界で一番有名なレースでは、約3500km前後、高低差2000m以上の起伏のあるコースを約23日間に分けて走り、その総合タイムを競います。そんなレースで使うような自転車です。

さすがにツール・ド・フランスに出るような超人たちとは比較にもなりませんが、ちょっと練習すると僕のような素人でも1日で100km走ったり、富士山の5合目まで登ったりすることが出来るようになります。徒歩で1日100kmは時間的にも体力的にも到底無理です。でも自転車があれば出来ちゃうのです。もちろん動力は、エンジンでもモーターでもなく、自分の筋肉だけで。

自転車ってクリエイティブに似ている

自転車の何が好きなのかをお話ししましたが、自転車ってブランデッドムービーに似ている気がしています。

ブランデッドムービーとは企業や商品、ブランドの価値を確立するための映像のこと。その企業、そのブランドならではの理念や想いを、その企業、そのブランドにしか出来ない言い方で伝えるものです。

あくまでもベースにあるのはその企業、そのブランドの想いやチカラ。そこを掘り起こし、目的に応じて最大限効果的に伸ばす。その映像があることで自分たちに自信を、誇りを持つことができ、更なる活力を生み出せる。そんなクリエイティブがブランデッドムービーです。

あれ、これって自転車みたい!自転車みたいなクリエイティブがしたい!自転車みたいなクリエイターになりたい!
ちょっと強引ですかね。

自転車が速く、遠くまで走れるひみつとクリエイティブとの共通点①

なぜ自転車(ロードレーサー)に乗ると、速く、遠くまで走れるのでしょうか。理由の一つはポジションにあります。

街中でロードレーサーを見かけた時に「サドルが高いな〜」と思ったことはありませんか。あの高さには理由があります。一般的にサドルの高さを決める時は、地面に足がどのくらい着くかで決めることが多いと思います。が、ロードレーサーの場合は違います。

止まる時ではなく走る時、ペダルの回転を最もスムーズにできる高さ、ペダルを回転させている時に脚力を最も効率的に使えるような高さ=ペダルの下死点(ピストンが一番低い位置)で膝が少し曲がるくらいにセッティングします。当然、この高さでは地面に足は付きません。が、それで良いのです。止まるためのポジションではなく、走るためのポジションなのですから。

このサドル高には別の効果もあります。サドル高が低いと主に前ももの筋肉・大腿四頭筋を使って自転車をこぐことになります。これは、一つの筋肉に大きな負荷をかけている状態と言え、疲れが溜まりやすくなります。

一方、サドルを高くすると前ももの筋肉だけでなく、ももの裏側(ハムストリングス)やお尻の筋肉(大臀筋)、ふくらはぎの筋肉(ヒラメ筋)なども同時にバランスよく使え、疲労を分散しつつ、よりパワーが出せるようになります。ロードレーサーのポジションと言えば前傾姿勢。ロードレーサーに乗ったことのない人からはあの体勢がきつそうとよく言われますが、実は逆。低いサドル高で上体を起こし、サドルにどっかりと座る姿勢だと体重のほとんどがサドルにかかってしまいますが、サドルを上げて前傾姿勢になることで、体重をサドル・ペダル・ハンドルで分散でき、やはり疲労を軽減することが出来ます。

そしてロードレーサーといえばドロップハンドル。この形状にも理由があり、握る場所はざっくり上ハン(フラット部分)・下ハン(ドロップ部分)・ブラケット部の3箇所。上り坂、高速巡行、パワースプリントなど状況に応じて握る場所、乗車姿勢を変えることで、ここでも疲労を分散しつつ、状況に応じた最適なパワーが出せるようになるのです。

速く、遠くまで走るために最適なパワーが出せるよう、自分の体勢と自転車本体が馴染むようにすり合わせる自転車企業、そのブランドの想いやチカラを伝えられるよう、お客様と制作チームで最適な伝達手法をすり合わせるブランデッドムービー

自転車とクリエイティブ、似ている気がしてきませんか。

自転車が早く、遠くまで走れるひみつとクリエイティブとの共通点②

次は自転車の機材について。ロードレーサーの重さは約8kg前後、重くても10kg以下のものがほとんどです。これは実際に持ってみると思わず「軽っ」と言ってしまうくらいの軽さ。車でも重いものほどガソリンの消費は多くなるので長距離移動に軽さは重要なポイントです。

また、軽くするからと言って剛性を犠牲にすることは出来ません。特にレース用の機材ではプロレーサーのとんでもないパワーを、逃すことなく推進力に変える必要があります。走行中に壊れるなんてもってのほか。軽さと強さを両立するためにフレームのパイプ一つをとっても材質や形状、場所によって厚みを変えるなど様々な工夫が凝らされています。

この工夫は、フレーム以外のパーツをとっても同様です。ボトムブラケットやハブなどの回転系パーツやチェーンなどは精緻に磨き込まれ、プロレーサーのパワーのロスを極限まで減らします。手の大きさに合わせて細かく引きしろを調整できるレバー類、足の長さや手の長さに合わせて長さのバリエーションが細かく揃うクランクやステムは、それぞれの人の体のバランスや体力や好みに合わせて形・硬さなどを調節可能です。無限の組み合わせで一人ひとりのベストポジションを出すことで、その人のチカラを最も効率的に活かし、早く、遠くまで、そして何より楽しく移動できるようになります。

ここまでロードレーサーを例に話をしてきましたが、他の自転車でも全く同じことが言えます。ロードレーサーの場合は遠くにあるゴールに早く行くという目的のための機材選び・セッティングができますが、他の自転車の場合も同様、長期間の旅に行くため、山の中を楽しく走るため、子供を毎日送迎するため、たくさんの家に新聞を届けるため、健康のため、運動不足を解消するためなどなど、各目的に合わせてパフォーマンスを最大限発揮できるよう、ワンメイドの機材選び、自分だけのベストセッティングが可能なのです。

(もちろん、いわゆるママチャリだって出来ます。僕のママチャリは自分でオーバーホールをして回転パーツのアタリを全て取り直し、各パーツを自分の体型に合わせて組み直した自分にとって最高のママチャリです)

そしてそのように組み上げた自転車は、その人のパワーを単純な移動のための推進力にするだけでなく「自分のチカラでこんなことまで出来るんだ!」という自信・誇り、更なる成長に向けた活力のきっかけにもなり得るのです。

ブランデッドムービーも完成系は無限にありますが、その企業・ブランドにとってのベストの道を探してワンメイドで制作することで、ターゲットに本当の想いが伝わるだけでなく、その映像があることでその企業・ブランドに属する自分に自信を、誇りを持つきっかけになり得るのです。

自転車ってもはやクリエイティブ?

まとめ

という感じで長々と偉そうに書きましたが、僕が1日100km以上走っていたというのも昔の話。

10年少々前に息子が生まれてからというもの、レースに参戦しなくなり、そこに向けての練習走行もしなくなり、それに合わせて最新の機材にも疎くなり、最後にガッツリ走ったのはいつだったか思い出すのも出来ないくらい。

こうやって改めて自転車についてずっと考えていたら、メラメラと自転車熱が再燃してきました。息子もだいぶ大きくなったことだし、一緒にロングライドに行けるようにまたトレーニングしようかな。まずは妻用のロードレーサーを息子用に改造しようっと。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございます。ブランデッドムービーと自転車整備のご依頼、お待ちしてます!

この記事を書いた人

齊藤雄基
エレファントストーンのディレクター

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