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公募×地方PRの新潮流。地域の魅力が伝わる自治体CM
画像引用:https://www.city.uonuma.lg.jp/page/1265.html
こんにちは!ZOORELを運営する映像制作会社・エレファントストーンです。
近年、都道府県をはじめとした地方自治体では、インバウンドによる観光促進だけでなく、首都圏からの移住促進や地域の魅力発信を目的として、公式の「CM」制作に力を入れるケースが増えています。
また、各地域のテレビ局が主催する「ふるさとCM大賞」では、多くの自治体が地元の魅力を伝える作品を出品しており、視聴者を惹きつけるCMが毎年数多く誕生しています。これらの“ふるさとCM”は公募形式で制作されることが多く、多様なクリエイターが参加することで、地域全体を盛り上げるムーブメントにもつながっています。
今回は、そんな中から2025年に公開された作品を中心に、個人的に面白いと感じたCMをいくつかピックアップしてご紹介していきます。
事例紹介
1. 魚沼市(新潟県)
2025年の年明け早々にアップロードされたのが、新潟県魚沼市の「ウォーターボーイズ」。こちらは「第5回 新潟ふるさとCM大賞」で見事グランプリを受賞した作品です。
“ウォーターボーイズ” をテーマに掲げつつも、名作映画を思わせる…いや、全然思わせない独自路線で攻めている点がまず印象的。魚沼といえば「魚沼産コシヒカリ」が全国的に有名ですが、その美味しさを支えているのが、大地に育まれた清らかな“超軟水”。この地域の魅力をどう伝えるか、作品はコミカルなアプローチで挑んでいます。
登場するのは、地元の青年2人。魚沼の良さをアピールしようと精一杯頑張っているのに、なぜか表情がずっと硬い…。実はこれ、“劇中劇” の構造になっていて、「表情は硬いけれど、水は軟らかい」というギャップを活かしたPRに仕上がっています。ユーモアと地域の魅力が絶妙に融合した、ふるさとCMらしい快作と言えるでしょう。
同じく魚沼町の作品です。食べ過ぎ禁モツとして、実は名物の豚のモツ焼きを紹介しています。知られざる名品を豪快にかっくらう姿は、見ていてこちらもお腹が減りますよね。
2.川上村(奈良県)
2025年の奈良県「ふるさとCM大賞 NARA2025」でグランプリを受賞したのは、奈良テレビ放送による川上村のCMでした。
冒頭は“目のアップ”から始まり、一瞬ハッとさせられます。しかしその後は一転、映画のワンシーンのように、バイクで走りながら川上村の豊かな自然に触れていく爽快な映像が続きます。尺は50秒とCMにしてはやや長めですが、それを感じさせないほどの疾走感が印象的です。
さらに、制作者からは次のようなコメントが寄せられています。
「すべての人に終わりがあり、そのときに“幸せだった”“幸せじゃなかった”とさまざまな思い出が追憶へと灰になっていく。
だからこそ、終わりを迎えるその日までに、できるだけ多くの“思い出”を積み重ねてほしい。この作品を通じて、少しでも“思い出”を感じていただければ幸いです。」
映像の疾走感と、メッセージの静かな深み。その対比が見る人の心に残る、グランプリにふさわしい作品と言えます。
3. 久万高原町(愛媛県)
「ふるさとCM大賞 えひめ2025」の受賞作品として紹介されたのは、2人の老夫婦が、かつてデートなどで訪れた思い出の場所「面河渓(おもごけい)」を再び訪れるという内容のCMです。
白黒写真で映し出される“過去”と、現在の夫婦が歩く“今”が交錯し、かつての思い出が現在へと静かにつながっていく構成が印象的。時間を超えて積み重なる「記憶のレイヤー」がやさしく描かれています。
制作者からは次のようなコメントが寄せられています。
「『思ひ出の面河渓』として、思い出の場所を改めて訪れ、昔を懐かしみながら、
新たな思い出を紡いでいく夫婦をイメージしています。」
過去の記憶に浸りながら、今この瞬間の“新しい思い出”も同時に重ねていく——そんな温かいテーマが、観る人の心に静かに寄り添う作品です。
4. 燕市(新潟県)
「第5回 新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを受賞したのが、金属加工のまちとして知られる燕市のCMです。やかん、洋食器、ワクチン運搬容器など、多彩な産業を持つ燕市ならではの強みを活かし、“燕の人”を“エンジン(ENJIN)”と読ませることで、燕市の原動力=人の力を強調した構成になっています。
制作者からは、次のようなコメントが寄せられています。
「燕のものづくりに携わる燕市民の誇りと情熱。
戦後、オイルショック、コロナ禍など、困難を乗り越え続けてきた不屈の精神と、人々の幸せを願う慈愛の心。
日本の暮らしを豊かにする原動力“エンジン”が燕人のものづくりです。いつもあなたのそばに。あなたの身の回りには、燕で作られたものがあふれています。」
“技術”ではなく“人”を主役に置くことで、燕市が持つものづくり文化の強さと温度感を力強く伝える作品です。地域PRとしてはもちろん、ブランディングの観点でも非常に完成度の高いCMと言えます。
5. 愛南町(愛媛県)
「ふるさとCM大賞 えひめ2025」で審査員特別賞を受賞した作品が、愛南町をテーマにしたCMです。大学生と思われる主人公が、松山から車で約2時間かけて愛南町を訪れ、豊かな自然や新鮮な魚のおいしさに心を動かされるストーリーが描かれています。
恋愛や大学の単位など、若い世代が抱えがちな悩み。しかし、愛南町の大きな自然の前では、それらが少し小さく見えてくる——。そんな“悩める同世代へ向けた問いかけ”が込められた構成になっています。
制作者からは、次のようなコメントが寄せられています。
「愛南町までは車で片道2時間強かかる。
それでも行ってみたいと思えるほどの魅力を、映像を通して幅広い世代に伝えていけたらと思います。」
自然の圧倒的なスケールと、そこで感じる心の軽さ。そのギャップがまっすぐ胸に届く、爽やかな作品です。
まとめ
このように、地方自治体・特に市町村レベルの映像制作が、公募形式の“ふるさとCM”を通じて今とても盛り上がっています。どの地域にも、名物・歴史・大自然など魅力的な資源はたっぷりあります。しかし、それらをどう表現し、どう伝えるかという部分では、まだ十分に活用しきれていないケースも少なくありません。
ふるさとCMは、そうした地域の“埋もれた魅力”を掘り起こし、映像として新たな価値を与える場として大きく機能しています。地域の魅力が映像という形で広がっていく様子は、まさに地域プロモーションの理想的な姿と言えるでしょう。
あなたの街にも、きっとまだ見ぬ魅力がたくさんあるはずです。ぜひ“ふるさとCM”というフィールドを活用して、その魅力をどんどん発信してみてくださいね。