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CG技術がスゴすぎる!21世紀の美麗CG映画たち
1960年代初頭に開発されてからというもの、日進月歩の進化を遂げてきたCG(コンピュータグラフィックス)の世界。前回は、その簡単な歴史を1980年代・90年代の映画の名作とともに振り返ったが、今回は素晴らしいCG技術をもちいた近年の名作をいくつかピックアップしてご紹介したい。
ハリ―・ポッターと秘密の部屋(2002)
この誰もが知るファンタジー映画の名作では、「リアルタッチな光の表現」に大きな革新がなされている。
それまで3DCGでの光の表現は、表面で光が反射するマテリアル(材質)にとどまっていたが、2001年に開発された「サブサーフェイススキャッタリング」(Subsurface Scattering/通称SSS)の実用化によって、光を内部に透過するマテリアルにおいても、より現実世界に近い形で光の効果を表現することが可能となったのだ。
3DCGキャラクター・ドビー(予告編では11秒から登場)の皮膚表現にSSSの技術が活用された本作をきっかけに、ライティング技術の進化にもシナジーが起こり、私たちは実写と見まがうような人体・物体の表現を日常的に映像の世界で目にすることができるようになっている。
アバター(2009)
近年のCG映画といって、多くの人が真っ先に思い浮かべるのがこの『アバター』ではないだろうか。構想に14年を費やした巨匠ジェームズ・キャメロン渾身の一作であり、SFラブロマンスの金字塔でもある本作は、その圧倒的な3DCGのクオリティで全世界を驚愕させ、当時の全世界興行収入歴代1位を記録した(2019年公開の『アベンジャーズ /エンドゲーム』が更新)。
地球のジャングルを思わせる密林に深く覆われ、神秘的な美しさをたたえる遥か彼方の星パンドラを舞台に、ひとりの男の愛と戦いの旅を通し、人類と異星人の共生の可能性を探る壮大な物語。
その息をのむほど美しい異世界の映像は、リアル空間での身体の動きと顔の表情をそのままバーチャルな3DCGに反映する「パフォーマンスキャプチャ」の技法をいち早く取り入れており、公開から10年以上経過した今でもまったく色褪せていない。
個人的には、異星人の豊かで細やかな表情の動きが大好きな作品。何度見てもすぐ身近に彼らが存在しているかのような気がして、会いたくてたまらなくなってしまう。現在の3DCGのワールド・スタンダードを作り上げた映画であり、今後も映像製作の羅針盤として参照されつづけることだろう。
パシフィック・リム(2013)
太平洋の深海から次々と出現する怪獣「アックスヘッド」と人型巨大兵器「イェーガー」の人類存亡をかけた戦いを壮大なスケールで描いた、SFロボット映画の傑作。
監督のギレルモ・デル・トロは日本の特撮、アニメ、マンガに造詣が深いことで知られ、本作のいくつかのシーンやデザインには名作『機動警察パトレイバー』へのオマージュが散りばめられている。
VFX(視覚効果)は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』『ハリー・ポッター』『トランスフォーマー』シリーズを手がけたインダストリアル・ライト&マジック社が担当。
世界各地で繰り広げられるバトルシーンは、ハリウッド史上最大級ともいえるもので、なかでもほぼ全編CGで作製された香港での壮絶な戦いは映画ファン必見!
アクション映画やバトルものが不得意な私でも、その重厚感あふれるCGと超ド級の大迫力な展開にワクワクとドキドキが止まらなかった。
ハリウッドが惜しみなく資金を投じ、錚々たるスタッフとキャストで日本の特撮・アニメ・マンガへの愛とリスペクトをこめて生み出した作品なので、怪獣やロボットが苦手な人にもぜひ見てみてほしい。
なお、ギレルモ・デル・トロ監督は、2017年に発表した『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー作品賞と監督賞を受賞している。『パシフィック・リム』とはうってかわり、異形の半魚人と発話障害のある女性の純愛を描いたデル・トロ版人魚姫ともいうべきラブロマンスの傑作に仕上がっているので、そちらもあわせておススメしたい。
ゴースト・イン・ザ・シェル(2017)
SFアクション漫画の金字塔である『攻殻機動隊』をハリウッドが実写化した作品。
インターネット空間への直接的なアクセスを可能とする「電脳技術」が発達した2029年以降の日本を舞台に、脳以外はすべて「義体化(サイボーグ化)」されたエリート捜査官・草薙素子がサイバーテロ事件の数々を解決していくストーリーだが、本作の見どころは、なんといっても超美麗に描かれた近未来のテクノロジーの数々だろう。
「電脳・人工知能」「義体・ロボット」「光学迷彩」「空間ディスプレイ」といったサイバーパンクSFを特徴づけるガジェットが見事に映像化されており、『ブレードランナー』や『マトリックス』『マイノリティ・リポート』といったSF映画の名作を継承しつつも、香港や台湾のような異国情緒もただよう『攻殻機動隊』ならではの未来都市の情景は、眺めているだけで楽しい。
私は原作の大ファンということもあって、正直、ハリウッド化・実写化へは不安も大きかったのだが、予告編で高層ビルから夜の海にダイブする草薙素子のリアルな姿を目にし、すっかり心を鷲掴みにされてしまった。
白人女性であるスカーレット・ヨハンソンが主役をつとめたこともあり評価は二分したものの、実写化不能ともいわれていた原作の世界観がパーフェクトに再現されており、押井守(アニメ版監督)も「スクリーンの中にゴーストが吹き込まれている」とその映像のクオリティを独自の言葉で称賛している。
ちなみに「裸体ではないか?」と話題になった光学迷彩スーツは、3DCGではなくスカーレット・ヨハンソンの等身大ポリスチレンをコアにしたシリコン製の実物のようだ。
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