SPECIAL

今によみがえる女優や映画 白黒映像が「カラー」になる時代

今によみがえる女優や映画 白黒映像が「カラー」になる時代

本当ならこの原稿を書いた今は2020年の東京五輪が開かれているはずでした。前回の東京五輪が行われた1964年は1960年代に登場したカラーテレビの普及を助けるものでした。今、東京オリンピックの写真や映像を見るとカラー、白黒のものが混在している状態です。そう、まだテレビのカラー化が普及してから50年とちょっとしか経っていないんですね。

というわけで、今見直されているのが古い白黒の映像をカラー化する技術です。

写真の業界ではすでに当たり前に?

すでに写真のほうでは白黒写真をカラー化する技術は進んでいてAIによる着色作業が無料で行うことができます。例えば、Deep AI、筑波大学の飯塚教授によるディープネットワークを用いた白黒写真の自動色付けColouriseSGなどです。

また、2020年には東京大学大学院の渡邉英徳教授と同大学学生の庭田杏珠さんの共著による「AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争」が発売され、第二次世界大戦の広島や沖縄を中心としたカラー化写真集が発売になっています。

私もたまたま何十枚と同じようにカラー化に取り組みを経験しています。どれもAIによる深層機械学習という仕組みは変わらないようですが一方で色付けの特徴は様々です。人間が得意、背景が得意、青みがかる、ビビッドになるといった具合の違いです。

白黒がカラーになるのは生命の息吹を吹き込むような作業、そして翻訳に近い作業と感じました。上述のようにAIといっても確実にカラー化してくれるわけではありません。ここの色は何色なのか、どういう状況なのかを紐解き、その人の人生、歴史と対話するような作業です。

Photoshopでも白黒写真をカラーにする機能はすでに試されていて今後は当たり前になるのかもしれません。

では、映像ではどうなのでしょうか?

白黒映像のカラー化でトップを走るのはNHK?

白黒の映像をカラー化する技術は上述の筑波大学の飯塚教授なども研究しておりますが、株式会社リッジアイ(Ridge-i)とNHKアートが共同研究したものが有名です。2018年10月に「白黒映像のカラー化技術」として公開。すでにNHKの番組などでその技術は使われているそうです。

この技術でNHKは第45回放送文化基金賞を受賞しました。白黒映像をカラー化することは過去にもありましたが莫大なコストがかかっていました。ところが、写真と同じくAIによる機械学習をもとに映像をカラー化することで精度も高いまま大幅なコスト削減を実現したそうです。


https://www.nhk.or.jp/special/blackhole/より引用

例えば、先ほどもいいましたように白黒、カラーが混在していた1964年の東京を題材にしたNHKスペシャル「東京ブラックホール II」が該当だそうです。

YouTubeでもカラー化動画が徐々に出現

YouTubeでもモノクロの写真や映像に色を付けてそれをアップロードするものがここ数年で増えてきました。

例えばPearbookさんは登録者数2.7万人を誇り、古い日本の映像をカラー化している中ではずば抜けた視聴回数を誇ります。

白黒だとどこか「過去の人」と別世界のように感じられた昔の人々が「リアル」に息づいて感じられるのがわかるでしょうか?

逆に静止画を中心としたスライドショーですが、圧倒的な再生回数を誇るのが笑顔のおっさんチャンネルです。

主に昭和の女優をカラー化するばかりか「今風」に髪型、化粧を変えているのですが、昔の女優の美貌がよく分かることが受けているように思えます。再生回数はなんと500万回近く! カラー化というものの訴求力を感じられますね。

映画でも使われているカラー化技術

映画でも白黒の映像をカラー化する技術は使われています。

以前紹介した「映画『彼らは生きていた』評 ―過去が現在になるとき―」では、「第一次世界大戦中に西部戦線で撮影された未公開の記録映像を、AI技術や最先端の3D技術を駆使してカラーリングし、それに加えて、当時は録音されていなかった兵士たちの会話や爆撃音や環境音を新たに録音し追加し、再構成した」作品となっています。

そうすると、こう思う人がいると思います。過去の名作をカラーで見たい! という欲求です。

カラー化に反対も。着色作業は正義か悪魔か

AIによる機械学習によりコストダウンが図られた白黒の映像のカラー化ですが、技術そのものは半世紀前からあるものでした。

そのため、1980年代に白黒映画『天国漫歩』がカラー化されると大きな議論になりました。それは着色作業は無礼な行為、白黒を前提とした照明なのでカラーにしてもそこに色味があるのかといった批判です。

ただ、そうした“早すぎた技術”による批判は時間が解決してくれたようです。今では、旧作品をいかに今の世代の興味をひくかに視点がいき、レジェンダリーフィルムズという白黒映画や映像をカラー化する会社も2001年に立ち上がっています。

先ほどの映画『彼らは生きていた』の監督ピーター・ジャクソンはこう言います。

「映像は生き生きと映り非常に明快だった」「“人類”がジャンプしてあなたに迫ります。この映像は約100年前から存在しておりましたが他のフィルムの後ろに“埋葬”されていました。しかし、カラー化復元をすると、人間の新たな側面を得ることができます」

そうカラーと白黒では同じものでもそこの息遣い、感じ取れることが変わってくるのです。AIの技術発展によってこうした新たな映像体験がもっと身近になっていくことを疑う余地はありません。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊もコロナで自粛中。

ZOOREL編集部/黄鳥木竜の書いた記事一覧へ

タグ

RELATED ARTICLES 関連記事