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いまさら聞けない「映像」と「動画」の違い【第2回】
「映像」の起源とは?インターレスとプログレッシブ

いまさら聞けない「映像」と「動画」の違い【第2回】 「映像」の起源とは?インターレスとプログレッシブ

「映像」と「動画」の違いってなんだろう? という自然で素朴な問いに答えるべく、前回は「現在の私たちがどのようなかたちで【映像】【動画】二つの言葉をイメージしているのか」について取り上げてみました。そこで伝えたかった大切なポイントをまとめると次の三つです。

  • インターネットの登場によって、それまであまり使われていなかった「動画」という言葉がひろく社会に浸透。
  • パソコンやスマホでのオンライン視聴を前提として創作された映像コンテンツの総体が、現在の「動画」という言葉の概念とふかく結びついている。「Web上で配信されるコンテンツ=動画」といっても過言ではないほどに。
  • 一般的にイメージされている映像/動画の違いをとらえるためのツールとして「IPS (時間あたりの情報量)」というスケールがとても有効。情報の圧縮度は「映像」より「動画」の方が高い。

誤解を恐れずにいうと「インターネット的」あるいは「YouTube的」とイメージされるような映像上の表現はすべて「映像」ではなく「動画」として認識される“動画全盛”の時代に私たちは生きています。ですが、こうした認識のありかたは、インターネットが登場する以前のものとは異なっており、従来の言葉の定義づけからは大きく変化しています。

そこで、今回は現在における「映像」「動画」という言葉の概念をいったん横において、映像という言葉の生まれた歴史的な背景に立ち返ることで、「映像とは何か?」という問いに迫ってみたいと思います。

テレビの登場によって生まれた「映像」の概念

これまで見てきたように、インターネットの登場とともに私たちの日常に定着していったのが「動画」という言葉ですが、他方「映像」という言葉が世間に広く浸透していったのはいつのことだったのでしょうか? 結論から述べますと、テレビジョン放送がスタートした1953年以降、先行メディアである映画との差別化を図るために使用され定着していったのが「映像」という言葉です。

というのも、テレビと映画では表現方式がまったく異なっているため、テレビ特有の新しい呼称が必要不可欠だったのです。

映像業界の関係者にはご周知のように、映画では一貫してプログレッシブ方式が採用されているのに対し、テレビ放送は現在に至るまでインターレス方式が主流となっています。(現在、インターレス方式がテレビ以外で採用されることはほとんどなく、YouTubeやSNS上のコンテンツもそのほぼ全てがプログレッシブ方式によって制作されています。)

黎明期は「活動写真」と呼ばれていたことからも分かるように、プログレッシブ方式の映画はフィルム撮影された(現在はデジタルが主流ですが)一枚一枚の写真を連続で表示しているため、静止したときでも一枚の画として成立します。しかし、インターレス方式のテレビでは、二種類の走査線を交互に表示するため、静止したときに一枚の画にはなっていません。

そのため、テレビを構成しているのは「画」ではなく「像」であり、テレビとは「像」を「映す」ことによって成り立つ「映像」であるという考え方が生まれ、それが世間にも定着していったようです。

なお、「映像」という言葉の語源は、光学系の専門用語であり「IMAGE」の日本語訳として1870年代に誕生したとされています。また、テレビ放送が開始された当時は、「映像」ではなく「影像」という漢字が使用されていました。

ここを深掘りすると私の手には負えない哲学的な話題となってしまうので、さしあたっては今日的な意味での「映像」という概念は、インターレス方式のテレビジョン放送とともに生まれたものであり、映画やYouTube動画のように一枚画が動いて表現されるものではなく、「瞬間的に映し出される像(イメージ)そのもの」であることをおさえていただければと思います

まとめ

今回の記事では、今でいうところの「映像」の概念が、テレヴィジョン放送のスタートとともに生まれたものであることを確認しました。そして、その背景にはプログレッシブ/インターレスという先行メディアであった映画との表現形式上の重大な差異があります。

  • プログレッシブ・・・静止時に一枚画として成立するもの(画)。映画やYouTubeなど。
  • インターレス・・・静止時に一枚画として成立しないもの(像)。テレビに限定的。

それでは、本来は“瞬間的な事物のイメージ”であり“テレビの表現内容”を意味していた「映像」が、現在のようにプロフェッショナルなイメージを伴うものになっていったのなぜなのでしょうか?

次回は、アニメーションとしての「動画」という言葉の成立ともに、「映像」「動画」という言葉の違いについて追って行きたいと思います。

※本記事は、下記の先行研究によるところが大きいです。どちらもとても素晴らしい内容なので、ご興味のある方はぜひ閲覧ください。

参考サイト:
デキサホールディングス「動画と映像の違い
参考文献:
明石ガクト『動画2.0 VISUAL STORY-TELLING』

▼関連記事
第1回:いまさら聞けない「映像」と「動画」の違いとは
最終回:「映像」と「動画」、二つつの言葉の違いの本質的な違いにつについて

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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