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話をしっかり引き出すインタビュアーのコツ

話をしっかり引き出すインタビュアーのコツ

こんにちは。エレファントストーン ディレクターの瀬戸口です。

入社以来、何度かインタビューの撮影を担当してきました。そして撮影をするたびに、インタビューの奥の深さと難しさを感じています。とはいえ、インタビューは普段話せないような方から、普段聞けないようなお話を聞ける、貴重な機会でもあると思います。

この記事を読んでくださったインタビュアーの皆様が貴重な機会をしっかりと楽しめるよう、「環境づくり」や「コミュニケーション」の観点から、私なりのインタビューの心得やコツについてご紹介します。

インタビューをする際の準備

まず、スムーズにインタビューを進めるために必要な準備についてご紹介します。

【インタビュー前日まで】

1.話者のことをできる限り知る

インタビュー撮影では、基本的に初対面の方にインタビューを行います。私はインタビュー撮影の際は、前日までに話者の生い立ちや活動、SNSなどをチェックします。出演されている映像がある場合はいくつか視聴し、話者がどんな風に話す方で、どんな雰囲気をお持ちなのかをイメージしています。事前に話者のことをできる限り知ることで、インタビュー当日に話を派生させていくことができたり、自分との共通点を見つけて話を盛り上げるきっかけにできたりします。

同じ理由で、社内でのインタビューでも、話者のことをできる限り知っておくことはとても大切だと思います。ただ、有名人でない限り、生い立ちがインターネットに載っていることや出演映像がどこかで流れていることってなかなかないですよね。

社内のこれまであまり関わりがなかった方へインタビューをする際は、当日までに話者と軽く雑談程度のお話しをしてみると良いかも知れません。また、自己紹介シートを書いていただくことも面白いと思います。というのも、先日弊社で社員全員が回答する「100の質問」を実施しました。質問項目は、経歴や仕事のこと、趣味のことなど多種多様でした。これが結構、その人のことがわかるんです。知らなかった経歴を知れたり、意外な趣味を発見したり。インタビューの事前準備でも、一見インタビューとは関係ないようなことまで知ろうとしてみると、話者の性格がわかって話しやすくなるかもしれません。

このようにして、できる限り話者の情報が0の状態ではなく、どんなに些細な情報でも知れるだけ知ることをおすすめします。

2.インタビュー概要をお知らせする

もしあなたが「インタビューさせてください!」とお願いされたとき、どんな気持ちになるでしょうか? 私の場合は、「嬉しい!でも、私でちゃんと答えられるだろうか・・・。どういう話を求められているのかな?」と、嬉しさと不安を同じくらい感じます。恐らく、多くの人が同じような心情になるのではないでしょうか。

だからこそ、できるだけ早く、遅くともインタビュー前日までには、話者にインタビュー概要をお知らせする必要があります。このインタビューはどういう用途で行って、どういう場所で公開するのか。どういう質問をする想定で、どういう視点で話してほしいのか。しっかりと伝えて、話者にインタビューのイメージをしてもらいましょう。

【インタビュー当日】

1.居心地の良いインタビュー環境をつくる

話者が緊張せず話しやすい雰囲気を作るために、環境づくりがとても大切です。私はいつも部屋の広さや温度設定を気にしています。部屋が広すぎても、狭すぎても所在ない感じがするし・・・寒くても、暑くても、長い時間その部屋にいるのはなんだかちょっと居心地が悪いですよね。用意できる場所で、用意できるもので、心地よい環境を目指しましょう。

そのほかにも、部屋の明るさ、座る椅子の位置(話者と正面で話しにくかったら、斜めにしてもOKだと思います!)を気にかけています。場合によってはアイスブレイクの時間まではBGMをかけるのも良いと思います。

2.アイスブレイクからはじめる

突然インタビューを始めるよりも、雑談等で話者の緊張をほぐしてからスタートした方がより深い話を聞きやすいです。そのため私は、時間が許す限りゆっくりとアイスブレイクすることを心がけています。

中でも忘れてはいけないのが、インタビュアーの自己紹介です。進行のことで頭がいっぱいだったり、緊張していたりすると、つい忘れがちだと思うのですが最初が肝心です。初対面の場合、名前も所属もわからないインタビュアーに心を開いて話せるでしょうか。ちょっと警戒してしまいますよね。お話を聞かせていただく際のマナーとして、最初に自分の名前と所属をお伝えしましょう。

私はこの流れで、「SNSを拝見していました」「すごくお話しするのが楽しみでした」という、インタビューが楽しみな気持ちもお伝えしています。顔見知りの相手である場合も、「最近どういうお仕事をしているんですか?」「このようにお話を伺えること、とても嬉しいです」など、ちょっとした雑談を挟んだり、感謝の気持ちを伝えたりすることが大切です。こういった会話を経て、「インタビューだ・・・しっかりしなきゃ!」と固くなっている話者の緊張をほぐすことができます。アイスブレイクで場をポジティブな雰囲気にできると、その後のインタビューがとてもやりやすくなりますし、話を引き出しやすくなります。

また、ここで再度インタビューの方向性をお伝えすることも大切です。この時点で、話者は自分が何を求められているのか、どういう話をすれば良いのかが気になっています。インタビューの概要を簡単に説明した後、「ラフにお話しできればと思います」や、「〇〇のような視点でお話を伺えればなと思います」と、話の方向性をお伝えしましょう。話者にインタビューの雰囲気をイメージしていただくことができ、話すことへの抵抗や不安が格段に減ると思います。

インタビュー時に聞き手が意識すると上手くいくポイント

1.話の合間にポジティブな相槌を入れる

インタビュー中に相手を褒めることや、「そのお話面白いですね!」というポジティブな反応をすること=相手に“その話をもっと聞きたい”というフィードバックをしている、ということです。言い換えれば、「インタビューで、自分が期待に応えられるだろうか」と不安に感じている話者に対して、“方向性合っています!”“その話し方で大丈夫です!”“そういう話が聞きたかったです!”という肯定の意を伝えているということです。

話者の不安を取り除き、インタビューを盛り上げるためにも、私は基本的には逐一ポジティブな相槌や感想を入れるようにしています。もし「もう少し違う角度から話を聞きたいな」と思った場合にも、「今の〇〇なお話はとても面白かったです!加えて、△△な角度からもお話しお伺いしたいのですが、いかがでしょうか?」と、一度ポジティブな反応を示してからお願いするようにしています。

ただ、あまり大きな反応がない方が話しやすい、という方もいらっしゃると思うので、相手の表情を見ながら、相槌の量や大きさを変えると良いでしょう。

2. “良い状態”の自分で話を聞く

実はここが、今回の記事の一番のポイントです。“良い状態”とは、どのような状態のことなのでしょうか。

まず、一度想像してみてください。学生時代、「学年一面白い先生の授業」と「学年一怖い先生の授業」とで、クラスの雰囲気にどんな違いがあったでしょうか。私の場合、前者は明るい雰囲気の中で生徒たちがリラックスし、表情も柔らかく授業を受けていました。後者の場合、重い雰囲気の中、生徒たちが心身を緊張させて真剣に授業を受けていました。

このように、ファシリテーターとなる人物がどのような状態でいるかによって、その場の雰囲気が異なります。同じようにインタビューでは、インタビュアーがどのような状態でいるかによって雰囲気が異なり、話者の話しやすさに大きく影響します。

このことについて、同期の深津くんと宮坂さんに協力していただき、インタビュアーの状態による話しやすさの違いを社内で実践してみました。深津くんがインタビュアー役、宮坂さんが話者役です。深津くんには、「いつものように、同期の距離感で、宮坂さんの趣味の話を聞いてみてください。」とお願いしました。

【Aパターン】

まず最初に、フラットな状態のインタビュー【Aパターン】です。宮坂さんの趣味の概要から、それを始めたきっかけのお話をし、一旦話が落ち着きました。(※社内での撮影のため、一部他社員の声が入ってしまっている箇所があります。申し訳ございません。)

【Bパターン】

次に、深津くんにとあるディレクションをし、Aパターンと同じような流れでインタビューをしていただきました。こちらが【Bパターン】です。宮坂さんは、深津くんがどのようなディレクションを受けたのか知りません。この回では、少しぎこちない空気が漂い、宮坂さんの趣味の概要のみでインタビューが終わっています。

【Cパターン】

最後に、深津くんに再度ディレクションをし、またAパターンと同じような流れでインタビューをしていただきました。こちらが【Cパターン】です。宮坂さんは、今回も深津くんがどのようなディレクションを受けたのか知りません。この回では、宮坂さんの趣味の概要から、彫金とは何かという話、フリーマーケットの話、やりがいの話まで広がりました。

3パターンとも、インタビューの雰囲気が異なるのがお分かりいただけるでしょうか。さて、BとCでは、深津くんがどのようなディレクションを受けたと思いますか?

BパターンCターンそれぞれ、深津くんに「このような状態の自分を想像してインタビューをしてほしい」とお願いしました。

【Bパターン】

  • 今日は体調が悪い
  • 最近悪いことがあって、気を抜くとため息が出る
  • 自分の話していることは楽しいけれど、相手が話していることは本当につまらない

【Cパターン】

  • 今日は調子が良い(10時間寝た)
  • 最近いいことばかりあって、気を抜くとニヤけてしまう
  • 自分の話していることはつまらないけど、相手が話していることは本当に面白い

私が冒頭からお伝えしていた“良い状態の自分でいる”とは、心身ともにいつもより少しポジティブで、相手に興味が持てる自分でいる、ということです。無理に明るく振る舞う必要はありません。あくまで自分の中で、“ちょっと良い”状態の自分でいれば、それが相手に伝わり、話しやすい雰囲気をつくることができます。

インタビュー実践が終わった後、宮坂さんに感想を聞いてみました。「Bはあまり興味を示さない感じ。話して良いのかなって不安になった。Aもすごく聞いてくれて話しやすかったけど、CはA以上に話がたくさん広がったなと思った!」と、お話ししてくれました。実際に、“ちょっと良い状態のインタビュアー”は、話者にプラスの影響を与えているようです。

深津くん、宮坂さん、快くご協力いただき、本当にありがとうございました!お二人とも、いつも大変お世話になっているとっても優しい同期です。

話を脱線させないポイントや、脱線した時の対処法

個人的には、時間が許す限り、話が脱線するのもアリだと思います。話がつい脱線する、ということは、話者がそれだけ「たくさん話したい」という気持ちになってくれている証だと感じているからです。一見関係ない話でも、後の話題と繋がることもあります。なので、もし可能であれば、脱線した際はその話題を一通り聞きたい、というのが私の本音です。

ただ、時間が限られている場合や、脱線してから話を元に戻す方法がわからない場合も多くあると思います。そういった際の私の対処法をご紹介します。

1.脱線した話題に対し、ポジティブに「NO」を伝える

インタビュー中に話が脱線した場合、インタビュアーが話の方向性を軌道修正していく必要があります。一般的に「NO」の伝え方は、2種類あると思います。ポジティブな「NO」と、ネガティブな「NO」です。「NO=軌道修正が必要」という事実を伝えるとき、「ポジティブ=前向きに、明るく」伝えるか、「ネガティブ=否定的に、暗く」それを伝えるかという違いです。同じ「NO」であるならば、できる限り明るく相手に伝えた方が、自分も相手も嫌な気持ちにならないのではないでしょうか。

インタビューでも同じです。話者に対し、嫌そうに「NO」を伝えると場の空気が重くなり、段々と話者の心身が固まってしまいます。「ああ、今聞いているのはそういう話じゃなくて・・・」という伝え方よりも、「そのお話もとても聞きたいんですけど・・・!申し訳ないですが時間の関係で、ぜひまた今度聞かせてください。」という伝え方の方が、お互いにハッピーですよね。こんな感じで、話題が脱線した際にはポジティブに「NO」を伝えることで、ストレスなく対処できるのではないでしょうか。

2.質問の最初に回答の方向性を示す

質問の最初に、「この質問では、〇〇のようなお話が聞きたいです」と方向性を示すことも一つの手です。これは、究極にインタビュー時間がない際/思っていたような回答が得られなかった際の対処法です。回答の方向性に制約をつけることにより、高い確率で話が脱線しないというメリットがある一方、こちらが示した方向性の話以上の広がりが難しいというデメリットもあります。可能な限り話者の話しやすさを保つためには、制約を必要最低限に留め、話者が回答を考える余白を残すことをおすすめします。

参考にしたいインタビュー動画をご紹介

ここで、インタビューをする際に参考にしたい動画をご紹介いたします。

▼事例:事業紹介映像での社員インタビュー

弊社のインタビュー事例を紹介します。「アネスト岩田株式会社様 事業紹介映像(ANEST IWATA Corporate movie)」です。日本、中国、台湾、米国での撮影の中で、社員様へのインタビューも行っています。国境を越えた撮影を経て、各国の社員様のこだわりや思いが溢れた映像となっています。

会社紹介映像の中に社員インタビューを入れることで、視聴者の企業に対する信頼感の向上に繋がります。スーパーで売られている野菜に生産者の写真が載っていることで、消費者が安心してその野菜を購入できる現象と似た効果です。インタビューを通して社員自ら話すことで、視聴者に「この会社ではこんな人材が、こんな考えを持って働いています」「日々お客様のために全力を尽くしています」ということを視覚的・聴覚的に伝えることができます。

アネスト岩田様の映像の中でも、各国、各部署の社員様が仕事に対するこだわりを自ら語ることで、会社の技術力・こだわりを視聴者に伝えています。そうすることで、安心や信頼のイメージの獲得を後押ししています。インタビュー中の映像もお仕事中の映像も皆さん身体がリラックスしており、自然体でとても素敵ですよね。ご自分で言葉を選んで話されているのも、想いが伝わり魅力的に感じます。

▼事例:新卒採用向け動画での社員インタビュー

他社の制作映像ですが、もう一つインタビュー映像を紹介します。「SONY様 若手社員インタビュー映像」です。こちらの映像は備考欄に新卒採用サイトが掲載されているため、リクルート用の映像だと考えられます。SONY様で実際に働く若手社員様のインタビュー映像を発信することで、会社の志や考え方に共感できる若い人材の採用を促進できる効果があります。

インタビュー映像の撮影では、話者が緊張してしまい思うように話せないということが起こり得ます。カメラがあり、たくさんの撮影スタッフがいることで、いつもとは違う環境になり話者の心身が固まってしまうからです。だからこそ、私は環境づくりや話者の緊張をほぐすことをインタビューの第一歩として捉えており、この記事でもそれらについて多く記載させていただきました。

話者のリラックス状態に着目してこの映像をご覧ください。話者の皆様がまるで友人とお話ししているようなリラックス状態で、なおかつしっかりとご自分のお言葉でインタビューに答えています。社員様の素に近い状態を映像に映すことで視聴者に会社の雰囲気を伝えることができ、それに合った人材の採用に繋がっていきます。

最後に

最後まで読んでくださってありがとうございます。いかがでしたでしょうか。インタビューについて、私が日々実践していることをご紹介いたしました。ここまで沢山お話ししましたが、一番大切なのはインタビューの際に相手と良い時間を過ごすことだと思っています。インタビューって、普段話せないような人とお話したり、日常生活ではなかなか聞けない話題に触れられたりできる、とても面白い機会だと思います。そんな機会なので、目の前にいる人と一緒にお話しする時間を思い切り楽しむ、それが一番大切なインタビューの心得なのではないかと思います。

また、もちろん人によってインタビュー方法の合う/合わないがあると思うので、記事で紹介していることが合わなかったとしても、「自分がインタビュアーに向いていないんだ・・・」などとは、決して思わないでください。この記事にあることはあくまで一例ですし、私自身、もっと良いインタビュアーになるため試行錯誤をしている最中です。記事を読んでくださったインタビュアーの皆様が、どのようなインタビューをされるのかとても気になっています。今回お伝えした内容が参考になれば嬉しいですし、良いインタビュー法が見つかった際には、私にも教えていただけたらとても嬉しいです!

この記事を書いた人

瀬戸口史賀
エレファントストーンのディレクター

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