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全クリエイター必見!世界を震撼させ続けるウクライナの映像ディレクター・Tanu Muino(タヌ・ムイノ)をご紹介
画像参照:【日本企業初!】パルコ 2023年SSシーズン広告にウクライナ出身 気鋭映像監督 Tanu Muino(タヌ・ムイノ)をクリエイティブディレクターに起用!
テクノロジーの進化や視聴環境の変化にともない、これまでにない革新的なクリエーションが次々と誕生している映像の世界。
今や映像クリエイターの表現の場は、媒体やジャンルの垣根を越え、さまざまな領域に広がっています。
そこで当メディアのZOORELでは、いまクリエイティブ業界の最前線で活躍するクリエイター/アーティストたちをシリーズ連載でご紹介していきます。
第一回となる本記事では、ミュージックビデオを中心に世界に衝撃を与え続けているウクライナの映像ディレクターTanu Muino(タヌ・ムイノ)の魅力に迫ります。
Tanu Muino(タヌ・ムイノ)について
タヌ・ムイノは、Lil Nas X『MONTERO (Call Me By Your Name) 』のMVでグラミー賞にノミネートされるなど世界的に大きな注目を集めているウクライナ出身の映像ディレクターです。
これまでにONE OK ROCK、エルトン・ジョン&ブリトニー・スピアーズ、ポスト・マローン&ザ・ウィークエンド、ケイティ・ペリーなど、音楽ジャンルを軽やかに越境し、様々な有名アーティストのMVを数多く手がけています。
2023年の1月15日には、寓話「アリとキリギリス」のウクライナ版「トンボとアリ」を題材にした作品「NEW DEPARTURE」をPARCO 2023SS シーズンのPRムービーとして発表し、マーケットの枠組みを超え各界のクリエイターたちから高い評価を得ています。
タヌ・ムイノ作品 三つの特長
①個性の解放
タブーを恐れず自由な表現を探求するタヌ・ムイノの作品に共通しているのは、「個性の解放」という力強いメッセージ。
社会通念や既成概念から解き放たれ、ときに人々の間で大きな物議を醸すそのクリエーションは、個人の中に眠っている力を呼び覚ますポジティブなエネルギーに満ち溢れています。
②緻密なストーリーテリング
「いつかミュージカル映画を監督したい」という夢を持つタヌ・ムイノ作品の多くは、短編映画のような濃密なストーリーによって紡がれています。
異なるニュアンスを持つ複数のシーンを自由なアイデアで組み立て、想像もしなかった物語を映像だけで描き出すそのストーリーテリングの巧妙さは全クリエイター必見です。
③先人たちへのオマージュ
寓話「アリとキリギリス」をモチーフにしたPARCOのPRムービーにもあらわれていますが、タヌ・ムイノのクリエーションは、古今東西の様々な芸術作品からインスピレーションを受けています。
オーストリア出身の映画監督フリッツ・ラングからルネサンス期のネーデルランド出身の画家ヒエロニムス・ボスにいたるまで数世紀分の資料を集め、彼女ならではのアーティスティックな感性を通して具象化された作品群は、過去の遠い世界に対する憧れや偉大な先行作品へのオマージュに溢れています。
作品紹介
①Lil Nas X『MONTERO (Call Me By Your Name) 』
MTVビデオミュージックアワードの最優秀ビデオ賞を受賞し、グラミー賞の最優秀短編ミュージックビデオ賞にもノミネート。
Lil Nas X『MONTERO (Call Me By Your Name) 』は、現時点におけるタヌ・ムイノの代表作ともいえる作品です。
ーー神がつくったエデンの園で同性の蛇と「禁断」の関係を持ち、裁判にかけられて地獄に堕ちた主人公。しかし、彼は地獄の淵に立たされても自分の欲望と存在を肯定し、悪魔を相手にセクシーなラップダンスを披露するーー
クィアの精神に満ちた本作は、聖書的な世界観の禁忌に触れ、激しい政治的議論を巻き起こした一方、個性や自由を愛する世界中のアーティストから「己の解放」を表現した革新的なMVとして大絶賛されています。
②Post Malone, The Weeknd 『One Right Now』
Post Malone, The Weeknd 『One Right Now』のMVは、ストーリーテリングに長けたタヌ・ムイノ作品を象徴する一本です。
浮気した恋人に対する愚痴を歌った歌詞と、ジョン・ウー監督を想起させる1990年代のアジアン・ガンアクションムービー風の映像とのギャップがたまらない作品です。
印象的なカットの巧みな配列によって、ナレーションや説明的な描写を用いることなく濃密な物語性を訴えかける構成力に加え、ムイノ流のシュールなブラックユーモアも大きな見どころになっています。
③ONE OK ROCK『SAVE YOURSELF』
2022年6月に公開されたONE OK ROCKの『SAVE YOURSELF』は、日本人アーティストの楽曲としては、タヌ・ムイノが初めてMVを手掛けた作品です。
現実世界と3DCGの世界がシームレスに融合された近未来SF的な世界観が印象的な一本。
ロケ地はセルビア。コンクリートの荒々しい素材感を強調したブルータル建築のモニュメントを背景に演奏するシーンや、巨大な竜巻の中で音楽を奏で続けるシーンなど、様々なシチュエーションで異なるストーリーが展開されながらも、ビデオを見終わった瞬間には、全体として力強い一つのメッセージを感じ取ることが出来るはず。
疾走感のあるメロディが印象的で、挑戦し続ける人の背中を押すような楽曲の個性を、ストーリーと映像を重ね合わせる自由な発想で見事に表現しています。
④Harry Styles『As It Was』
イギリスのボーイズバンド・One Directionのメンバーであり、2023年度グラミー賞ではソロアルバム『Harry’s House』が最優秀アルバム賞に輝いたHarry Styles(ハリー・スタイルズ)。
英国一のアイドルから新時代のロックスターへと転身を遂げた異色のキャリアを持つ彼が、2022年4月に公開した楽曲『As It Was』のミュージック・ビデオは、タヌ・ムイノらしさ全開の一本です。
撮影が行われたロンドンにあるヨーロッパ最大級の文化複合施設「バービカン・センター」のレトロな質感も、タヌ・ムイノの手にかかるとどこかシュールで非現実的な印象を与える空間に様変わり。
回りつづける男女の身体動作や壁画をイメージさせる象徴的なカットが多用されている本MVでは、1980年代初頭のシンセポップの影響が色濃い疾走感あふれる楽曲の魅力を青と赤の鮮やかな対比と共に描いています。
⑤Cardi B『Up』
第61回グラミー賞の「ベスト・ラップ・アルバム」部門で見事受賞した女性ラッパー、カーディ・B(カーディ・B)が2021年2月にリリースした『Up 』。
タヌ・ムイノがディレクターを務めた本作のMVは、Lil Nas Xが「まじでヤバい」と惚れ込んだ一作です。
痛烈な歌詞と挑発的なコスチュームで女性たちの個性の解放を高らかに歌い上げるカーディ・Bの姿が、とにかく最高にイカしてます。
異なる世界観が映されたシーンがジェットコースターのように駆け抜けていく爽快感。シリアスでありながらどこかクスッと笑ってしまうカットが随所に散りばめられたユーモアセンス。
遊び心と真剣勝負の絶妙なバランスや文化的な多様性に富んだタヌ・ムイノの独創性が、前面に押し出された作品に仕上がっています。
まとめ
以上、タヌ・ムイノが手掛けたMVを5本紹介しました。
優れたアーティストには必ず優れたサウンドエンジニアがいますし、売れっ子のエンジニアは多くのアーティストを手掛けます。今では映像ディレクターもそのパーティの中にいるといって過言ではないでしょう。
今回は紹介しきれませんでしたが、タヌ・ムイノは他にもエルトン・ジョン&ブリトニー・スピアーズ、ケイティ・ペリーなどの作品も手掛けています。
気鋭の映像監督であるタヌ・ムイノに映像を手掛けてもらうことは、アーティストとして一つのステータスにもなっていそうです。
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