SPECIAL

【年賀ムービー制作記念】音と映像が相互作用する。Frog3×監督深津インタビュー

【年賀ムービー制作記念】音と映像が相互作用する。Frog3×監督深津インタビュー

こんにちは。ZOORELを運営する映像制作会社のエレファントストーンです。

エレファントストーンでは、新年のご挨拶として年賀ムービーを毎年制作しています。2025年は、ディレクターの深津が監督を務め、「Non-Stop」– New Year Movie 2025 –を公開しました。

本記事では、音楽制作を担当したFrog3と監督の深津によるインタビューを実施。プロジェクトの背景や音楽制作の過程などをお伝えします。

◯Frog3 プロフィール
Obabita,Jun Inagawa,IRIS SAKAI,yozzyによるエレクトロミュージックユニット。
DJ、絵画、イラスト、写真、映像といったメンバー個々人のアーティスト活動を活かし、ビジュアルワークやMV、衣装デザインなどのクリエイティブも全て自ら手掛けている。2023年に新メンバーyozzyが加わり、4人体制での楽曲リリースやライブに向け活動中。

◯深津 大貴 プロフィール
神奈川県生まれ。海や山に囲まれて育つ。日本大学芸術学部映画学科撮影録音コース卒業。在学中はドキュメンタリーや短編映画の制作を通して撮影について学んだ。趣味は映画・音楽鑑賞、車、温泉。高校時代はワンダーフォーゲル部だったこともあり、アウトドアが好き。憧れの撮影監督はHoyte van Hoytema、Roger Deakins、Jan de Bont。

将来への葛藤と音楽活動のスタート

深津:今回は音楽制作をご担当いただきありがとうございました!

Frog3一同:ありがとうございました!

深津:今回、僕から皆さんに音楽制作をご依頼したところから共同制作が始まったのですが、ZOOREL読者の皆さんへのご紹介もかねて、Frog3の活動についてまずお伺いしたいなと思います。

Jun Inagawa:各々がアーティスト活動をしながら、Frog3というエレクトロミュージックユニットとして活動しています。Frog 3と名乗る前は、Digital Sauna Kidsという名前でObabitaとIRISと僕の3人で活動していました(笑)

深津Frog3はどんな経緯で結成に至ったんですか?

Jun Inagawa:ざっくり話すと、僕の引っ越しをきっかけに2人と知り合って。Obabitaが作っている音楽を聞いたらそれがお世辞なしに本当にカッコよくて、せっかくなら『みんなで音楽やろうよ』ってなっていきました。

Obabita:僕は当時大学3. 4年生で、就活をするかしないかを考えているタイミングだったんです。Digital Sauna Kidsが始まる頃のタイミングで、IRISは油絵、yozzyは映像、僕は音楽と、それぞれ個々のアーティスト活動を始めたタイミングが重なって。みんなが将来どうしていこうかを考える時期だったのもあって、一緒にやろうっていう流れになりました。

深津:自分も同じ頃に就活をするのか、映画制作と映像ディレクター、どんな道に進むか悩んでいたので、その葛藤や悩みはすごく想像できます。

Frog3:Jun Inagawa

 

Jun Inagawa:ちょうど音楽を作り始めた頃に、『Amazon Original HEAT』(以下、HEAT)※という企画で声をかけてもらって、楽曲とMVをつくることになったんです。そのタイミングからyozzyがビジュアル面のディレクションで入り、本格的にチームで動くようになりました。

IRIS SAKAI:HEATに参加するにあたってLAに音楽制作に行ったんですけど、そのタイミングで流石に名前を変えようかって話になって、Frog3に改名しました。

深津:そういう経緯での改名だったんですね。

※Amazon Original HEAT:各シーンで活躍する20人のキュレーターが、20組のアーティストをピックアップし、新たな楽曲とMVがAmazon Musicで公開されていくプロジェクト

同年代での音楽と映像の共同制作

深津:ここからは今回のプロジェクトの話を深掘りしていけたらと思います。
そもそも、この年賀ムービープロジェクトは、例年社内のメンバーからの立候補で監督を決定するのですが、今年は自分がマネージャー陣から指名をもらって監督を務めることが決まって…。クライアントワークをしている中で、通常業務にプラスして年賀ムービーをつくるって正直決して楽ではないんですよ。
せっかく自分が監督するなら、自由度高くやりたいことやっちゃおうって思って。その中で考えたことの1つが、『テクノをつくりたい』ってことでした。

Jun Inagawa:映像じゃなくてテクノなんですね(笑)

深津:はい(笑)まず、自分が好きな音楽、テクノをつくりたいっていう願望を起点として、映像の企画を立てていきました。映像の企画が大枠固まって、じゃあいざ音楽はどんなものが良いか?を考えていって。僕は石野卓球さんを崇拝しているので、卓球さんの曲みたいに音数が増えて色味が出るサウンドにしたいと思ったんです。

その上で誰に制作を依頼しようか考える中で、同じ熱量で同じ世界観を持っている人、同じ時間を共有したことがある人が良いと思ったんですよ。
Junさん主催のDJイベント『MAD MAGIC ORCHESTRA』に入った時の動画を見返して、Junさんのイベントで同じ時間を共有しているし、同じ音楽を聞いて影響を受けているし、これは絶対にFrog3さんにお願いしたい、と。1999年生まれの同世代ということもあり、一緒にアイデアを出しながら制作ができるんじゃないかと思って、Instagramで即DMを送りました。なかなか返信が来なくて、内心かなり焦っていましたが…(笑)

Obabita:Frog3のInsgatgramをあまり動かしていなかったので、返信が遅くて本当にすみません(笑)
深津さんからのメッセージを見て『面白そう』とFrog3のグループチャットで共有しましたよ。インスタ上で返信しつつ、エレファントさんのホームページを見たり、今回のプロジェクトの資料を見たりして、純粋に『企画が面白そうだな』っていうのが最初の印象でしたね。

深津:返信が来て『やばい、行けるかも』って、すぐに打ち合わせ組みました。

Frog3:yozzy

 

yozzy:インスタにもらった深津さんのメッセージと企画書を見て、もうアツいのが伝わってきて、僕たちもめっちゃ嬉しかったんです。この人はちゃんと俺らがやっていることに反応してくれてるんだっていうのを感じて、音楽を評価してくれているのが普通に嬉しかったですね。

深津:普段のクライアントワークって自分が好きなものをつくるのが目的ではないので、好きなものをつくれる機会で自分が好きなFrog3さんと一緒に制作できるって、こんなに嬉しいことあるんだ…って感じでした。

Forg3;Obabita

 

音だけ、映像だけでなく、それらが相互作用する

深津:今回、映像としては、エレファントストーンが歩んでいる時間軸を過去・現在・未来という3つのタイムラインに分けて、常に動き続けて進化・拡張していく姿を音楽とシンクロさせて表現したいと企画段階から考えていたんですが、最初に企画を見た時の印象ってどうでしたか?

Obabita:コンセプトからめちゃめちゃ好きだなって思ってました。音数が増えていく感じで、音の一つひとつが生きているみたいな捉え方をしているのがすごい好きだなって。

Jun Inagawa:わかる。この人は音を感情としてとらえるんだなって思ったし、それをアウトプットできるプロジェクトって面白いじゃんって思ってました。

yozzy:音楽への熱量を企画書から感じましたね。音楽を際立たせるような企画ではあるけど、音楽だけ、映像だけじゃなくて、それらが相互作用するようなプロジェクトだなっていう印象でした。

深津:音楽を作ってくださいとただお願いするよりかは、巻き込んで一緒に制作がしたかったんです。音を生き物として捉えて、それがどんどん未来になっていくみたいなものを表現したくて。弊社のロゴやキャラクターに音をつけるって、ある意味息を吹き込むみたいな部分もあるので、ある種ちょっと責任あることをお願いしてしまったなと今になって思います。

Obabita:その責任みたいなものは依頼をもらった時からすごく感じて、だからこそめっちゃやりたいと思ったっていうのはありますね。

深津:そう思ってもらえてありがたいです。プロジェクトを進める中では、わがままを言って制作の見学までさせてもらって。同じ年代ということで距離感を近く制作できたのもありがたかったです。

IRIS SAKAI:僕たちもオンラインが苦手なので、直接会って話せたのは良かったです。初っ端からやりやすい形でできたなって。

Jun Inagawa:1999年生まれって世代的にぎりぎりアナログ世代じゃないですか。SNSやオンラインじゃ伝わらないことを現場で共有しながら制作できたのは、純粋に良かったです。

深津:映像がまだ初稿くらいの段階でFrogハウス(=制作スタジオ)にお邪魔して、音の細かいイメージや盛り上がり方をその場で共有しながら音楽を作っていただいて。音楽制作の過程自体がすごく興味深かったですし、皆さんと遠慮せずにあーだこーだ言いながらつくり上げていく感覚は、『映像制作もこうじゃないと』って背筋が伸びる感覚がありました。エレファントストーンとして目指す映像制作もこうだよなって。

yozzy:自分も、依頼されて提出して終わりじゃなくて、深津さんが制作に関わってくれるのが嬉しかったですね。Frog3で制作するときもメンバーの個性が全く違うので何が生まれるかわからないんですが、深津さんが入ることでそこにまた化学反応が起きる感覚で。

深津:最初のMTGの時から、遠慮せずにとりあえず無邪気に要求してみようと思っていたんです。だから無邪気に色々ご依頼しちゃいましたね(笑)

yozzy:初回の打ち合わせから目がガンギマリでしたもん。僕たちの中で、深津さんアツい!ってなってました(笑)

深津:そんな感じでしたか…?(笑)
少し社内的なことを言うと、決して楽な制作ではないからこそ、年賀ムービーの制作に手を挙げられる人って正直多くはないんです。
でも、自分が好きなことをこんなに詰め込んでやっているところを社内メンバーに見せることで、『こんなふうにやっていいんだ!』って思って欲しいなっていうのも少しありました。皆さんと制作できることへの嬉しさと熱量がもちろん強かったと思いますが(笑)

 

映像から音をつくり、音から映像を組み立てる

深津:オンラインで一度打ち合わせを実施した後、まずデモを上げていただいて、何度かすり合わせをしながら制作を進めていただきましたが、Frog3の4人での制作ってどう進められていったんですか?

Obabita:今回はあまり時間がなかったので、土台をまず自分が組み立てていきました。リファレンスとしてもらっていた曲を聴きながら土台を組み立てて、他のメンバーに俺にない引き出しを出してもらうようなイメージです。最初にレコードの音を入れよう、サビはこのくらい盛り上がった方が良さそう、みたいな話をみんなでして、作った音源に対してみんなで色々意見を出してブラッシュアップしていきましたね。

yozzy:意見を出す角度がメンバーによって全然違うんですよ。Junは感情的なところで曲全体の方向性を決めていく感じで。それを僕が構成とか曲の流れに落とし込んで、Obabitaが実際の音を並べて実験して。IRISが客観的に見ての良し悪しを判断する、みたいな流れでしたね。

Obabita:確かにそんな感じかも。例えると、Junがクリエイティブディレクターとして方向性を決めて、yozzyがディレクターとしてどう表現するかの引き出しを広げて。僕がカメラマンとして画を撮って。IRISがその映像が本当に良いかを判断する、みたいな。そう考えると、それぞれが個人で活動してることの特色が出てるのかもしれないですね。

深津:制作の様子を見学させていただいた時も、その分担みたいなものは感じました。境界線が明確にあるわけではないけど、自然発生的に各々の役割が決まったんだろうなって。

監督:深津

 

深津:今回のプロジェクトで、こだわっていただいたポイントは何かありますか?

Obabita:今回は素の状態の音を使って、それが集まった時に感情的になることを意識しました。最初はメトロノームや金属音とか、無機質な音から始まるんですけど、それが集まった時に感情的になっていく感じですね。最初のレコードから集まる音を聞いても無感情だけど、最終的には明るくなっていることを感じてもらえたら良いなって思ってます。

yozzy:途中でキンコンという音が入るんですけど、アウトロとかクレジットが入った時に、キンコンという音の印象が変わるんですよね。

深津:それはめっちゃ感じました。感情がすごい音に組み込まれているなって。

yozzy:感情を音に組み込むっていうのが、今回一番意識したんじゃないかな。これじゃ新年じゃないぞ、新年だからもう2段階くらい盛り上げないと…!って。

Obabita:映像全体が約2分で、最初は音数が少ないけど、ラスト1分半を目処に1番盛り上がる状態にするには?っていうのをずっと考えてましたね。
映像ありきだけど、音楽だけでもその盛り上がりを感じられるようにしたいと思って。音楽単体でストーリーが感じられるものができれば、映像が合わさることでそれが具現化されるじゃないですか。

深津:最終的に音楽を出してもらってFBしてっていうのを4回くらいやり取りしたと思うんですけど、最初にいただいたものからイメージ通りだったんです。社内でも『めっちゃ良いじゃん!』って盛り上がったんですけど、そこから完成にかけてさらに色がついた感じがして。
制作のラストスパート追い込みって時に何回も音楽を聞いて、『この音めっちゃカラフルだから、もっと煌びやかにした方が良い。この音にはもっと色がついてる』と思って象に色をつけたんですよ。
皆さんには映像から音を考えていただいたし、僕は音からどんな映像があるかを想像して、それが作用してめっちゃマッチした感じがします。

Obabita:完成版を見た時に、最後音楽がきたタイミングで映像の盛り上がりもきて、めっちゃマッチしたな、って思いました。

Frog3:IRIS SAKAI

 

深津:今回はエレファントストーン2025年一発目のプロジェクトにご参加いただいたわけですが、Frog3として2025年に予定していることはありますか?

yozzy:色々と計画しています。表から見たら2024年の僕たちって音沙汰ないように見えていると思うんですけど、実はめちゃめちゃいろんな準備をしていたんです。

Jun Inagawa:ここまでは準備期間で、2025年はいろんな人に見てもらえる年になると思います。僕たちも、ここまでやってきたことを皆さんに見てもらって、確かめたいなって思ってます。

深津:皆さんの活動を見れるのが楽しみです!今回はありがとうございました。

この記事を書いた人

渡辺知里
エレファントストーンの経営戦略室 ブランドマネジメント課所属

渡辺知里の書いた記事一覧へ

タグ

RELATED ARTICLES 関連記事