SPECIAL
映画は予告編がおもしろい!「70年代〜90年代を彩った名作映画の予告編」
『鬼滅の刃』が歴史的な快進撃を続けていますが、皆さんは、どういったときに映画を観たいと思いますか? “映画館で大ヒットしている”“テレビやインターネットメディアで取り上げられている”“知人・友人からオススメされた”など様々なシチュエーションが考えられますが、なかでもとりわけ身近な動機として第一に思い浮かぶのが“面白そうな予告編を目にしたとき“ではないでしょうか。
言うまでもなく、予告編は視聴者に“本編を見たい!”と強く思わせることを目的として作られています。
スクラップ&ビルドの編集テクニックの粋を集め、最高の構成力をフルスロットで活用することが要求される作品づくりと宣伝へのアプローチはPR映像づくりにおいて参考になる点も多いですよね。
そこで今回は、「短編の映像づくりは予告編に学べ!」をスローガンに、数ある映画CM・トレイラーの中から70年代から90年代を彩ったあの傑作名画の予告編をピックアップしてご紹介いたします!
時計仕掛けのオレンジ(1971)
数々の名作を生み出した鬼才スタンリー・キューブリック監督の作品の中でも、ひときわ危険な輝きを放つ傑作SF『時計仕掛けのオレンジ』。SF映画やバイオレンス映画の概念を変えた映画とも言われ、熱狂的なファンも多く筆者も大好きな作品なのですが、その予告編もまた尋常じゃないほどぶっ飛んだ傑作に仕上がっています。
どうでしょうかこの映像の圧倒的なスピード感とテロップのスタイリッシュなカオスぶり!狂気とバイオレンスとインテリジェンスに満ち満ちた作品の世界観が完璧に表現されていますよね。1971年の映画ですが、今見ても古臭さを感じさせないほど映像が洗練されており、文句なしにめちゃくちゃカッコいいです。
キーワードが錯綜する文字表現では、テロップのフォントの選択も大事な要素ですよね。
世代なのでしょうか、筆者はアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の最終回を深夜に見た時に受けた金槌で頭を殴られたような衝撃をこの予告編で思い出しました。リアルタイムで目にしていたら、たぶん何がなんだか意味分からなすぎた気がしますが、絶対映画館に足を運んでいたと思います。
エイリアン(1979)
密室パニックホラー、クリエイチャー映画の草分けにして不朽の名作『エイリアン』シリーズ。その第一作目の予告編もまた、音楽による演出効果とナレーション・キャッチコピーの教材して是非とも参考にしてもらいたい短編映像の大傑作です。
いかかでしょうか? 音がめちゃくちゃ怖くないですか?
劇中のセリフをいっさい使用せず、BGMや効果音だけで密室の宇宙船の中でエイリアンに襲わせれる異様なシチュエーションを見事に表現しきっています。もちろん名匠リドリー・スコット監督の映像美や造形美も素晴らしいですが、この予告編では何より音楽による感情操作のテクニックがずば抜けて際立っています。
そしてまた、絶大なインパクトを放つ「宇宙では誰もあなたの悲鳴は聞こえない」という最後のナレーション。このときはまだ誰もまだあのエイリアンの世界観を知らないんですよね。
キャッチコピーの教科書があったら絶対に掲載されるであろう名ナレーションで、「どんな作品なんだろう!?」という視聴者の興味を最大限に喚起することに成功しています。
バック・トゥ・ザ・フューチャー(1985)
映画史に残る金字塔を打ちたてた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズですが、意外とその予告編を目にしたことがある人は少ないのではないでしょうか。
ハリウッド感満載な壮大な音楽に、昭和レトロ感漂う大掛かりなフィルム編集。古き良き時代を窺い知るのにぴったりな予告編の名作です。
デジタル全盛の現在の視点から見ると、いかにも80年代なオールドスクール感もありますが、あの日あの頃に夢見ていた近未来への憧れや全米ナンバーワン作品に対する期待感が端々からみなぎっていて、わずかな時間の中に一つの時代のエッセンスが凝縮された堂々たる予告編に仕上がっています。
なお、この予告編を制作した予告編制作会社バカ・ザ・バッカ(映画バカばかりの集団という意味で、そのネーミングセンスもまた素敵)の代表取締役・池ノ辺直子さんは、『映画は予告編が面白い』という著作も発表されています。
20年近く前の本ですが、映画文化に対する深い愛情に溢れ、映像づくりにおいて参考になる点も多いのでオススメです!
レオン (1994)
言わずと知れたリュック・ベンソン監督の名作『レオン』。ニューヨークの片隅を舞台に寡黙な殺し屋と孤独な少女の絆を描いた最高のハードボイルド・ロマンスですが、その予告編がこちらです。
この作品のすごいところは、ずばり構成力。本作を視聴した方には一目瞭然なのですが、予告編冒頭から本作のハイライトともいえる悪役ゲイリー・オールドマンの登場シーンをかなりの尺をさいて折り込んでいます。
静けさのなかにも緊迫感がみなぎるその前半と、爆撃から始まる後半のアクションシーンとのギャップが素晴らしすぎます。ラストのタイトルテロップのタイミングや入り方もパーフェクトでスタイリッシュ。そして、「12歳の女の子に愛された殺し屋」というナレーションのなんというカッコ良さ!
『エイリアン』同様、ナレーションをラストシーンだけに使用し、映像と音声を主体として作品を構成することでかえってキャッチコピーのインパクトが絶大なものとなっています。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回ピックアップした予告編は、フィルム編集からデジタル編集へという技術革新がなされる以前の時代に制作されたものであり、現在の視点から見ると編集テクニック上のさまざまな制約が目につきますが、「視聴者にいかに興味を持ってもらうか?」という根っこの部分においては今となにひとつ変わらないことが、映像からひしひしと伝わってきます。
短い時間の中で作品素材の魅力を的確に捉えて表現し、視聴者の興味を最大限に喚起することが求められる映画予告編には、編集力と想像力の妙が詰まっていて、プロモーション映像の制作にも重なる点が多いですよね。
なにより筆者が大の予告編好きなので、今後も音楽映画やカルト映画、駄作映画編など厳選してご紹介できたらなと思っています。どうぞお楽しみに!