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夏の甲子園PR手法に迫る!過去の名CMから2023年のCMをご紹介

夏の甲子園PR手法に迫る!過去の名CMから2023年のCMをご紹介

今年も熱い試合が繰り広げられた夏の甲子園。

毎年夏になると朝日新聞デジタル社が大会に向けてPR映像を一般公開しているのですが、今回は、今年の新作CMを含めて過去の名プロモーションを振り返りながら夏の甲子園のPR手法に迫ります!

夏の甲子園CM、3つの特徴

①ストーリー性が高い

スポーツ大会のPRといえば、戦う選手の勇姿にフォーカスされたものも多いですが、全国高校野球選手権大会のPR映像は、ベンチからエールを贈る監督、マネージャー、スタンドから活躍を見守る家族や友人など、マルチな目線で甲子園という夢の舞台の魅力を伝えています。

さまざまな視点から一つの事象を捉え直すことで、ストーリーの高いコンテンツを生み出し続けています。

②コラボレーションによる話題性

今年のプロモーションでは、Mrs. GREEN APPLEでボーカル/ギターを務める大森元基さんが楽曲歌唱を担当。昨年のCMには、タッチのヒロイン役で知られる声優の日高のり子さんを起用するなど、毎年、意外性や話題性のあるコラボレーションを実現させることで、野球ファンだけでなく幅広い人々の注目を集めることに成功しています。

③多彩なアプローチ

年度によってPRのアプローチが全く異なるのも全国高校野球選手権大会の人気の秘訣です。ドキュメンタリー映画風のものから、ダンスをテーマにした青春もの、あの名作アニメとのコラボレーションまで、予想を超える意外なアイデアや仕掛けを駆使し、夏が来るたびにファンを楽しませてくれます。

CMを公開している朝日新聞デジタル社は2021年に創刊10周年を迎えた革新性と多様性を重視する新時代のWebメディアであり、その企業理念がクリエイティビティにも反映されているといえそうです。

事例紹介

①2023年

今年のCMは「さぁ行こう、僕らの夢へ」というキャッチフレーズをテーマに制作されています。

YouTube限定で公開されている下記動画では、ある高校球児の視点で野球と出会った日から甲子園のマウンドに立つまでの記憶がエモーショナルに描かれています。

主観アングルで撮影された映像で、ドキュメンタリー映画仕立てのショートストーリーで展開。一人の少年が辿った数年間にわたる成長の軌跡が、1分13秒という短い時間の中で巧みに表現されていますよね。また、105回の甲子園と、その舞台を目指した球児、球児を支える人の想いを映像を通して届けています。

短い時間でも非常に密度の高い内容になっており、公開から1ヶ月で50万回以上の視聴回数(※2023年8月時点)をマークしているのも納得の一本です。

②2022年

ヒロインの声優に日高のり子さんを迎えた2022年のCMは、甲子園のCM史上初めてのアニメーション動画として制作されています。

高校野球を題材とした漫画/アニメ『タッチ』(1985年)でヒロイン役を演じた日高さんを起用し、反響を呼んだ本CM。野球ファン以外の人々も巻き込むPRとなりました。

甲子園を舞台に世代をまたいだヒューマンドラマを30秒のショートストーリーで展開。説明しすぎない演出と構成が素晴らしく、原作から37年の歳月を経て全国の野球ファン、アニメファンを感涙させたアイデア光る名PRです。

②2021年

2年ぶりの開催となった第103回大会のCMがこちらです。

張り詰めた空気の中、凛としたナレーションと歌声が響き渡る、心に深く染みる式典の様子を描写。多くの人が待ち望んだ大会だけに、甲子園が歩んだ歴史の重みを感じさせるとても格調高い映像となっています。2年前の大会での出演が決まっていた、ミュージカル俳優の山崎育三郎さんが歌唱を担当しています。

③2018年

記念すべき第100回目の大開催となった2018年。そのメモリアルイヤーに公開されたPR映像は、ダンスをテーマに制作された青春感あふれる一本です。

普段はライバル校としてしのぎを削っている大阪3校の生徒たちが、協同でダンスを制作。甲子園を支える全ての人たちへの感謝の気持ちと全国の球児たちへの熱いエールを届けています。

等身大の高校生が主役を担っているという点から話題性を呼び、同世代を中心としてSNSでも多数のシェアを獲得。制作から5年経った現在でも視聴が伸び続け415万回再生(※2023年8月時点)を突破しています。

④2015年

2015年に開催された第95回全国高校野球選手権大会の際もダンスの魅力を活用した映像が制作されています。

テーマ曲は2018年大会と同じくやはり大会歌『栄冠は君に輝く』ですが、編曲スタイルやダンスパフォーマンスなどの演出によって全く異なった印象になっています。

またこの年はCMだけでなく、開会式に行われたユニークな空中パフォーマンスやプレー集も公開。多角的にPR展開し、好評を博しています。

⑤ 2011年

2011年に開催された第91回全国高校野球選手権大会では、CMという形式ではなく特別な想いがこもった映像が公開されています。

東日本大震災という未曾有の出来事に見舞われたすべての人々に向けて、岩手・宮城・福島三県と阪神・淡路大震災があった神戸市の高校生370名が、大会歌『栄冠は君に輝く』を合唱し、復興への祈りを捧げています。野球という枠組みを超えて多くの人の胸を震わせる名映像になっています。

まとめ

今回は甲子園のPR手法の特徴について、過去の作品をたどりながらご紹介しました。同じテーマを扱い続けているにも関わらず、マンネリ化することなくバリエーション豊かにストーリーを紡ぐテクニックは、映像制作を考える上で大きなヒントを与えてくれます。

毎年ファンの予想を超える意外なアイデアやコラボレーションを実現してくれるので、来年の夏にもまた新作をお届けできればと考えています。記事でピックアップした動画とあわせて、グラウンドで熱戦を繰り広げる球児たちの勇姿にも注目です!

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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