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最先端AIを活用した傑作MVをご紹介!

最先端AIを活用した傑作MVをご紹介!

ChatGPTの登場とともに社会を大きく揺り動かしている生成AI。

ここ最近急速にシェアを拡大しているイメージがありますが、生成AIおよびAIテクノロジーには歴史があり、クリエイティブ業界の最前線では5〜6年前から新しい創作ツールとして実用化されています。

そこで本記事では、AIを活用して映像を制作したMVの代表事例を制作年次を表記しながら紹介していきます。

最先端AIを活用したMV傑作選

①Hardcore Anal Hydrogen “Jean-Pierre” (2018, Apathia Records)(2018)

【特徴】
・2017年登場のコンピュータービジョンプログラム「Deep Dream」、画像変換プログラムの「Neural Style Transfer」、アルゴリズムを調節できる「DeepFlow」を使用
・圧倒的にサイケでアートな衝撃映像

チャレンジ精神と遊び心に満ち溢れたメタル/エレクトロ/ポップ・バンドのHardcore Anal Hydrogen。

上記の動画は、2018年に公開されたスラッシュ・メタル曲『Jean-Pierre』のMVです。ハッピーな気分を一瞬にして悪夢に変貌させるおぞましい映像は、こわいほど不気味でアーティスティック。

今回取り上げるMVの中では唯一2020年代以前のものです。制作から5年の時が流れていますが、当時最先端だったAI技術によって作り出されたサイケデリック・ホラーのような世界は今見ても衝撃的です。

画像・映像・音声をサイケホラー風に自動編集する人工知能「Deep Dream」をベースに、アプリの「Prisma」でも使われている画像変換プログラムの「Neural Style Transfer」、映像内の動きのアルゴリズムを調節できる「DeepFlow」。これらを使ってAIにディープラーニングさせたイメージを映像に適用するよう指示し、生成したようです。

②I asked AI to make a Music Video… the results are trippy(2022)

【特徴】
・VQGAN+CLIPというアニメーションが生成できるAIで作成したMV
・楽曲の展開に合わせてアニメーションの種類がビビッドに変化

DoodleChaosは、音楽と映像をクレイジーな仕掛けで同期させる米国出身のコンテンツクリエイターです。下記の映像では、人工知能を利用することでRezonate の『Canvas』という曲のアニメーションMVを自動生成しています。

本作品の最大の特徴は、曲の場面ごとにアートスタイルの変更を指定することで、展開にあわせて自由自在にアニメーションスタイルが様変わりしているという点です。歌詞とアニメーションの雰囲気も同期しており、非常にインパクトのある映像になっていますよね。

使用されているアニメーション生成AIの「VQGAN+CLIP」は、歌詞をAIに入力するとボタンを押すだけで完璧な音楽同期ビデオを自動的に作成してくれる魔法のようなテクノロジーです。こだわりの強いクリエイターであるDoodleChaosは、歌詞だけでなく追加入力も行なっているようです。

具体的には、生成された世界全体にカメラモーションのキーフレームを追加し、それを手動でビートに同期させ、より完璧な映像と音楽の動機を実現しています。

③Lost [Official Music Video] – Linkin Park(2023)

【特徴】
・伝説のロックバンドの未発表曲
・話題のNFTアーティストがディレクションを担当

ミクスチャーロックを代表し、21世紀で最大のセールスを記録したとされるアメリカのモンスターバンドLinkin Park(リンキンパーク)。今年の2月、未発表曲『Lost』のMVで今話題の生成AIを活用し、大きな衝撃を与えています。

ファンにとって何より感動的なのは、アニメ化された現バンドメンバーとともに世界中のリスナーから愛されたフロントマンの故チェスター・ベニントン(2017年に急逝)の姿がフィーチャーされていること。

このMVは、PplpleasrとMaciej KuciaraによるWeb3動画プラットフォーム渋谷がプロデュースとアニメーションを担当。制作ツールとして、イラストや音楽を動画に自動変換する「Kaiber. ai」のAIレンズを用いており、最先端テクノロジーによって伝説のロックバンドが持つレガシーを再構築させています。

なお、NFTアーティストでもあるPplpleasrは、『Forbes』が選ぶ30歳以下のリーダーの一人として選出された要注目のクリエイターです。気になる方は、ぜひ他の作品もチェックしてみて下さいね。

④This AI-Generated A Cappella Music Video Will Leave You Speechless(2023)

【特徴】
・現時点における生成AIの最先端
・アバターも含めAI100%の映像クリエーション

アメリカのオレゴン州を拠点に活動しているPeter Hollensは、YouTube や Facebook でアカペラ音楽を専門とするクラシックの訓練を受けたボーカルアーティストです。投資家やアドバイザーとしても活躍する彼は、ここ最近「100% AI のMVを作成するとどうなるか?」という生成AIに関する最新のアイデアや情報をSNSで多数公開。

その先進的な取り組みは、感度の高い世界中のクリエイターから注目されています。

新海誠ワールドを彷彿とさせる美しいアニメーションが印象的な本作は、Kaiber.aiを主軸としてChatGPTのショットリスト(絵コンテを作成した後にシーンに必要なショットの種類、屋外や屋内のロケーション、登場人物やショットの概要をまとめたドキュメント)で「旅の途中のシーン」を選択して制作。セット拡張とアセット修正には「RunwayMl」を活用しています。

▼ショートバージョンはTwitterで公開

歌唱パートとシンガーのアバター生成は、ジェネレーティブ AIとクリエイティブメディアの世界的リーダーである「D-ID」が開発したAIテクノロジーを使用。Peter Hollens本人の自撮りと歌声を元に、音声付きのアバター動画を生成し、女性スライドギタリストの草分け的存在として知られるBonnie Raittの名曲『I Can’t Make You Love Me』を映像、音楽の両面から現代風にリメイクしています。

日本での知名度はまだそれほどありませんが、彼のコンテンツには 700万人を超えるフォロワーとサブスクライバーがおり、合計10億回を超える視聴回数を獲得。今後の活躍に目が離せないです。

まとめ

今回は、AIを使った傑作MVをご紹介しました。

ここ1年で圧倒的に数が増えたAIを使ったMVですが、使用できるAIのバリエーションも豊かになり、複数を組み合わせて制作されていることも珍しくありません。今後どのような潮流が生まれていくのか楽しみでなりませんね。また、新たな動きがあったらお届けします。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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