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映画『PERFECT DAYS』でも話題。日本のトイレ文化を世界へ発信する「THE TOKYO TOILET」

映画『PERFECT DAYS』でも話題。日本のトイレ文化を世界へ発信する「THE TOKYO TOILET」

画像参照:https://tokyotoilet.jp/yoyogifukamachi_mini_park/

こんにちは、映像制作のエレファントストーンが運営するオウンドメディア「ZOOREL」です。ヴィム・ヴェンダース監督の最新映画『PERFECT DAYS』が、アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされ、大きな反響を呼びました。謎めいた過去を持つトイレ清掃員の日常を、美しい東京の風景を交えながら丁寧に紡いだ本作ですが、実は日本のトイレの素晴らしさを国際的にアピールするPR活動が発端となって制作されたことをご存知でしょうか?

そこで今回は映画につながった背景を含め、「THE TOKYO TOILET」プロジェクトを紐解いていきます!

「THE TOKYO TOILET」とは?

「THE TOKYO TOILET」は、暗い、汚い、怖いといったネガティブなイメージの根強い東京の公共トイレを生まれ変わらせようという想いからスタートした、日本財団が実施する“誰もが快適に使用できる公共トイレを設置する”プロジェクト。安藤忠雄さん、隈研吾さん、佐藤可士和さんといった多方面で活躍する16人のクリエイターとタッグを組み、優れたデザインやクリエイティブの力で多様性を受け入れる社会を実現することをその目的としています。

現在は渋谷区の協力の下、性別、年齢、障害を問わず誰もが快適に利用できる公共トイレが17ヵ所に設置されています。建築デザインにとどまらず、清掃員の制服デザインをファッションディレクターのNIGO®️さんが手掛ける等、緻密に構築されたイメージ戦略によって、日本のトイレの魅力が全世界へ向けて発信されています。

多様性をトイレで実現。インクルーシブな理念とデザイン性

世界的に著名なデザイナーや建築家が集結し、東京のトイレを明るくキレイにクリエイティブした本プロジェクト。その独創性は、単なる実用的な施設にとどまらず、繊細な感性の宿った日本の美意識と優れた衛生面を併せ持つ芸術作品として公共トイレを捉え直している点にあります。

街の景観と調和するデザイン、人々の行動変容を生むデザイン、公衆衛生のあり方に問題提起を投げかけるデザイン…どの作品もコンセプトとデザインが密接に融合しており、従来のトイレ観を根本から覆す、魅力にあふれた建築物といえます。

誰もが快適に利用できる公共トイレであることをモットーとしており、トイレそのものの形態だけでなく、一つひとつをプロジェクトとして総合的に「デザイン」することにもチャレンジ。全ての人が気軽に使えるよう、周辺環境全体が整備されていることがその外観からもはっきりと確認できます。例えば、恵比寿公園トイレ(1分33秒〜)では、インクルーシブな設計理念に基づき、男性用トイレ、女性用トイレ、誰でもトイレという三つのスペースを導入したユニークな空間設計が施されています。

なぜ映画『PERFECT DAYS』へ繋がったのか?「THE TOKYO TOILET」のプロモーション戦略

トイレを通じて「日本の誇り」を伝える「THE TOKYO TOILET」の構想は、株式会社ファーストリテイリングの取締役を務める柳井康治さんと、JR東日本「行くぜ、東北」などを手がけた株式会社電通グループのクリエイティブディレクターの高崎卓馬さんとの二人三脚によって編み出されました。

そして、その日本のトイレを国際的にアピールするための宣伝方法として選ばれたのが映像コンテンツ。両者が好きな映画監督であり、小津安二郎フリークとしても知られるヴィム・ヴェンダース監督へ直接依頼し「アートプロジェクト」の中核として誕生したのが、映画『PERFECT DAYS』でした。

これまでも地方自治体が映画のロケ地や原作地を観光資源として観光客へプロモーションする取り組みは多くありましたが、「THE TOKYO TOILET」における一連の取り組みはそうしたプロモーション活動の新しい形として捉えることができるでしょう。

東京の最新の楽しみ方を世界各国へ紹介するビデオプロジェクト「PLAY TOKYO」チャンネルでも「THE TOKYO TOILET」がフォーカスされています。東京を隅々まで熟知したビデオグラファーによって、テキストを交えながらコミカルかつ洗練された映像で分かりやすく伝えられています。こうして話題が波及しより多くの方に「THE TOKYO TOILET」の取り組みが広まっています。

まとめ

映画『PERFECT DAYS』のヒットにより、今日では舞台となるトイレを聖地巡礼する観光客の姿を見る機会も増えています。身近にありながら、誰も注目してこなかった日本の「トイレ」を観光リソースとして再定義することで、新しいコンテンツツーリズムを生み出した「THE TOKYO TOILET」プロジェクトの取り組みは、地方創生や企業ブランディングを考える上でも重要な示唆を与えてくれそうです。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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