このように、映画をきっかけにその舞台となった地域へ訪れる観光プロモーションの動きが活発に見られます。
現在では当たり前となった「聖地巡礼」も、こうした作品群がその先駆けと言えるでしょう。映画を通じて地域の魅力が伝わり、地域活性化につながる好例です。
引用元:https://www.tbs.co.jp/tbs-ch/item/m1214/
こんにちは!ZOORELを運営する映像制作会社エレファントストーンです。
近年、『80年後のあなたに』や『サンセット・サンライズ』など、地方プロモーションの要素を取り入れた邦画作品が注目を集めています。こうした映画のルーツとも言えるのが、昭和30年代から数多く制作されてきた“ご当地映画”。地域の魅力を映像で伝える先駆けとして、その土地ならではの風景や文化、人々の営みを映し出してきました。
いわば、ご当地映画は地域PR動画の原点。その存在は、現代の地域プロモーションにも深くつながっています。本連載では、2000年以降に公開されたご当地映画を、年代別(10年単位)に4〜5本ずつピックアップし、ご紹介していきます。
第1回目となる今回は、2000年代(いわゆる“ゼロ年代”)に公開されたご当地映画にフォーカス。時代背景や地域の魅力がどのように描かれてきたのか、厳選した作品とともに振り返ります。
舞台:福島県いわき市
エネルギー革命の波により炭鉱の閉鎖が迫る、福島県いわき市を舞台にした感動作。昭和40年、炭鉱町の未来をフラダンスショーで切り拓こうと奮闘する少女たちの姿を描いています。
実話をもとにしたストーリーはもちろんのこと、「国宝」でも注目を集めた李相日監督による力強い演出、そして映像・音楽・ダンスが一体となったシーンの数々が、観る人の心を揺さぶります。閉塞感のなかで希望をつかもうとする人々の姿は、地域再生や地方の未来を考えるうえでも示唆に富んだ1本です。
上映後、物語の舞台となった常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)には、映画に登場したフラダンスショーを一目見ようと、全国から多くの来場者が訪れました。
経済産業省の推計では、本作がもたらした地元への経済波及効果は約11.7億円にものぼるとされています。
また、かつては閑散としていたショー会場も、映画のヒット以降は開演30分前には満席、立ち見が出るほどの盛況ぶりだったといいます。まさに「映画の力」が地域にもたらした成功事例のひとつであり、ご当地映画が持つ可能性を体現した作品です。
舞台:山形県庄内地方
チェロ奏者としての夢が破れた主人公が、故郷・山形県の庄内地方に戻り、伝統的な「納棺師」としての仕事に就くことに。
最初は戸惑いながらも、亡くなった人を送り出す儀式を通して「生と死」に真摯に向き合い、人と人とのつながりや命の尊さを再発見していきます。
監督は『秘密』『壬生義士伝』などで知られる滝田洋二郎さん。本作は第81回アカデミー賞で外国語映画賞を受賞し、国際的にも高い評価を受けた作品として大きな話題を呼びました。
映し出される庄内の風景は、映画のしっとりとした情感と深く呼応しており、観る人にその土地の空気感まで届けてくれるような一作です。
本作は山形県酒田市を中心に撮影され、地元住民も多くエキストラとして参加。四季の移ろい、雪景色、古民家のぬくもりといった庄内ならではの風景が、人生の豊かさや人間の営みを象徴するように丁寧に描かれています。
映画のヒットを受け、酒田市を中心とした庄内地域ではロケ地マップの作成や聖地巡礼ツアーが実施され、多くの観光客が劇中のシーンを辿って訪れるようになりました。
さらに、アカデミー賞外国語映画賞の受賞という快挙により、海外でも注目を集め、国内外から訪れるファンによって地域の国際的な知名度向上にも大きく貢献。映像作品が地域の魅力を世界へと発信し、人の流れや経済にも影響を与えた好例といえるでしょう。
舞台:山形県
山形県の高校を舞台に、落ちこぼれの女子高生たちがひょんなことからビッグバンドを結成し、ジャズに挑戦していく青春コメディ。
監督は『ウォーターボーイズ』で青春映画の新境地を開いた矢口史靖さん。軽快なテンポとユーモア、そして音楽に打ち込む喜びに満ちた本作は、世代を問わず多くの人に愛される一作となりました。
公開後には全国の高校でジャズバンドブームが巻き起こり、楽器演奏やビッグバンド文化への関心が高まるなど、“音楽×青春”の力がリアルな影響を及ぼした作品でもあります。また、山形の自然や地域ならではの空気感が物語に彩りを添え、地方に眠るポテンシャルや若者のエネルギーが、地域再生の希望として描かれている点も印象的です。
引用元:https://www.cinequinto.com/shibuya/movie/detail.php?id=303
本作には地元の高校生や吹奏楽団も全面協力しており、地方の高校生たちの日常をリアルかつユーモラスに描写。
笑って泣いて、最後には必ず“元気”になれる、エネルギッシュな青春映画に仕上がっています。
ロケは新庄市や最上郡舟形町・真室川町など、山形県内各地で行われ、映画公開後はロケ地巡礼による観光客の増加が報告されました。作品の舞台となった地域はにぎわいを見せ、地方と映像文化の新たな関係性を示した例として、現在も語り継がれています。
単なる青春映画にとどまらず、“映像が地域を元気にする”という地方創生の可能性を具体的に示したモデルケースとして、2000年代のご当地映画を象徴する一本です。
舞台:秋田県
秋田県の山村を舞台に、里山の暮らしを守り続ける老婦人・ハナばあちゃんと、東京からやってきた孫娘との心の交流を描いたヒューマンドラマ。自然とともにある暮らし、命の循環、人と山とのつながりを、温かく丁寧な視点で描いています。
伝統的な知恵や信仰が色濃く残る地域での生活を通じて、「山の神様」への畏敬や自然との共生を次世代へつなぐ大切さが伝わってくる作品です。
秋田県大館市北秋田地域の魅力発信と地域活性化を目的に制作された映画です。最初から映画制作を通じて地域への注目を集める狙いがありました。
物語のテーマは、地域の「喫茶おだて」を切り盛りする「ハナばあちゃん」。彼女の人徳もあって店は賑わっていましたが、病気で倒れて亡くなってしまいます。タイトルにある「ばあちゃん!!」というイメージとは対照的に、秋田の豊かな自然を生かした風景美が際立つ作品です。17年前の作品とは思えない映像美に魅了されます。
引用元:https://eiga.com/movie/33965/photo/
舞台:徳島県徳島市
犬童一心監督による、さだまさしの小説を原作としたヒューマンドラマ。徳島市で母・咲子(松嶋菜々子)が、病気の母(大楠道代)と共に故郷と向き合う物語です。
作品では、徳島の阿波おどり、眉山、吉野川、鳴門の渦潮など、豊かな自然と文化が鮮やかに描かれています。阿波おどりのシーンには地元住民も参加し、祭りの活気と地域の絆を力強く表現。徳島の伝統や風土が観光資源として強く印象づけられました。また、徳島市がロケ地として積極的に協力し、公開後は「眉山ロケ地マップ」の作成や観光キャンペーンが展開され、阿波おどりや眉山への観光客増加に繋がりました。
引用元:https://eiga.com/movie/41168/photo/
舞台:岐阜県
市川拓司の小説を原作としたラブストーリー『いま、会いにゆきます』は、亡くなった妻(竹内結子)が夫(中村獅童)と息子に再会し、家族の絆を描く感動作です。
舞台は岐阜県中津川市を中心とした中部地方で、緑豊かな森林や川、田園風景が美しく映し出されています。梅雨時のしっとりとした自然や静かな地方の町並みが物語の情感を深め、観光地としての魅力も発信。特に映画のキーとなる「森の図書館」や田舎の家屋は、中部地方の素朴な美しさを象徴しています。
映画のヒットを受け、中津川市はロケ地マップを作成し、「いま、会いにゆきます」のロケ地巡りツアーが人気に。岐阜県の自然や地方都市の魅力が全国的に注目されました。また、第28回日本アカデミー賞優秀作品賞を受賞しています。