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「可愛いのに少し怖い」世界観の正体。アートディレクター矢島沙夜子×NEWoMan PR動画に迫る

「可愛いのに少し怖い」世界観の正体。アートディレクター矢島沙夜子×NEWoMan PR動画に迫る

画像引用:https://www.lumine.ne.jp/magazine/activity/?p=417&utm_source=luminemagazine&utm_medium=referral&utm_campaign=itsnewweek

こんにちは!ZOORELを運営する映像制作会社、株式会社エレファントストーンです。

先日公開された、NEWoManのプロモーション動画「“IT’S NEW” WEEK 2026SS」が、インパクト抜群で話題を集めています。

スプリングシーズンのプロモーションとして制作された本作では、春の不思議な生き物たちがピクニックを楽しむ様子を描き、独特で幻想的な世界観を表現。思わず引き込まれてしまうビジュアルが印象的な映像に仕上がっています。さらに、主演を俳優の橋本愛さんが務めていることでも大きな注目を集めました。

そこで今回は、本作でアートディレクターを務めた矢島沙夜子さんのクリエイティブにフォーカスしながら、映像の魅力を詳しく紐解いていきます。

NEWoManプロモーション動画 『“IT’S NEW” WEEK 2026SS』 作品紹介

NEWoManのプロモーション動画『”IT’S NEW” WEEK 2026SS』のテーマは、どこか別の世界に生きる春の生き物たちが集う、夢現のピクニック。

ファッションのシーズンプロモーションでありながら、幻想的なキャラクターや独特の世界観でブランドの“新しさ”を表現しています。アートディレクターのSayoko Yajimaさんによるクリエイティブが随所に光る、中毒性の高い1本です。

ファンタジックでありながら、どこか“悪夢”のような不穏さも漂う独特の世界観。その中で「この世界の住人」として自然に溶け込むヒロイン役に起用されたのが、俳優の橋本愛さんです。透明感のある存在感とミステリアスな雰囲気を併せ持つ橋本愛さんのキャスティングは、この幻想的で少し不穏な世界観を成立させる重要な要素となっています。

さらに、花の蜜を思わせるゼリー状のご馳走や縄跳び、正体のわからない独特の飲み物など、細部にまでこだわったビジュアル演出も印象的。可愛らしさの中にどこか違和感を忍ばせることで、単なるシーズンプロモーションにとどまらない、記憶に残るアート作品のような映像体験を生み出しています。

アートディレクター/デザイナー・矢島 沙夜子さんについて

本作のアートディレクションを手がけたのは、クリエイティブスタジオKLOKAに所属するアートディレクター/デザイナーの矢島沙夜子さんです。2010年代初頭から活動を続けており、グラフィックや空間デザインを軸にキャリアをスタート。その後、インスタレーション、プロダクト、映像などへと表現領域を広げ、ジャンルを横断するクリエイターとして注目を集めてきました。

近年では、鮮烈なビジュアルで話題を呼んだ雑誌「紫苑」のアートディレクションを手がけたほか、桃源郷のお土産屋をコンセプトにした「小楽園 TEA SALON & BOUTIQUE」をオープン。独自の世界観を体験として提示するプロジェクトとして、飲食・カルチャー領域でも大きな反響を呼んでいます。

自身「活字から想像した世界を、嗅覚・触覚まで再現したい」と語っている通り、「匂い」や「温度」が感じられるデザインや映像が特徴的。作品に通底する「可愛いのにちょっと不穏」、「ポップでいて毒々しい」世界観は必見です。

矢島沙夜子さん代表作をご紹介

1. 『”PATISSERIE CASSIOPEIA ” special short film FULL by KLOKA』(2021年公開)

矢島さんの世界観を象徴する作品として挙げられるのが、初監督作『PATISSERIE CASSIOPEIA』です。監督・脚本・美術・編集・イラストまでを自ら手がけており、彼女のクリエイティブが色濃く反映されたショートフィルムとなっています。

物語は、カシオペヤ座からやってきた天才パティシエ2人が営むお菓子屋に、一通の手紙が届くことから始まるファンタジックなストーリー。どこか不思議で愛らしいビジュアルや独特の世界観は、現在の作品にも通じる矢島さんらしさを感じさせます。

本作はYouTubeで公式公開されており、約10分で一気に観ることができるのも魅力のひとつです。

ドールハウスの技法を生かした没入感のある世界観も、本作の大きな魅力です。店内に並ぶスイーツはすべて1/6スケールのミニチュアでありながら、驚くほどリアルに作り込まれています。

ハンドメイドならではの質感を残しつつも、全体にはどこかスペーシーで幻想的なムードが漂っているのも印象的です。さらに、手動操演によるストップモーションの演出に加え、お菓子がすべてゼリー状だったり、グミ星人がポップでありながら少し不気味だったりと、細部まで独創的なアイデアが散りばめられています。

可愛らしさの中にわずかな違和感や不穏さを忍ばせる――そんな矢島沙夜子さんの「可愛いのに少し怖い」美学が、作品全体で見事に体現されています。

2. 『Je Te veux:Kenji Hirano』(2015年公開)

2015年に公開されたファッションフィルム(監督:Kenji Hiranoさん)は、トランシルバニア国際短編映画祭でベストファッションフィルム賞を受賞した作品です。アートディレクションを担当したのは矢島沙夜子さん。現実と夢の境界や、時間の流れが曖昧になるような独自の世界観を構築しています。

フェルメールの絵画を想起させる静謐なビジュアルと、現代のスマートフォン依存というテーマを融合させたラブレターの物語が、シュールでありながら美しい映像表現で描かれています。

現代性とクラシックがミックスされた幻想的でシュールな空間の質感だけで、「可愛いのに少し不穏」な独特の雰囲気を生み出しているアートディレクションは見事のひと言です。

名画を思わせる室内シーンに、東京の地下鉄でスマートフォンに没頭する少女たちの習慣を重ね合わせるというアイデアもユニーク。クラシックな美術表現と現代的なモチーフを掛け合わせることで、どこか現実と夢の境界が曖昧になるような世界観が立ち上がっています。

キャリアとしては比較的初期の作品ですが、後の作品にも通じる矢島沙夜子さんならではの美学がすでに感じられる、魅力にあふれた1本です。

3. 『The Small Utopia & the Cats SHORT FILM “The Story of Aria” FULL スモールユートピア&ザキャッツ 「アリアの物語」』(2022年公開)

『The Small Utopia & the Cats “The Story of Aria”』は、矢島沙夜子さんが監督・脚本・編集・声優まですべてを手がけた、2022年公開のスペシャル短編映画(約20分)です。

『PATISSERIE CASSIOPEIA』と同様、作品はすべて1/6スケールのドールを用いて撮影されています。ストップモーションに加え、手動操演や3Dモデルを組み合わせることで、可愛らしさの中にどこかキッチュさや不思議な違和感を感じさせる、矢島さんならではの世界観を見事に作り上げています。

全6章で展開するストーリーは、ねこたちが人間のように服を着て暮らす「スモールユートピア」の世界を舞台に、主人公アリアが巨大迷路の秘密に迫っていく冒険物語です。

ミニチュアセットの精巧さと物語の奥行きが一体となり、文学的な香りを感じさせる“矢島沙夜子ワールド”が存分に展開されています。まるでその世界の空気や温度、匂いまで伝わってくるかのような圧倒的な没入感も魅力のひとつ。単なる可愛らしい映像にとどまらず、観る人の記憶に残るアート性の高い短編作品に仕上がっています。

まとめ

JRが手掛けるルミネ、NEWoManなどはプロモーションにとりわけ女性へのメッセージ性を掲げることが強く、その度に話題のプロモーションになってきました。

今回の動画”IT’S NEW” WEEKではそうした文字によるメッセージはありません。しかし、橋本愛さんが子役のあまちゃんの頃から大きな変化をしていることで、既に驚きをもってニュース化もされており、ビジュアルだけで「ファッション」の可能性を訴えることに成功しています。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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