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VRとは実は別物『VR360度』動画とは何か?

VRとは実は別物『VR360度』動画とは何か?

『Facebook』や『YouTube』でもアップロード可能となり、じわじわと話題を呼んでいる「VR360度動画」。前回の記事でその歴史をふりかえった「VR」と混同されがちなコンテンツですが、実際は微妙に違います。その違いはいったいどこにあるのでしょう?

今回は、VR360度動画の定義とソーシャルメディアでの具体的な使用例について、いくつかご紹介したいと思います。

「VR 360度動画」とは?

「VR 360度動画」とは、周囲360度のすべてを映せるカメラによって撮影された映像をもとに作られた動画のことです。VRをつけずに360度動画といわれることもあります。

その起源をたどると、1991年にアップルが発表した「QuickTime VR」にまで遡ります。

これは、複数の画像をシームレスにつなぎ合わせて360度のパノラマ画像を作成できる画期的なシステムでしたが、現在ではRICOH THETAなどの「360度カメラ」といわれる専用の機材を使用することで誰でも簡単に「360度動画」を撮影ができるようになりました。

「VR 360度カメラ」は「全天球カメラ」とも呼ばれ、複数台のカメラを合体させることで全視野を確保したものや、180度以上の画角の魚眼レンズや超広角レンズを前後に2つ搭載したものなど、さまざまなタイプのものが販売されています。値段も手ごろで、中には1万円台で購入可能なアイテムもあります。

「VR動画」との違いは?

それでは、「VR 360度動画」と「VR動画」の違いは何なのでしょうか?

詳しくは前回の記事を参考にしていただきたいのですが、VRとはそもそも「Virtual Reality(=仮想現実)」の訳であり、「コンピュータによって人為的に構築された虚構の世界をリアルな現実として知覚させる技術」を指します。

つまり「VR動画」とは、高度なテクノロジーによって作られた仮想現実へダイブすることを目的としたものであり、現実世界の事象をカメラによって写しとった映像を楽しむ「360度動画」とは、本来まったく異なるコンテンツなのです。

「VR動画」の制作は専門的かつ高度な知識と技術が必要なため、現段階では一般ユーザーには極めて参入ハードルの高いコンテンツですが、他方「360度動画」は360度カメラが搭載されたスマートフォンの普及もあり、誰もが気軽に制作が可能です。

しかしながら、残念なことに、「VR」という語の認知度の高さやキャッチ―さからか、「360度動画」を「VR動画」として提供しているコンテンツが少なくないのが現状です。ともに、三次元の空間性を特徴としたコンテンツであるため、なにかと混同されがちではありますが、実際には別物と見たほうがいいのかもしれませんね。

よって、ここからはVR動画と区別をつけるべく360度動画と表記して記事をお届けします。

360度動画の使用例

360度動画が世界的な脚光を浴びるきっかけとなった出来事があります。
2017年1月10日に行われたオバマ前大統領の退任演説の一部始終(1時間14分1秒におよぶ)を、海外メディア『VRScout』がYouTubeやFacebookを通じてライブストリーミング配信したのです。

会場にいる一人ひとりの観衆の様子が丸わかりなのがすごいですね。

動画を見ていると、私たちが歴史的な出来事をあらゆる視点からリアルタイムで視聴可能な時代に生きていることを強く実感します。

ちょっと意外でしたが、客観性や中立性が重要視される政治の世界と、多角的な視野で事象を観察できる「360度動画」の親和性は、かなり高いものなのかもしれません。その分、いろいろとごまかしが効かなくなりそうですが。

ちなみに1月20日に行われたトランプ大統領の就任式も、『USA Today』が360度動画をYouTubeでライブストリーミング配信しています。

これらは、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)があれば「VR動画」としても視聴可能となっており、今後もソーシャルメディアを通じ政治的な出来事が「360動画」「VR動画」で生配信される流れが続いていくでしょう。

自転車の危険運転ぜったいダメ!注意喚起のPR動画

JAF(一般社団法人・日本自動車連盟)は、私たちが日常で犯しがちな危険な自転車運転の数々を「360度動画」として一般公開し注意を喚起しています。

デフォルトの動画を見ていると気づかないのですが、画面左上の矢印をクリックしてアングルを変えると、自転車を走行中に前方で停止した自動車を避けようと蛇行した瞬間に後方を走っている車と衝突しそうになっていたことが確認できます。

ほかにも、いくつか危険運転の具体例をアップロードしているので、よく自転車に乗る方はぜひ見てみてください。
http://www.jaf.or.jp/eco-safety/360video/bicycle/

そのどれもが、注意喚起のPRにふさわしい臨場感あふれる体験型動画となっています。「360度動画」にしかできない視点の自由な変化をうまく利用しているので、映像づくりの参考にもしたいところです。

宇宙遊泳が体験出来る360度動画

2015年に設立された『360Channel』は、日本初のVR映像だけに特化したプラットフォームとして、人気タレント出演のバラエティ、各自治体と協力した観光チャンネル、ANAの工場見学ツアーなど多岐にわたる体験型の視聴コンテンツをすべて「360度動画」「VR動画」の形式で配信しています。

その魅力的な動画の数々の中でも、リアリティに特化した「360度動画」ならではの迫力が体験できるのが、VRカメラをつけた気球を成層圏まで飛ばして宇宙を撮影した下記の動画です。

https://www.360ch.tv/video/view/364

成層圏から見おろす地球の美しい光景と、上空で弾けた気球のかけらが宇宙の彼方へ飛散していく幻想的な姿は、思わず息をのむほどの神々しさ。左上の矢印を上下左右にクリックすると、宇宙空間にひとりぽかんと自分だけが浮かんでいるような不思議な感覚を味わえます。

ぜひ視聴しながら宇宙遊泳を疑似体験してみてほしいですね。

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今だから振り返る「VR」の歴史

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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