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普遍的な最高のシナリオの核「ヒーローズジャーニー」とは?
こんにちは、エレファントストーン 経営戦略室所属の鈴木です。
世界中でたくさんの人から愛されている映画や小説の多くのストーリー構成には、共通している法則があります。かのスター・ウォーズも、ハリー・ポッターも、ホビットも、ディズニーの名作ライオン・キングやカーズ、モアナも。
端的にいってしまえば大体、主人公がいて、冒険に出かけ、新しい仲間に出会い、困難に立ち向かい、悪役を倒し、生まれ変わって故郷に帰ってくる、なんだか見覚えのある流れですよね?
このような流れは、「ヒーローズジャーニー(Hero’s Journey)」と呼ばれています。
ヒーローズジャーニーって?
この法則の基礎を提唱したのはジョセフ・キャンベルという神話学者で、彼は世界中の神話(=つまり何百年何千年も語り継がれる程いい物語)について分析をし、人種や文化に関わらず普遍的に人々の心を捉えるストーリー構成を発見したのです。
この法則については彼が1949年に世に出した著書「千の顔を持つ英雄 (The hero with a thousand faces)」で記されています。
この本によると、物語の構成は以下のように大きく三分割されており、
①第一幕:旅立ち(Departure/Separation)
②第二幕:通過儀礼、移り変わり(Initiation)
③第三幕:帰還(Return)
①→主人公を囲む状況の設定
②→主人公やその仲間が数多くの困難を乗り越える
③→生まれ変わった主人公が問題を解決し故郷に帰る
といったイメージで話が進みます。
ヒーローズジャーニーの構成
このキャンベルの「千の顔を持つ英雄」はとても難解な本であったとして、ヒーローズジャーニーの考え方をより分かりやすく、そして詳細に定義したのが脚本家のクリストファー・ボグラーです。
2007年の著書「物語の法則(The Writer’s Journey)」でボグラーが提唱したヒーローズジャーニーは、12の段階に分かれており、物語のそれぞれのステージで主人公が様々な変化を経ていく様子がよく分かります。また、この12の段階は物語の筋書きの重要ポイント(外面的な旅)であると同時に、主人公(及び他の登場人物)の人間としての変化・展開(内面的な旅)をも表します。
①の第一幕は1〜5、②の第二幕は6〜9、③の第三幕は10〜12のステージへと分類されています。
物語の12の段階
1、日常世界(Ordinary World)
主人公がオーディエンスへと紹介される部分です。
ここでは主人公の日常を象徴とするような行動や環境が出てきます。冒頭の主人公はこれから注目される問題への認識がまだ薄い、もしくは認識していないことがほとんどです。
本人はまだ気づいていないものの、実は秘められた可能性や、隠された特別な出生の歴史があったりするパターンも多く見受けられますが、あくまで一見“平凡”に見える主人公の置かれている状況や世界に、オーディエンスが共感できるような形で紹介されることが多いです。
2、冒険へのいざない(Call to Adventure)
主人公の冒険・環境の変化が始まろうとする部分です。何かしらの問題や挑戦など、背を向けられない何かによって状況が動き、主人公がコンフォートゾーンから踏み出さなければいけない、という事実に直面します。
3、冒険の拒否(Refusal of the Call)
主人公は、目の前に続こうとしている冒険の道に恐れを感じ、新たな挑戦ないしは問題との対峙に対して懐疑的な姿勢を見せたりそれを拒んだりします。リスキーで危ない何かが待ち受けているのですから、当然の展開ともいえます。
4、賢者との出会い(Meeting the Mentor)
主人公は冒険へと旅立つことを決めます。しかしこの時点ではまだまだ未経験であったり準備の全く整っていない主人公、そこへ現れるのが賢者です。主人公を助け、導く役割を持つこの“賢者”は、時に人物であり、時には地図などのキーアイテムであり、時に主人公自身の内部に見出される知恵や勇気でもあります。
5、戸口の通過(Crossing the First Threshold)
準備も整いついに旅立つ主人公、ここが第一幕(旅立ち)の終わりであり、真の冒険=新たな世界の始まりとなります。主人公自身の内部にも変化が起き、心の戸口を通過すると言っても良いかもしれません。
6、試練、仲間、敵対者(Tests, Allies, Enemies)
馴染みのない世界へと踏み込んだ主人公を迎え入れるのは、様々な変化、見知らぬ決まりごと、予期せぬ試練など。こういったトラブルを乗り越えながら主人公は仲間を見つけると同時に、冒険の先に待ち構える敵についても学びます。一般的に、ストーリーの中で一番のボリュームを占めるのがこの第6ステージです。
7、最も危険な場所への接近(Approach to the Inmost Cave)
主人公はこのステージにおいて、問題解決のために心構えを新たにしたり新たな方法を見つけたりと、ターニングポイントを迎えます。次のステージで起こる大きな戦いにて最大の目的を果たすべく、準備を整える場面となります。
8、最大の試練(Ordeal)
ストーリーのコアとなる問題の解決の為に、ついに主人公が最大の試練と向き合う場面です。主人公は最大の敵と戦い、死、あるいは史上最大の恐怖に直面します。ここで主人公は負けそうになったり、時に死ぬこともあります。しかしここで大事なのは、主人公が自分の弱さと向き合い、足りないものに気づくという点です。
9、報酬(Reward)
主人公が最大の試練にて死や恐怖と直面し、勝利の報酬を手に入れます。ストーリーの問題自体を解決をする、という報酬もありますが、主人公が自分の弱さと向き合ったことにより、「自分にとって最も大切なもの」を知り成長する、という形の報酬もよく見られます。
10、帰路(The Road Back)
ひとしきりの戦いを終えた主人公、ここで物語は第三幕へと移ります。報酬を得て日常へ帰ろうとするところで敵が悪あがきをしたり、今までに無かった試練が訪れ、ストーリーは一転して再び緊迫するものへと変わります。内面的な試練としては、新しく生まれ変わろうとしている主人公を世界が受け入れず、主人公がまた古い環境や行動パターンに戻ろうとしてしまうようなことなども挙げられます。
11、復活・再生(Resurrection)
ここが物語最大のクライマックスとなります。ストーリーが残す最後にして最大の敵・試練と対峙する主人公。再び生死に直面して犠牲を払った結果、またはこれまでの試練を通して得た報酬のおかげで、物語当初の主人公では勝てなかったような相手に勝つことが出来る、という流れが特徴的な部分です。主人公の大きな人間的成長を象徴するとても重要なステージともいえます。
12、宝を持っての帰還(Return to the Elixir)
ついに故郷・日常へと戻る主人公。しかし最初と全く同じ日常ではありません。
主人公は物語を通して大きく成長をしており、もはや別人のようかもしれませんし、主人公は冒険の中で出会った大切な人や物にも囲まれているかもしれません。環境そのものが主人公とその仲間の努力により良い方向に変わっていることもあります。
このようにして、冒頭とは変わった主人公が新たな日常を送り始める、というところで物語は終わります。
まとめ
こうしてまとめてみると、とてもきっちりとした型があるように見えますが、これはあくまで基本的なパターンであるだけで、地図のようなものです。ヒーローズジャーニーの力を借りて出来上がった有名作品たちも、あちらこちらで例外を作ったりストーリーで寄り道をしたりしているものです。
ただ、間違いなく言えるのは、この法則を基礎として頭に入れておくことで、脚本において困った時にはいつでも立ち返ることが出来るということです。
次の機会には、本記事の冒頭でも触れたような世界的名作映画のストーリーがどのようにヒーローズジャーニーに当てはまるかを見ていきたいと思います!
▼記事の中で紹介した本
千の顔をもつ英雄〔新訳版〕上 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
物語の法則 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術
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