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アイルランドのアニメスタジオ「カートゥーン・サルーン」を知ってる?

アイルランドのアニメスタジオ「カートゥーン・サルーン」を知ってる?

こんにちは。エレファントストーンのエディター 坂内です。

みなさんは「カートゥーン・サルーン」という名前を聞いたことはありますか? アイルランドに拠点を置くアニメーションスタジオで、アカデミー賞長編アニメーション映画部門ノミネートの常連でもあります!

可愛らしくポップな絵柄ながらも、細密なアニメーション描写にシリアスな物語。何よりも、舞台となる土地の文化・歴史・伝統・伝説などを、豊かな表現力で描いているのが魅力です。その点から、「アイルランド版・スタジオジブリ」と例えられることも。

そんなカートゥーン・サルーンスタジオの作品と、その魅力をご紹介します。

『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』

カートゥーン・サルーンの創設者、トム・ムーア監督の長編2作目の作品。日本で劇場公開されたのはこちらが1作目なので、最初に紹介いたします。いやちょっと、この作品は本当にすごいので、まずはこちらをご覧ください。

【予告編】

いやー、開始10秒でもう鳥肌が立ちますよね……。そして可愛すぎる。

2014年にアイルランド、ルクセンブルク、ベルギー、フランス、デンマークの5カ国の国際共同製作によって、アイルランドに伝わる神話をもとに作られた作品です。

まずこの映画、受賞歴が凄いのです。

第87回アカデミー賞 長編アニメ映画賞へのノミネートをはじめ、アニメーション界のアカデミー賞と言われるアニー賞に7部門でノミネート、第28回ヨーロピアン・フィルム・アワードで長編アニメ賞を受賞など。

全米最大の映画レビューサイト、「Rotten Tomatoes」では満足度99%という驚異の数字が……!!

この映画の物語はケルトの伝説に基づいていて、監督の文化を尊敬する想いが伝わります。古代ケルト人(ピクト人)、スコットランドの古代のモチーフなどを取り入れた模様も美しい。伝統的なデザインをアニメーションの中に多く取り入れているのも、トム・ムーア監督作品の魅力です。

音楽は、KiLAというケルト音楽のバンド。幻想的で、印象に残りますよね。

『ブレンダンとケルズの秘密』

『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』の前作で、トム・ムーア監督のデビュー作。共同監督でノラ・トーミー監督。こちらなんと、アカデミー賞長編アニメ賞にいきなりノミネートされています。

【予告編】

こちらも繊細で美しく、文化へのリスペクトを感じる作品。9世紀アイルランドの修道院が舞台で、ケルト文様と同時に、宗教的モチーフが多く使われています。その美しさはまるで万華鏡のよう!

『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』の青に対し、本作はアイルランド・カラーの緑一色。
ごく一部のシーンを除き、伝統的な2Dの手描きで作られており、中世絵画にならって現代的な遠近法を排し描かれた。
(公式HPより)

うーん、「中世絵画にならって〜……」というところ、痺れますね。

作品全体を通して、細密に描かれた中世の絵画を見ているよう。ちなみに、作中の「ケルズの書」というのは実在する写本で、「世界一美しい本」と言われています。

『ブレッドウィナー』

2019年に日本でも劇場公開された作品。カートゥーン・サルーン設立メンバーでもあり、『ブレンダンとケルズの秘密』の監督でもある、ノラ・トーミー監督の単独監督作品です。こちらもアカデミー賞長編アニメ賞にノミネートされた他、多くのアニメーション映画祭で賞を受賞。

【予告編】

舞台は、2001年アメリカ同時多発テロ事件後のアフガニスタン、カブール。原作は、カナダの作家で、平和活動家のデボラ・エリスのベストセラー児童文学、『生きのびるために』。アフガニスタンで少女たちの学校教育を支援する、アンジェリーナ・ジョリーが制作をサポートしていることにも注目です。

劇中で主人公が経験するような会話や日常が、今でも当たり前のように起こっているのかと思うと、観ていて本当に苦しくなります。女性であるイコール人権がないようなもの、という現実への恐怖と怒り。

そんな物語に説得力を持たせるのは、2Dで描かれているカブールの街並み。全体を覆う土っぽさが見事……。
そして何と言っても、主人公パヴァーナの語る物語を彩る、切り絵アニメーション。
流石の細密さ。そしてこの色使い…。。。

ひとまず観てください。Netflixで観られます!!(2020年3月現在)

まとめ

カートゥーン・サルーンの作品はどれも美しく、文化の奥行きを感じさせてくれます。細密な描写にはうっとりさせられますね……。アニメーション好きの方にはもちろん、歴史や伝統などに興味がある方にもおすすめです。

新作は日本でも劇場公開されますし、旧作も、アニメーション映画祭やイベント等で公開される機会があると思います。是非チェックしてみてください!

(私、国内外のインディペンデント・アニメーションが大好きなので、これからも色々紹介していけたらいいなと思っています)

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この記事を書いた人

坂内七菜
エレファントストーンのエディター

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