SPECIAL

クリエイター評価の悩みを解決した、映像制作会社の社内発注制度についてご紹介

クリエイター評価の悩みを解決した、映像制作会社の社内発注制度についてご紹介

こんにちは! エレファントストーンの宮坂です。

「クリエイター」の仕事に対する評価って難しいですよね。映像制作を主軸にした事業を行う弊社でも、「クリエイターの平等な評価」については長く頭を抱えていました。数人で会社を運営していた頃は、みんなががむしゃらに目の前の映像を制作する一心で、個人の評価については深く考えていませんでした。しかし人数規模も大きくなり、ご相談いただく案件数も増えてくるにつれて弊社でもクリエイターの評価を考えざるを得ない状況になりました。これが企業成長の中で直面した壁の一つでした。

そんな中試行錯誤しながら作り上げていった評価制度の一つが、社内の仮想通貨を用いて、スキルや強みの貢献度を見える化する「パオン制度」です。この制度によって、「クリエイターの平等な評価」を実現させることができました。それだけでなく副次的なメリットもあったのです。

本記事では、パオン制度によって解決できたクリエイター評価への課題や悩みと、解決に繋がっている理由、副次的なメリットについてもお話ししていきます。クリエイター評価に悩みがある方はぜひ参考にしてみてください。ちなみにですが、「パオン」はエレファント「象」にちなんで命名されました。完全にダジャレです・・・

 

当時のクリエイター評価の課題

実際に弊社が直面した「評価する側」と「評価される側」の課題の一例ですが、クリエイターの評価にどんな課題があったのかは以下の通りです。

▼評価する側

  • 持っているスキル(撮影スキルや編集スキルなど)がどのぐらい映像制作=売上に貢献しているのか、定量的な判断ができない。結果、誰がどのぐらい活躍しているのかがわからない。
  • 労働時間が長ければ長いだけやったことになるのか。ダラダラと作業してしまい、成果物に対して無駄な時間がかかっているということはないのか。作業時間をそのまま評価してもいいのだろうか。

▼評価される側

  • 誰かの作業を手伝っても自分がやったという評価にならない。評価に直結しない作業が結構ある。
  • 評価者の好みによって、自分の映像制作への評価が変動する可能性がある。
  • 他者から急な依頼が飛んできて、評価に繋がる自分の案件の作業が進まない。

などなど。この評価する側とされる側のどちらにも言えることとして、「スキルや作品への平等な評価」「売上への貢献度の可視化」という部分に課題がありました。

 

まだ組織規模が数人だった頃、代表が直接全員の評価を行っていました。しかし人数が増えるにつれ、当然ですが代表一人では全員の仕事に目が行き届かなくなっていきました。そこで、本格的に評価制度を導入することにしたのです。導入当初はクリエイター一人ひとりに、その人に合った技術目標などが課されていました。ですが、それでは平等な評価ができないうえに、いまいち貢献度もわからない、そんな状態でした。

改めて評価制度を見直し、導入されたのが社員全員への数値目標でした。全社の売上目標は「社員全員が責任を持って取り組むべき」という考えから、クリエイターに対しても数値目標を設定することにしたのです。クリエイターの数値目標は、年間の個人の売上金額で設定されており、メインで担当した案件分の売上を獲得していくことで、数値目標の達成を目指す仕組みです。これにより、誰がどのぐらい売上に貢献しているのか、数値目標の達成具合で判断できるようになりました。

しかし、実際のところはサポートで入ったメンバーや一緒に制作を進めたメンバーへは売上が入らない仕組みでした。例えば、ディレクターがエディターに編集を依頼しても、エディターは作業を手伝うだけで、自分の売上には加算されない。つまり、誰がどのぐらい映像制作に貢献しているのかがはっきりとしていなかったのです。

さらにこんな弊害もありました。弊社に依頼が入る案件の比率的に、撮影込みの映像制作の割合が多く、ディレクターの方がメインで案件を担当することが多かったのです。もちろん、その分個人の目標数値もディレクターの方が金額が高く設定されていました。しかし、それによって「エディターよりもディレクターの方が会社の売上=映像制作に貢献している」といった、見えない構図がいつしかできていたのです。

「これでは平等な評価になっていない!クリエイター全員のモチベーションを保つためにもこのままではまずい!」

そこで新しく構築したのが、現在の「社内通貨「パオン」を用いて、社内のクリエイターに発注をかけていく“パオン制度”」でした。

 

パオン制度の概要

この制度について簡単に説明すると、一つのプロジェクトのメンバーを編成する際に、社内通貨を用いてクリエイター個人に発注をかけていく制度です。依頼内容にあわせて発注金額を設定・交渉し、パオンを支払うといった流れです。イメージが湧きづらいと思うので、以下の画像をご覧ください。(※あくまでも説明をわかりやすくするための例となりますのでご了承くださいませ。)

※クリエイターの数値目標は、「円」ではなくパオン(1パオン=1円換算)」で課されます。日々の業務でパオンを獲得していき、年間の数値目標達成を目指していきます。
※エディターがメインで案件を担う場合は、ディレクターを介さずにプロデューサーから直接エディターへ発注が入ります。

 

この個人発注の制度によって、評価する側とされる側の「スキルや作品への平等な評価」「売上への貢献度の可視化」という2つの課題を解決することができたのです。

 

2つの課題はパオン制度によってなぜ解決できたのか

この制度の肝は、「個人に発注をかけることで、個人のスキルや強みが社内にどれだけ利益をもたらしているか」を判断軸にしていることです。個人に発注をかけるということは、その人が持つスキルや強みに発注をかけるということです。

例えば、イラストが描ける、CG合成ができる、ドローン操縦に長けているなど、案件に必要なスキルや強みに対して発注をかけていきます。もちろん技能的なスキルだけでなく、どんな案件でも柔軟に制作進行してくれることに定評があったり、企画力や提案力が優れていたり、映像制作をする上で必要なスキルに発注をかけるのです。明確な金額で発注をかけることで、個人のスキルや強みがどれほど映像制作に貢献しているのかを可視化できるようにしました。

また、「ディレクターの編集作業を手伝っても、エディターである自分の功績には残らない」といった、“作業に対する評価が埋もれてしまう”という課題に対しても、映像制作の作業にはパオンで発注をかけることで、“誰か”の作業が埋もれることもなくなりました。例え、自分がメインでディレクションをしていない案件でも、作業に対してはパオンとして明確な売上が入ってきます。

結果として、いろんなスキルを持ったクリエイターがしっかりと評価される。作業に対してパオンが支払われ、その積み重ねを数値として見ることができる。“感覚ではなく公平かつ正当な評価”の実現に繋げることができたのです。

 

クリエイター評価の平等性の実現以外にも副次的な効果があった

パオン制度は個人に発注をかけることによって、「スキルや作品への平等な評価」と「売上への貢献度の可視化」という課題を解決することができたのですが、メリットはそれだけではありませんでした。時間への意識を高められたり、クリエイター個人が自分を売り込むためにスキルを磨いたり、会社全体のクリエイティブ力の向上に繋がる制度だったのです。

 

予算や時間への意識が高まった

これまで、「原価は気にしていたけど、社内工数までは気にしていなかった」「つい時間をかけすぎて徹夜での作業もザラだった」ということがありました。評価をする側も「成果物に対して無駄な工数がかかっているということはないのか?」と作品に対する評価が難しいという悩みもありました。

この制度では、実際に映像制作するにあたって「手元に残るパオン=自分の売上」を考えながら進めることができるので、自然と予算への意識を高めることができたのです。また、等級によってクリエイターごとに1日あたりの単価目安が決まっているため、発注された金額に応じて想定工数を見積もることができ、かけるべき時間の目安を付けられるようにもなりました。

確かに、多くの費用や時間をかけて作れば納得のいく良い作品にできるかもしれません。しかし、お客様からご依頼をいただく制作には、必ず「予算」と「納期」といった条件が発生しますし、同時並行で複数の案件を進めていかなければなりません。どの業界においても、限られた条件の中でお客様の期待を越える作品を提供するのがプロの仕事ですよね。この制度では、限られた条件下でも“目指すクオリティを実現できるようなハイパフォーマンスな人材”が育つことも期待できるようになったのです。

 

自分を売り込む意識やスキルを磨く意識が高まった

もう一つのメリットとして、“クリエイターの自発的な成長を促すことができる”という点です。クリエイターは自分自身に発注してもらうため、社内のメンバーに自分を売り込み、より発注してもらえる環境を自分で作り出していく必要があります。そのため、クリエイターは自身のスキルを磨き、自己プロデュースする必要があります。こう言うと義務っぽく聞こえてしまうかもしれませんが、自分のスキルを磨けば磨くほど、より高額で発注してもらえるように交渉もしやすくなるのです。

実際に社内のクリエイターがどうやって自分を売り込んでいるのか、一つ例をご紹介します。毎月行っている全社会議の際に、ディレクターの関戸が自身のプレゼンを「関戸タイム」と名づけ、プレゼン資料の冒頭で毎回タイトルデザインを工夫しています(下記画像参照)。デザイン力があることを社内のメンバーに向けて発信することで、実際に多くの案件でタイトルデザインなどの発注がきています。これも立派な自己プロデュースですね。

▼2022年初めの全社会議の時は「寅年」にちなんだデザインになっています!

クリエイターには選択権がある

ここで気になるのが、どのように金額設定や交渉をしているのかですよね。先ほどもお伝えしたように、基本的には等級によって単価目安は決まっており、想定される作業時間によって金額を設定していきます。しかし、この制度の面白いところは「単価×想定作業時間」に応じて金額を決めるだけではない、というところです。

発注を受ける側は、自分の単価に合わせて提示された金額よりも高額、あるいは低額でも依頼を受けることが可能なのです。「本当はこのぐらいのパオンでできるけど、自分のスキルには、このぐらいのパオンの価値がある」と、自分のスキルに価値を付けることもできます。あるいは「本当はもう少しパオンが欲しいけど、この案件は自分にとってすごい興味深いものだから、パオンの金額が低くても依頼を受けよう」と、自分で挑戦する案件を選ぶこともできるのです。

 

パオン制度の導入前後に対する社員の反応

パオン制度について、なんとなくイメージできたでしょうか。ここで気になるのが、実際に導入前後で社内にどんな変化があったのかですよね。クリエイターのメンバーからコメントをもらってきました。

エディター 坂内さん【自分の作業が評価としてしっかり見える】

「パオン制度ができる前はディレクターの案件で編集を手伝ったとしても、特に自分の功績には残らなかったです。でも今は依頼された編集作業に対してパオンが支払われるので、『自分はこれだけやったんだ』と達成感にもつながっています。」

エディター 今津さん【ディレクターとエディターの関係性に変化があった】

「導入前後で社内でのディレクターとエディターの関係性が変わった気がします。今までは自分がディレクターを担当した案件分しか数値として加算されず、自分達エディターはディレクターから依頼された編集作業があっても定量的な評価がもらえませんでした。

ディレクター案件の比率的にどうしてもディレクターポジションの方が数値を稼げる仕組みだったんですよね。そのためディレクターの方が立場が上みたいな感覚がありました。今はしっかりディレクターからの編集依頼についても依頼先としてパオンで発注してもらえるので、その関係性も並列になった気がします。」

ディレクター 山口さん【他のメンバーにお願いする時の意識が変わった】

「一番の変化としては社内工数を意識するようになったことですね。今まで原価率については気にしていましたが、社内でどのぐらいの工数がかかっているのかはあまり意識していませんでした。パオン制度ができてから、作業に対して明確な金額を出して発注するので“誰かにやってもらっているんだ”という意識がより高くなりました。

あとは、お金の話をするときに社内原価って言うと生々しいですが、『パオン』って言えるので、オブラートに話しやすいですね。」

ディレクター 嶺さん【クリエイターに求められる意識の変化】

「我々ディレクターは、編集依頼をする時に、外部のエディターに依頼することもできるんですよね。そういった意味で制作陣は社内外問わずライバルというか、クリエイターとして競争環境にあるとも言えます。

自分のスキルを上げるという部分は必須になってきますし、さらに重要になってくるのは、自分を社内メンバーに売り出す力だったり、自分をブランディングする能力だったりだと思います。そういったクリエイターとしての意識の変化は求められるようになったと思います。」

パオンの金額設定について

先ほど、「等級によって1日あたりの単価の目安が決まっていて、作業時間を見積もってからパオンの金額を決めていく」というお話をさせていただいたかと思います。実際の依頼時に行われる金額設定や交渉方法についてもコメントをもらってきました。

エディター 今津さん【想定される作業時間にあわせて金額アップの交渉も】

「追加で編集作業を依頼された時など、予期せぬ編集依頼がきた時はその工数分のパオンをくださいって交渉しますね。作業に対して十分な金額ではないと思った場合は、しっかり理由を伝えて金額アップの交渉をするようにしています。」

ディレクター 山口さん【別の案件で依頼パオンを調整できる】

「自分の場合は基本的に、依頼する方の言い値で作業をお願いしています。ですが、たまに予算がカツカツで作業時間に対して十分なパオンが支払えない時があるんですよね。でもやってもらわないと制作が進まない。そういう時は、次の依頼をするときに少し多めにパオンを支払うようにするなどして調整しています。」

まとめ

弊社で運用している『スキルや強みを見える化する社内発注制度』についてご紹介してきましたがいかがでしたか?

社内メンバーの評価をどのように行えばいいのか検討している、公平な判断をされているのか不安、という方はこの社内発注制度を参考にしていただけると嬉しいです。クリエイターの皆さんがより楽しく、充実して働ける環境になることを願っています!

エレファントストーンの独自の評価項目についてはこちらの記事でご紹介しています。ご興味がある方はぜひ覗いてみてくださいね。

『ひとりのクリエイター/ビジネスマンとして活躍できる人材になる。』エレファントストーン独自の評価制度とは。 | 株式会社エレファントストーン

この記事を書いた人

宮坂彩愛
エレファントストーン 経営戦略室企画課

宮坂彩愛の書いた記事一覧へ

タグ

RELATED ARTICLES 関連記事