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「鳥の目」「虫の目」「魚の目」3つの目で見えてくる、自社の魅力の見つけ方と伝え方

「鳥の目」「虫の目」「魚の目」3つの目で見えてくる、自社の魅力の見つけ方と伝え方

こんにちは。エレファントストーン ディレクターの久岡です。

会社や商品、サービスの魅力を消費者や求職者に伝えるために広告動画を制作する際、

「そもそも自社や商品、サービスの魅力ってなんだろう?」
「魅力は見つけたけど、どう伝えたらいいだろう?」

と思い悩んでしまうことってありませんか?

私自身、エレファントストーンに入社前に、事業会社内のマーケティング部で動画広告ディレクターをしており、どうやって自社の魅力を見つけ、表現していくか、毎日苦心していた時期がありました。

そんな時に役に立ったのが、マーケティングの発想の基本とも言われる「鳥の目」「虫の目」「魚の目」3つの目で見てみるという考え方です。

今回はそんな「3つの目」という考え方をご紹介させて頂きます。

鳥の目〜マクロでみる〜

まずは「鳥の目」。

「鳥の目」とは、鳥が空から地上を見下ろすように、マクロの視点(巨視)で見るということです。

市場分析や競合調査(SWOT分析やポジショニングマップの作成)、定量のアンケート調査などの客観的なデータを活用して、会社(商品・サービス)が市場の中で、また競合と比較してどんな位置付けなのかを見ていきます。

また更に視点を広げて、会社(商品・サービス)が世の中にとってどんな価値を提供している存在かを考えてみます。そうすることで、会社内だけでは気づけなかった魅力が見えてきます。

私は企画時にはまず、そのクライアントさんの業界について調べることが多いです。クライアントさんだけではなく、業界全体の動向を知り、比較対象を知ることで、他と違う部分が見えてくることがあります。

コミュニケーションデザイナーの齋藤太郎さんは著書「非クリエイターのためのクリエイティブ課題解決術(P69)」でクライアントさんからのオリエン時にこうとおっしゃっていました。

私が用意している、とっておきのキラークエスチョンは、これです。
「この商品で世の中はどう変わりますか?」
この質問で、狭くなった視野を大きく広げることができた例は少なくありません。
引用:『非クリエイターのためのクリエイティブ課題解決術』 齋藤太郎(著)

本当にキラークエスチョン、突き刺さるような質問だと思います。
このキラークエスチョンへの答えを探していくことが、魅力発見に繋がるのではないでしょうか。

「鳥の目」で参考にしたい事例を紹介します。

UCC上島珈琲株式会社 私たちの存在意義(パーパス)

このブランドムービーはまさに、「世の中における価値」と言う部分からブランディングを行なっています。

ムービーを手がけたクリエイティブディレクターの国井美果さんはこのように語っています。

「UCCは創業以来、生産国での栽培から研究、焙煎、販売、品質保証に至るまでコーヒーに関わるすべてを自社で手がけています。そのコーヒーへの強い愛とも言える使命感や並々ならぬ企業努力をもって、お客様や世界に向けてこれまで以上に貢献しよう。そのための変化をしよう。その意思を、まずは社員のみなさんにイメージとして共有し自分ごと化してもらうために、パーパスムービーを制作しました」
引用:https://www.advertimes.com/20211014/article365280/

UCCの創業以来の拘りを社会全体の位置付けの中で魅力として抽出し、社員の方々や生活者に届けるための動画、そんな印象を受けました。

そしてそれを映像として表現するにあたり、手描きのアニメーションを用いることで、コーヒーに関わるすべてを自社で手がける「手作り感」、そしてアニメーションのトーンによりコーヒーのような「味わい深さ」が表現されている、「鳥の目」の好例だと思います。

虫の目〜ミクロでみる〜

次に「虫の目」。

「虫の目」とは、小さな虫が見る景色のように、ミクロの視点(微視)で見るということです。

ペルソナ分析や定性のアンケート調査などを通じて、しっかりと個人、1人の視点に立って物を見て、どんな感想を抱くかを考えます。

私は企画時、BtoCであれば消費者の方の口コミ、BtoBであれば事例インタビューなどを読み込んで、課題や魅力を抽出することがあります。1つ1つは一個人の意見に過ぎないレベルのことかもしれませんが、時としてそれが本質を突くことがあるのです。

また私は昔から広告映像を制作する時には、なるべく実際にクライアントさんの商品やサービスに触れてみることを意識しています。表面的なデータだけでは見えてこないものが、そこに眠っていたりするからです。この時、三現主義を意識してみると、より考え方がわかりやすくなります。

三現主義とは、「現場」「現物」「現実」の3つの「現」を重視し、机上ではなく、現場で現物を観察して、現実を認識した上で、問題の解決を図らなければならないという考え方のことです
引用:https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/lst/sa/3rp

インターネットでなんでも調べられる情報化社会。現場に行かずに物事を判断することも多くなっていることと思います。しかし、全ての物事がインターネット上で完結している訳ではありません。私たちは実際にどこかへ足を運び、なにか使って、生活しています。

例えば賃貸探し。写真やVRなどインターネット上の情報は充実していますが、最後はやっぱり内覧したいですよね。それは、内覧してみないと見えてこないことがあるからです。

ホンダやトヨタ、ニトリなど、多くの企業の経営層がこの三現主義を大切にしています。そして表現を考えるにあたっても、この虫の視点は生きてきます。

電通のクリエイティブディレクター高崎卓馬さんが、著書「表現の技術(P79,P83)」で以下のように述べていました。

ふだん企画するとき、禁止している表現方法がひとつあります。それを僕は「オムニバス」と呼んでいます。同じようなシーンをたくさんつないでみせて、いい感じの音楽をあてるようなタイプのCMのことです。

「みんなはこういうときこう思うよ」という話より、「僕はこういうときこう思った」という話のほうが強く、逆に普遍的なものになるのです。一般論より個人の話のほうがよほど、普遍的な力をもつのです
引用:『表現の技術―グッとくる映像にはルールがある』 高崎卓馬(著)

このオムニバスという表現方法は、クリエイターがついつい使ってしまいがちな表現方法なのですが、伝えたいことが薄まってしまう危険性があるんですね。私はこれを読んだ時に、目から鱗でした。

高崎さんがおっしゃるようなオムニバス映像はこれまでにたくさん見たことがあるように記憶していました。そして、「なんかいい感じだな」と視聴当時感じていたと思います。しかし思い返してみれば、今も覚えているような心に刺さったものはなかったのです。以降、企画をする時、常に心に留めておくことのひとつになっています。これも視点を小さくしていくことで見えてくるものです。

虫の目の例となるCMを紹介させていただきます。

アマゾンジャパン合同会社 Amazonプライム新CM「モーターバイク」篇

「ライオン」篇も有名ですよね。こちらは「モーターバイク」篇。
高齢化社会、老人の孤独という社会的なテーマですが、とあるおばあちゃんと孫の話にまで落とし込み、ミクロの視点の話に集約されることで、よりリアリティーと力強さをもたらしています。

訴求ポイントを「サービス名」と「早く届く」ことのみに絞り、一切のセリフを排除することで、逆に雄弁にAmazonが伝えたいメッセージが語られていると感じました。

魚の目〜トレンドでみる〜

最後に「魚の目」。

「魚の目」とは、魚が川の流れを読むように、時代の流れ(トレンド)を読む視点のことです。今何が流行っているのか、にとどまらず、どうして流行っているのか、人々の意識がどのように変わってきているのか、そうした変化をしっかりと見極めます。

そしてその川の流れの中で、会社がどのように泳いでいるのか、もしくは泳いでいこうとしているのかを掴むことが、会社の魅力発見に繋がっていきます。

昨今で言うと、SDGs、ESG、ウェルビーイング、そういった背景に人々のどのような思いや意識が眠っているかを探っていくことがヒントになってくるのではないでしょうか。単純に流行りに乗るのではなく、その根底にある意識を掴むことで、会社の魅力が再確認できたりします。

また魚の目では時間の流れ、つまり歴史も意識します。今あるものだけでなく、過去に何があり、これから何をしていくのか。そんな時間の流れの中に魅力が隠れていることもあるからです。

私もクライアント企業の創業者のインタビュー等を拝見し、そこから企業全体に流れる空気感のようなものを掴もうとすることがよくあります。

「魚の目」で参考にしたい事例を紹介いたします。

森ビル株式会社 ブランドムービー|DESIGNING TOKYO

歴史を見るという点で話題となった森ビルのブランドムービーです。

現代の技術を集約して再現された当時の建物たち。細部にまでこだわりの見える衣装・小物。美しすぎる映像表現。森ビルが培ってきた歴史が、森ビルにしか作れない圧巻の映像に繋がっているのだと思います。

時代の中で変わらないものは魅力的ですし、時代の流れの中で変わっていくものもまた魅力的です。

時代とともに会社がどのように変わってきたか。例えば、商品ひとつとってもどんな経緯で改良が重ねられて今の形があるのか、そんなところに魅力の種が転がっているんだと思います。

また時代の流れを見る好例をご紹介します。

ゼクシィ「私は、あなたと結婚したいのです」テレビCM

現在、動画は非公開となっていますが、この時代の中でのゼクシィの位置付けを見事に表現したキャッチコピーだと思います。

このCMを制作したクリエイティブディレクター 小島曜さんはこうおっしゃっています。

「世の中にはいろんな幸せがあって、結婚って色々言われているけれども、その中の1つには違いないよね、と話して。他にも幸せの形はあって、でも結婚もやっぱり幸せなんだと伝えたいと。結婚って最高だ、とは言っていませんが、ゼクシィが言うことで、そのメッセージは伝わるのではと考えました」
引用:https://www.advertimes.com/20171207/article262533/2/

結婚の価値観も時代とともに変化をするものです。その時代の変化をしっかり押さえつつ、生活者に自社の魅力を伝えることができている、まさに時代の流れの中で会社(商品、サービス)の立ち位置を明確にした1本だと感じました。

まとめ

ここまで「鳥の目」「虫の目」「魚の目」と3つの目を紹介してきました。

そして、この3つの目はいずれか1つを使えば良いという訳ではなく、3つの目を同時に使いながら考えていくということが大切だと思います。

たまに「鳥の目」で見る分には優秀だけれど、「虫の目」「魚の目」の観点が抜けていて、見ている人から不快に思われてしまうような広告があります。そうならないように3つの目を上手に切り替えながら自社を見直してみると、色々と新しい発見や表現方法が見えてくるかもしれません。

私もそれぞれの目で見る力、同時に見る力を、もっともっと磨いていきたいと思っています。

みなさまも、会社の魅力やその表現方法でお悩みの際は、ぜひ使ってみてくださいね。


 

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この記事を書いた人

久岡信也
エレファントストーンのディレクターです。

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