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香水のプロモーション映像、再現不可能な香りをどう伝える?

香水のプロモーション映像、再現不可能な香りをどう伝える?

映像を活用することで、写真やテキストだけでは伝わらないサービスや商品の魅力をより多くの人に知ってもらうことができます。

しかしながら、「香り」をオンラインで伝達することは現状できません。つまり、香水のPR映像には、最大のセールスポイントである香りを伝えることのできない難しさがあります。

そこで今回は、有名フレグランスブランドのプロモーション事例を見ながら、その困難をどのように克服しているのかご紹介していきたいと思います。

香水を映像でPRする3つのメリット

「商品のいちばんの強みである香りを再現できない。」

そんなジレンマや難題を抱えながらも、各ブランドが映像プロモーションを行う理由はどこにあるのでしょうか?香水ブランドによる映像を活用したPRや販促には、以下の3つのメリット・特徴があると考えられます。

①映像や音を駆使して香りを想像させる

視覚だけでなく聴覚にも訴えることのできる動画は、雑誌やWebサイトなど、文章や画像がメインのメディアより膨大な量の情報を発信することができます。

4DXシアターのようにユーザーの嗅覚を直接的に刺激することは難しくても、映像・音楽・イラストレーション・ナレーションの融合によって香りをイメージさせることは十分に可能です。

②世界観を表現した総合的な商品ブランディング

映像プロモーションでは、香水の香りから湧き出すイメージや各ブランドが構築している世界観を自由に表現することができます。

また、その香りを纏うことでどんな気持ちになれるのか、より総合的な商品ブランディングに取り組む事例も多く見られます。

③ユースケースや使用方法のデモンストレーションが可能

映像コンテンツならばプロモーションの目的に応じて、YouTubeやTikTokで定番のハウツー動画のような役割を果たすことも可能です。

たとえば、プロモーションの中で、実際に香水をつけるシーンを挿入することで、その商品に適しているユースケースや使用方法をそれとなく視聴者にレクチャーすることができます。

有名フレグランスブランドのPR作品5選

ここからは、フレグランスブランドのPR映像を5つピックアップして紹介していきます。

①Jo Malone London

1994年に誕生した英国発の世界的なフレグランスブランドとして知られるジョーマローン(Jo Malone London)の公式YouTubeチャンネルでは、定番商品や人気アイテムのプロモーション映像を定期的に発信しています。

色彩豊かな表現やファンタジックな世界観を通して、動画ではおよそ再現不能とも思われる香りの魅力を鮮やかに伝えている作品はどれも必見です。

2022年の9月に公開された「イングリッシュペアー&フリージア(English Pear&Freesia)」のPR映像は、96万回再生を突破。

実際に筆者の周りでもつけている人が多い香りです。公式サイトでは「熟したばかりの洋梨の官能的なみずみずしさを白いフリージアのブーケで包んだ」と説明され、万人に良い香りと言われる癖のなさ、バランスの良さがあります。

2023年1月に公開されたばかりの新作フレグランスの最新プロモーションもこれまでとは趣を異にしたレトロフューチャーなブランドイメージを発信し、大きな反響を呼んでいます。

②Christian Dior

世界中のファッショニスタから熱狂的な支持を集め続けているクリスチャンディオール(Christian Dior)は、フレグランスの世界でも歴史に残る名品を数多く発表しています。
1940年代のブランド黎明期にスタートした「ミスディオール(Miss Dior)」シリーズは、まさにブランドのアイコンとも言える商品。

2022年10月に公開された新作のプロモーション動画では、俳優のナタリー・ポートマンさんをメインキャストに抜擢。

Miss Diorといえば、Diorらしいピンク色で「色とりどりの花びらと香り高いフローラルブーケで包みます。いつの時代も幸せを約束し続けます。」との公式サイトでの説明通り、可憐で甘めの香りをしています。

映像では、自由でエネルギッシュなキャラクター像を提示するとともに、色とりどりの花びらに包まれるフローラルブーケの香りを画面いっぱいの花園や美しい大自然のランドスケープで見事に表現しています。

③SHOLAYERED

洋服のように香水をレイヤードして自分だけの香りを楽しむ「レイヤードフレグランス」。

SHOLAYEREDは「香りをレイヤードする」フレグランスをブランドコンセプトにこれまでの例と違い新しいライフスタイルを提案しながら、メイドインジャパンの香りの魅力を世界に発信しています。

そんなSHOLAYEREDの公式YouTubeチャンネルでは、香水の作り方をレクチャーする動画を公開し、好評を博しています。

商品のユースケースや使用方法のデモンストレーションを目的としたプロモーションでは、アーティスティックな作風にするのではなく、HowTo動画スタイルのコンテンツに振り切ってしまうのも1つの手ではないでしょうか。

④Chloe

既製服に対する固定観念を覆し、オートクチュールにも劣らぬ上質さもたらしたフランスの名門ファッションブランドであるクロエ(Chloe)。

1950年代のパリで誕生して以来、“自由・軽やかさ・女性らしさ”を信条に普遍的な香りを探求し続けているフレグランスラインは、どのアイテムもほどよい気品と洗練された甘さを湛え、世界中の女性から絶大な支持を集めています。

薔薇の香りを中心にフェミニンな香りが多いのがクロエの特徴です。

新作フレグランスもやはり薔薇を基調とした「ROSE NATURELLE INTENSE」です。プロモーション映像は、Chloeらしいシックなロマンティシズム全開。

女性たちが大自然のなかで自由に戯れるシーンを象徴的に挿し込むことで、ローズの香りからイメージされるフェミニンかつナチュラルな雰囲気をうまく表現しています。
フローラル系の香水のプロモーションでは、ビビッドな色彩を全面に押し出すケースが多く見られますが、あえてモノトーンで描いているのが個人的に面白いなと思いました。

70年以上の歴史を持つブランドのクラシカルなイメージにピッタリの映像作品に仕上がっています。

⑤Maison Margiela

その繊細な美意識と型破りなアイデアで、ファッションの枠組みを超え、あらゆるジャンルのアーティストを刺激し続けているMaison Margiela。

2012年に誕生したフレグランスライン「REPLICA(レプリカ)」シリーズは、“香りの記憶“をコンセプトに風景が浮かび上がるイマジネーション豊かな香水を多数展開しています。

上記のPR動画では、1つのプロモーションの中にあえてテイストの異なる映像表現を織り交ぜることで、それぞれの香水の持つ多様な個性をヴィヴィッドに伝えています。

アダルトな男の色気をテーマにした“ジャズクラブ”や、気だるい日曜日の朝を連想させる“レイジーサンデーモーニング”といった人気アイテムの香りだけでなく、フレグランスの容器やパッケージにも反映されたマルタン・マルジェラならではの世界観が余すことなく描写されている点も見過ごせません。

日本ではタビブーツ、5ACバッグといったアパレルの存在感ももちろん、香水人気が高いです。その一端をうかがわせるようなプロモーションになっていますね。

まとめ

以上、香水ブランドのプロモーション映像を紹介しました。

香水ブランドは多くがパリのファッションウィーク(通称:パリコレ)でも有名なブランドたちです。ブランドを通して香水をつける人の人物像を描き出すというスタイルが多く、ブランディングとしての観点からも参考になると思いました。

何よりも香りという画面を通じて伝えられないものをどうプロモーションしていくか、香りの個性を感じ取り映像で表現する。これは食べ物やお酒などにも通じるものがあるなと感じました。

味や香りといった他人に伝えづらいものをどう表現して伝えていくかについて、また今後も定期的に取り上げていきたいと思います。お楽しみに!

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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