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【ROOT第一弾プロジェクト】川崎フロンターレ様 – ブランディングムービー制作密着レポート③ 【映像制作編】

【ROOT第一弾プロジェクト】川崎フロンターレ様 – ブランディングムービー制作密着レポート③ 【映像制作編】

川崎フロンターレ様(以下敬称略)のブランディングムービー制作に密着し、ROOTでの映像制作フローと実際の様子をレポート形式で皆さまにお伝えしています。本記事は第三弾!【映像制作編】映像の企画検討の流れをご紹介。

第一弾、【プロジェクトキックオフ編】はこちら
第二弾、【価値観探求ボードゲーム『THE KACHINKO』編】はこちら

ROOTの映像制作フローの全体像

川崎フロンターレのブランディングムービー制作の全体像は下記のようになっています。

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  1. 【プロジェクトキックオフ!】初回ワークショップ「“プロジェクトメンバーが、まずお互いのことを知り合う”」
  2. 【価値観探求ボードゲーム『THE KACHINKO』編】フロンターレの根っこを掘り起こし、企業・チームの価値を言語化する
  3. 【映像制作編】企画・撮影・編集会議までの流れ
  4. 【映像上映会】ROOTの映像制作プロジェクト振り返り。“川崎フロンターレ”という組織について考える

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本記事では、【映像制作編】企画・撮影・編集会議までの過程をご紹介します。それでは、川崎フロンターレの皆さんの様子と一緒に見ていきましょう。(今回のレポートは7回、合計約14時間にわたるワークショップの内容を集約しています)

ー目次ー

【企画】映像の方向性を決めよう
 ∟映像のターゲット・映像表現を話し合おう
 ∟映像企画を決定しよう
 ∟映像ストーリーを決定しよう
 ∟撮影準備〜撮影素材を集めよう
【編集会議】ラフ映像の確認〜映像の仕上げ
 ∟【編集会議】撮影されたラフ映像を見て、さらに必要なシーンを探す
 ∟【映像の仕上げ】追加撮影で日常シーンを集める
 ∟【映像の仕上げ】オリジナル楽曲制作について
まとめ

 

【企画】映像の方向性を決めよう

前回までのワークショップでは、価値観探求ボードゲーム「THE KACHINKO」で「すべての人に届けたいフロンターレの価値観」を言語化。THE KACHINKOでは、4つのキーワード「追求心・一体感・LOVE KAWASAKI・個性」が抽出されました。

ここからは上記の価値観をもとに、映像の企画工程で検討する「ターゲット・伝えたいメッセージ・映像で取り入れたい要素」を中心に、フロンターレの皆さんで話し合いを進めていただきます。

 

映像のターゲット・映像表現を話し合おう

はじめに、THE KACHINKOで抽出されたキーワード「追求心・一体感・LOVE KAWASAKI・個性」をもとに、届けたい相手や映像の表現方法を話し合っていただきました。

 

届けたい相手を検討しよう

まずは、映像を届けたいターゲットについて意見交換。

「2017年での優勝以降、世の中的にもフロンターレの名前が確実に広がって、新しくフロンターレを知った人・ファン・サポーターになった人が多かったからこそ、新しいファン・サポーターに向けてこれまでの26年間の価値観を伝えるのは良さそうだよね。

「川崎市民の方向けに地域イベントをやっている時、フロンターレのコンテンツを出しても刺さらない人ってまだまだいるなと感じていました。だからこそ、まだフロンターレをよく知らない川崎に住んでいる人たちに向けて映像を作り、フロンターレの“地域との繋がり”を知ってほしいです。

「ターゲットはファン・サポーター向けでつくりたいです。この映像は社内の人の想いをのせて外に出すものなので、わざわざ社内向けの映像にしなくてもここにいないスタッフへも私たちの想いは伝わると思います。以前のワークショップで話題に上がった『市民やファン・サポーターを映した映像は社内向けにも刺さる内容だよね』という話を聞いてとても納得しました。」

などの意見が。話し合いの中では、THE KACHINKOで選ばれた価値観や選ばれる過程で出されていた背景のエピソードを参考にしながらディスカッションが進んでいったように思います。価値観の背景を深掘りしたからこそ、誰に、どんな想いを届けたいのか議論が深まっていった印象です。

届けたい相手にはそれぞれ意見が出されていましたが、この映像を通して共感を持ってもらい、フロンターレファミリーとの一体感を表現したい、という部分には皆さんに共通した想いがあるようでした。

 

参考映像を見て、映像表現について意見交換をしよう

次に、参考映像から今回の映像に取り入れたい要素を検討していただきました。事前に各自で参考映像を探してきていただき、エレファントストーン側で映像の傾向を整理すると、大きく3つに分類される結果になりました。

  • ドキュメンタリー(リアルな姿を映していく形式)
  • ドラマ(映像にストーリーを持たせる形式)
  • リアル×演出(ありのままの姿を映しながらストーリー性を持たせる形式)

ここから、参考映像を見ての感想や実際にやってみたい映像表現について話し合っていただきました。

「スタッフを追いかけた完全ドキュメンタリーの映像も観ている人にとっては面白いだろうなと思います。スタッフは裏で何をしてるんだろうとか、表には見えない部分を知ってもらうことで一体感みたいなところにも繋がる気がします。活動をダイレクトに伝えられるので、クラブの理念や考えを外部にうまく発信できるのではないでしょうか。」

「ドキュメンタリーだと市民が知っている場所を映せるし、そういった場所が映ると親近感が湧いてちょっと嬉しいですよね。川崎市の一般の方々が利用している行きやすい場所や日常に馴染みのある施設を映すのも良さそうだなと思います。」

「ただリアルなドキュメンタリーではなく、楽曲も含めた演出もしたいですよね。曲があることで引き込まれるし、出演者の想いやメッセージがより伝わる内容になると思います。曲と映像の連動性があると、とても印象に残せるのではないかなと思いました。」

他にも、「フロンターレと交流のある商店街や施設を、ある人物が散歩をしながら交流を深めていくようなテレビ番組風とかも面白そうですよね」といったアイデアも。フロンターレの皆さんからは柔軟、かつフロンターレだからこそ実現出来そうな地域・ファン・サポーター密着などのアイデアが出されていたのが印象的でした。

また、「今までフロンターレでは作ってこなかったような映像にしたいよね」という意見も度々出ており、THE KACHINKOで抽出された価値観「個性・追求心」が自然と表れているなと感じる一幕も。さまざまな映像を観てお互いに感想を伝え合うことで、“自分たちがつくるなら”と徐々に映像の完成イメージが膨らんでいるようでした。

 

映像企画を決定しよう

最終的な企画は映像のプロであるエレファントストーンのアイデアを取り入れつつ、フロンターレの皆さんから出た意見をもとに決めていきました。(内容を一部抜粋してご紹介します)

エレファントストーンからの映像提案。コンセプトは「越えよう」

映像制作上のコンセプト(合言葉)

越えよう

これまでのフロンターレを越えて、

すべての人と共に歩んでいく。

それが、

「FOOTBALL TOGETHER」

私たちの信念なんだ。

今回のプロジェクトメンバーの半数近くはここ5年以内に入社しており、2017年の初優勝を経験していませんでした。また、川崎フロンターレの成長により拠点も業務も広がってきている。それと同時に、情勢の影響で従来のイベントも今まで通りの実施が難しくなっており、結果的にスタッフ全員が一体となり一つのプロジェクトを動かす機会が減ってしまった。そしてファン・サポーターにとっても、「2017年初優勝を越える感動」は現時点でなかなか想像しづらいのではないか、と紐解いていきました。

そんな状況の中でフロンターレが選ぶのは現状維持でなく、「これまで」を越えようとする意思こそが重要なのではないかと考えました。そこで導き出したのが、上記のコンセプトです。

 

提案についてフィードバックする

次に、エレファントストーンからの提案について感じたことや、「もっとこうしたい」という部分を率直に話し合っていただきます。

「メッセージに関して、提案いただいたストーリーはとても良かったです。懸念としては、このメッセージを我々クラブスタッフが言うと誇示しているような印象を与えてしまうと思うので、ファン・サポーターの方やパートナーの方、あるいは選手から率直で自然な想いを引き出す方が多くの方に刺さるのではないかと感じました。」

「普段たくさんご協力いただいているボランティアさんや地域の方々にも焦点を当てるなど、出演者が選手や社内で偏らないようにした方が良いかなと思います。」

「各拠点でそれぞれ地域に根ざした活動があるので、拠点ベースでももっと映し出して活動を知ってもらいたいです。一方で、フロンターレの施設だからではなく、地域の施設だからという縁で利用されている利用者もいるので、そのような方にもフロンターレの想いを知ってもらうようなメッセージにしたいなと思いました。」

などなど。被写体についてはたくさんの意見が挙げられていましたが、中でもファン・サポーターやボランティア、施設の利用者など、スタッフや関係者ではない方が多く挙げられており、より自分ごととしてフロンターレを感じてもらいやすくなるような被写体が選ばれている印象でした。

また、話し合いの中では、自分の考えだけでなくTHE KACHINKOで共有された各々のエピソードが話題に上がっている場面も見受けられました。

皆さんの意見やこれまで出てきたエピソードから、最終的なメッセージは「越えよう」ではなく、これからもみんなと一緒に続いていくという、フロンターレが常日頃から大事にしている言葉「FOOTBALL TOGETHER」に決定しました。また、届ける相手についてはメインターゲットを2つ「①ファン・サポーター、②社内スタッフ・関係者」に分け、サブターゲットとして「フロンターレを知らない人々(主に川崎市民)」に設定しました。

 

映像ストーリーを決定しよう

次に、皆さんからのフィードバック内容を活かしつつ、より「FOOTBALL TOGETHER」が伝わるような映像ストーリーをエレファントストーンから共有させていただきました。その上で、誰に出演してほしいかを話し合っていただき最終的な映像ストーリーを決定していきます。

 

映像のストーリー展開

2022シーズンのゲームシーンから、10月29日のホームゲーム、そして11月5日アウェイでの最終節。ゲーム当日のスタッフ、ファン・サポーター、ボランティアを映した、試合当日の多面的なシーンで映像が始まる。

そして、サッカーからもらった力・勇気・活力をもって、日々力強く、豊かに生きている彼らの日常の姿、さらにファン・サポーターやアカデミーの子どもたちの姿、そして選手たちのシーンが順番に映し出されることで、すべての人たちの対等性を表現し、一緒に戦う、共に歩む姿を一連のストーリーで展開。

本ストーリーの中でフロンターレに携わる人たちの姿と、その後のプライベートの姿も重ねて描いていくことで、「すべての人たち」がサッカーを通じて交わり一つになる。そして日々の生活、そして人生において前へ進む活力をもらうという、「FOOTBALL TOGETHER」を表現することを目指す内容をご提案しました。

 

出演してほしい人と取り入れたいシーンを検討しよう

ここからは映像ストーリーをもとに誰に出演してほしいか、具体的にどんなシーンを取り入れたいかを皆さんと一緒に検討し、具体的に映像ストーリーの中に落とし込んでいきます。

「ボランティア、特に古くからやっている方は出てほしいです。クラブに対しての熱い・深い想いを持って活動してくださっていると感じていますし、僕がクラブに関わるずっと前から活動されている方も多くフロンターレに欠かせない一員であると思います。

「フロンタウンさぎぬまによく来られるフットサル利用者も映したいです。フロンターレのファン・サポーターではない方からの視点も映像に入れることで、フロンターレはファン・サポーター以外にもスポーツを通して価値を提供している点を視聴者に届けられるんじゃないかと思いました。」

「選手の皆さんにも出演してほしいです。関わる全ての人に『感謝・共に歩んでいく』ということを伝えるためには、やはり一番強烈に心に響くのではないでしょうか。また、みんなの想い(スタッフの想いも含む)が選手へ伝わっていることがわかれば、なお共感が得られ、一体感が出るかもと感じました。」

などなど。他にも、中村憲剛FROやアカデミーの選手やスクール生、地域の方々などに多くの意見が寄せられていました。クラブと川崎市の「一体感」を表現できるような人選が多くされていたのが印象的です。

 

撮影準備〜撮影素材を集めよう

最後に、試合当日に集めたいシーンを中心に撮影準備を進めていきました。撮影したい場所や関係者、実際にメンバー自身で撮影できそうなシーンなどを洗い出し、必要に応じて各方面への撮影依頼をしていただきました。また、エレファントストーン側でカメラをまわすシーンなども一緒に検討し、フロンターレの皆さんとエレファントストーンで分担・協力し、映像素材を集めていくことに。

試合当日、プロジェクトメンバーには会場の観客席や各店舗でのファン・サポーターの姿、施設で観戦するスタッフ、ボランティアの様子、メンバー自身のご友人に観戦の様子を撮影していただくなど、会場以外で応援するファン・サポーターの撮影素材を集めていただきました。

一方エレファントストーン側では、スタジアムの来場者や商店街の方々へのインタビュー撮影を実施。また、映像全体の流れを繋げられるようなシーンを中心に撮影していきました。

結果として、フロンターレの皆さんとエレファントストーン側それぞれで撮影した映像により、非常にバラエティに富んだ試合会場内外での素材を集めることができました。

 

【編集会議】ラフ映像の確認〜映像の仕上げ

試合後のワークショップでは編集会議を実施。各方面から集まった撮影素材を確認し、映像完成へ向けた話し合いを行いました。

 

【編集会議】撮影されたラフ映像を見て、さらに必要なシーンを探す

集まった映像を見て率直な感想を話し合っていただくと、皆さんからはこんな意見・感想が出てきました。

「試合当日のカフェの様子などはスタッフも知らない部分なので新鮮でしたね。でもまだまだ日常シーンが少ないので、このプロジェクトで色々検討してきた想いや価値観を伝えるためにももっと市民や日常シーンを追加したいです。色んな方々の自然な映像を集められるとより良いですよね。」

「第一印象としてはすごく良かったです。一方で、ファン・サポーター目線ではもう少し一緒に戦っているようなシーンがあるとより一体感を表現できるのではないかと感じました。メッセージは、まだ『FOOTBALL TOGETHER』感が弱い印象もあったので、どう出していくかはもう少し検討したいですね。」

「全体的にグータッチのシーンを増やし、最後にまとめているグータッチを冒頭にも持ってくることで、映像に一貫性を持たせるようにできれば良いのではないかと感じました。また、冒頭の試合シーンと途中の日常シーンを入れ替え、2022年は悔しい結果で終わったがまたここから頑張ろう、という流れも良いのではないでしょうか。」

皆さんからは共通した点もあれば、それぞれからの視点でストーリー展開やテロップでの表現、不足しているシーンについてなど、様々な意見が寄せられていました。特に日常での繋がりを表すシーン追加の意見が多く、ファン・サポーターや地域の方と一緒に・近い存在として感じてもらえるような映像にしたいという皆さんの気持ちが伝わってきました。

 

【映像の仕上げ】追加撮影で日常シーンを集める

編集会議で寄せられた意見をもとに、追加撮影および映像をブラッシュアップさせ映像完成を目指していきます。

エレファントストーン側でカメラをまわし、商店街の方々や選手、各施設のスタッフ、そしてプロジェクトメンバーを中心に、クラブと地域の繋がりを表現する「グータッチ」の素材を集めていきました。撮影当日は、皆さんの素敵な笑顔を沢山見ることができました。

ご協力いただいた皆さま、ありがとうございました!

 

【映像の仕上げ】オリジナル楽曲制作について

プロジェクトメンバーの中で時おりあがっていた「音楽」の話題。参考映像探しの際も音楽が印象的な映像が多く選ばれており、また話し合いの中でも「今回の映像はどういった音楽と合わせるのが良いのか」という点には皆さんから様々な意見が出されていました。

そこで、皆さんから挙げられた楽曲に対するイメージをもとに、エレファントストーン側でこれまでの経験を駆使して楽曲を検討させていただくことになりました。

今回は、数々のCM楽曲制作を手がける橋本 竜樹氏にご依頼し、「FOOTBALL TOGETHER」を表現する完全オリジナルの楽曲を制作していただきました。

 

「感情曲線」を使った楽曲イメージの共有

(画像1)

オリジナル楽曲を制作するにあたり、はじめにエレファントストーンが検討したことは「感情曲線」についてです。感情曲線とは、視聴者の感情の波を可視化させたものを指しますが、今回のストーリーとシーンをもとに視聴者にどういった感情の動きを与えたいか、そのために曲調はどう変化させたいかを橋本氏に共有していきました。

画像1のような感情曲線は一般的な映画や物語の王道パターンでもありますが、「FOOTBALL TOGETHERはずっと続いていくもの」を表現するために、ラストの盛り上がり部分については再三の修正を重ねています。ラストのテンションが最高潮だとミュージカル映画のラストシーンのような、見応えもあり清々しい気分で“終わる”イメージになってしまい、一方、テンションが落ち着いた曲調だと「グータッチ映像の力に音楽が負けてしまっている」という印象が残ってしまいます。

映像と音楽を融合させて視聴者を川崎フロンターレのストーリーへ引き込むために、テンションの繊細なイメージの違いを橋本氏と慎重にすり合わせ、「FOOTBALL TOGETHER」を最大限表現する完全オリジナル楽曲を仕上げていきました。

 

まとめ

今回は制作編として、企画〜撮影〜編集会議の様子をお伝えしていきました。本プロジェクトでは、映像の方向性を決める企画工程を重点的に検討を進めていきましたが、初めに検討したTHE KACHINKOから出された価値観をベースに話し合いが進む場面が多々見受けられました。

次回、ついに映像公開!公開タイミングの検討〜映像のお披露目、研修を振り返ってのメンバーの感想をお伝えしていきます。お楽しみに!

 

公開先情報

本プロジェクトを総合的に振り返った内容をエレファントストーンのコーポレートサイトへ掲載しています。下記ボタンからサイトをご覧いただけます。

また、密着レポートの新規公開情報は、エレファントストーンのTwitterにて告知いたします。
こちらもぜひチェックしてみてください!

第四弾、【映像上映会編】はこちら

この記事を書いた人

宮坂彩愛
エレファントストーン 経営戦略室企画課

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