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テクノロジーを活用したクリエイティビティの最前線!メディアアートを代表する海外アーティストをご紹介

テクノロジーを活用したクリエイティビティの最前線!メディアアートを代表する海外アーティストをご紹介

テクノロジーとアートの境界が時間の流れとともに輪郭を失い曖昧になっている昨今。社会に大きな衝撃を与えている生成AIの登場によってその流れはますます加速していくことでしょう。

本記事では、テクノロジーを活用したクリエイティビティの最前線として「メディアアート」の代表作をシリーズで紹介していきたいと考えています。

第2回目となる今回は、メディアアートの生みの親や注目必至の鬼才など、古今の海外クリエイターを4人ピックアップ。その特徴と代表作を分かりやすく解説していきます!

メディアアートの著名アーティスト紹介

①ナム・ジュン・パイク

【注目ポイント】
・メディア・アートの生みの親
・現在のネット社会を予見

ナム・ジュン・パイクは、1932年韓国生まれ(2006年没)の現代美術家で、日本との縁も深い人物です。深い世界で初めてテレビモニターを用いたインスタレーション作品を発表し、「ビデオ・アートの父」とも呼ばれています。

1960年代には、芸術家、作曲家、デザイナー、詩人らによる前衛芸術運動「フルクサス」の中心メンバーとして、国境と分野を越えた活動を展開していました。

動画のサムネイルにもなっているTVブッダという作品は、彼の代表作のひとつです。TVモニターに映し出されているのは、ビデオカメラによってライブ撮影された自分自身の映像。

電気信号によって作り出されたもうひとりの自分と向かい合うブッダの姿は、まるでSNS上に映し出された自身の虚像をスマホの画面から眺める私たちそのもの。現在のネット社会の構造をいちはやく可視化した作品として広く知られています。

②ラファエル・ローゼンダール

【注目ポイント】
・インターネットアートの先駆者
・現実とデジタルの空間を自由に行き来

米国を拠点に活創作活動を行なっているラファエル・ローゼンダール(1986年生まれ)は、「インターネット・アート」のパイオニアとして知られるオランダ出身のアーティストです。2000年代から2010年代にかけてウェブサイト作品を精力的に制作。

デジタルテクノロジーを用いたインスタレーション、絵画、タペストリーを現実の展示空間でも展開するなど、ジャンルや空間を横断したユニークな創作活動を続けています。

インターネットを「オープンなスタジオ」と語るローゼンダール作品の特徴は、基本的に電子空間上に存在するため、いつどこでも誰もが好きなタイミングで鑑賞(アクセス)できること。2015年には、ニューヨークにあるタイムズスクエアの電光掲示板を使った「muchbetterthanthis.com」というインスタレーションを展開し、話題となりました。

また、上記動画でも語られているようにローゼンダールも日本とのかかわりが深く、3行のフレーズで構成された自由なスタイルの俳句作品を建物の壁面やウェブサイト上などさまざまな媒体を横断する形で発表しています。

③オラファー・エリアソン

【注目ポイント】
・知覚体験の変容がコンセプト
・光と色彩の新しい効果を探求

オラファー・エリアソンは、1967年生まれのデンマーク出身のアーティストです。光と色彩の探求をライフワークとしており下記動画には、最新のテクノロジーによって目の前にある現実を見たことのない世界へ変容させるその特徴がよく表れています。

人の知覚体験の拡大や超越は、20世紀の現代アートシーンのなかで出現した新しいコンセプトの1つですが、オラファー・エリアソンの作品はそうした動向を継承しつつも、独自の表現様式で発展させたモデルケースとして捉えることが出来ます。

私たちの五感と想像力、予想の限界にあるものを取り上げ、既知と未知を隔てる境界線をテーマにした彼のクリエーションがどのような地平へ到達するのか。今後の進展が楽しみで仕方ありません。

④ジョン・ウッド&ポール・ハリソン

【注目ポイント】
・何気ないアクションをコンセプトにしたクリエーション
・重要ではない事物を作品の主題として再発見

1969年生まれで香港出身のジョン・ウッドと、彼より3歳年上で英国出身のポール・ハリソンによる創作ユニット。

1993年から共同で制作を行い、動画、ビデオインスタレーション、印刷物、彫刻、ドローイングなど多彩な形態の作品を通して、従来の枠組みに捉われない実験的な試みを行いながら、新しいアート、コミュニケーションの可能性を切り拓き続けています。

上記動画は、2015年にNTTインターコミュニケーションセンター(通称ICC)で開催された展覧会「説明しにくいところもある」の模様を収めたものです。

彼ら自身の身体で実演された日常生活の「ささいなアクション」、プラモデルやゴミ箱のような「重要ではない事物」を作品の主題として再発見する柔軟な思考と眼差し。作品と展示の境界を曖昧にし、ギャラリー空間そのものをアート作品のフレームとして活用するアイデア。

こうした常に成功するわけではない動きの実践や素材の実験には、創作活動の背後に隠されているアイデアやひらめき、そして、それをもたらす肉体的な努力や精神的な葛藤を映像によって露わにしようという、ジョン・ウッド&ポール・ハリソンならではの深いメッセージ性があります。

まとめ

以上、今回は4人の海外のメディアアーティストとその代表的な作品を紹介しました。日本と縁が深い人も多く、既に知られている、見たことがある作品だったというケースも多いのではないかと思います。

現在、日本でもメディアアートに関する展覧会は多く開催されており、オンライン開催の谷口暁彦 個展「これは谷口暁彦ではない」などもこれにあたります。こちらの展覧会は2022年1月22 日から始まり、会期終了が設定されておらず随時更新されているようです。

この機会にメディアアートを楽しむ日をつくってもよいかもしれませんね。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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