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本当に美大・芸大は食えないのか?映像制作の現場から調べてみた
5月になりようやく暖かい日々を迎え春を実感している。この時期といえば新しく学校へ入学した、会社へ就職した、就職活動をしているという若者も多いだろう。
そんな中、先日、「美大芸大は今も食えない?」というタイトルのニュースを見た。リンク先に飛ぶと、正式なタイトルは「(文化の扉)美術系大学、育む創造力 時代とともに広がる専攻、社会を生き抜く力に」と少し違ったもので朝日新聞のニュースであった。
外から見ると“クリエイティブ”、“アート”と呼ばれるような世界の人間は、中高生のうちに映画や絵など専門の分野が好きでそのまま高校で美大・芸大向けの予備校に通い、浪人を覚悟で狭き門である美大・芸大を受験すると思われているだろう。
我々、映像作品に携わる現場の人間もクリエイティブにまとめられる世界で生きている。実際に、朝日新聞の記事でも美大の専攻のひとつに「映像(映画、プロジェクションマッピングなど)」という項目が記載されている。
美大・芸大が食えないと言われていた理由
美大・芸大が食えないと言われていた第一の理由は、高い学費とその後の就職率である。上述のように浪人が当たり前の世界であるのに、入学後も多摩美術大学や武蔵野美術大学の2019年度平均学費は約160万円で一般私大の120万円を大きく上回る。
また、美術の大学であるだけに教科書の他にも「材料費」がかかる。これに入学金などを合わせると4年間で換算すると800万円程度の出費にはなるのではないかと思われる。
そうした学費が高い大学といえば、医学系があげられるが、あちらは医者や薬剤師などになれば高い給与や安定した生活が手に入るのに対して、美術系の大学では一時期は「50%以上が就職しない」といわれており、その先の不安も大きかった。
そのために美大・芸大はお金がかかるうえに将来は食えないというレッテルが貼られていたのである。
実際の就職率は?
だが、時代が変わり日本画や油絵だけでなく選択肢も増えた。テレビゲームのCGや映像、広告、ウェブデザイン、建築なども専攻に加わるなどより実用的な分野も多くなったためだ。
例えば、武蔵野美術大学の2017年度の就職率は91%でそのうち80%がクリエイティブと呼ばれる職業についているという。これは世間で言われている数字よりもよほど高い値である。
ただ、美大・芸大の東大とも呼ばれる東京藝術大学の5年間の就職率を見ると多くが「進路未定」であり就職率は50%未満という状況は変わっていないようだ。
クリエイティブの現場から
では、実際クリエイティブの現場から見ると、メンバーはどのような経歴を辿ってきているのだろうか。
改めて、エレファントストーンのメンバーのプロフィールを見ると美大・芸大出身者も数名いるものの少数派で
・映画/映像、CGの専門学校に通っていた
・大学時代に映画サークルに所属していた
・大学で映画学を学んでいた
・映画美学校に通っていた(いる)
というメンバーも多かった。
やはり幼いころから「好き」ではあるものの、決して、美大・芸大を通らなければ“クリエイティブ”と呼ばれる職につくことができないわけではない。
大事なことは「好き」を仕事にし、仕事にした後も自ら研鑽を積めるかで、スタート地点では美大・芸大と一般の大学で映画が好きだった人にはスキルに違いがあるのかもしれないが、入ってしまった後の頑張りの方がよほど大事というのが実情のようだ(あくまで私の考えだが)。
例えば、プロ野球選手は高校で野球部に入り、高校卒業後は一部がプロへ入る。叶わない場合は、社会人や大学で野球を続ける、といった道ができあがっている。
しかし、映像の現場ではそうした道は一つではなく、多様な人材が業界へ飛び込み切磋琢磨しているの現状なのだ。そう考えると美大・芸大の強みというものはより一層考えていかねばならないだろう。
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