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演奏、撮影、編集、演出すべて1人。ハードオフ店長永田さんの挑戦

演奏、撮影、編集、演出すべて1人。ハードオフ店長永田さんの挑戦

企業YouTubeの中には社員のとびぬけたアイデアによって成り立ち、そのまま独特の趣を残すものがあります。

前回紹介した荒木農機さんもそうした個人のアイデアがスタート地点でした。今回は、社員の個性が光る企業YouTubeチャンネル「永田 ハードオフ久留米国分店」を紹介します。

▼荒木農機さんの記事はこちらから
“ニッチ”を“強み”に変換!荒木農機のYouTube活用

どんなチャンネル?「永田 ハードオフ久留米国分店」

このチャンネルは、ハードオフ久留米国分店の店長永田さんが1人で運営するチャンネルです。

チャンネル概要に「演奏、撮影、編集、演出、全て店員永田一人でやってます。」と記載があるように、永田 ハードオフ久留米国分店は独特のキャラクターの濃さが武器です。

2017年1月にチャンネルを開設するとこれまでに2000万回以上を再生。最初は個人で勝手に始めたことだったそうで一度はハードオフ 久留米国分店への異動に伴い休止したものの会社からもハードオフの「公式アンバサダー」に就任を要請されYouTube活動を再開。現在では登録者数も20.1万人(ともに2022年3月15日現在)を誇るチャンネルになっています。

インターネット黎明期からニコニコ動画全盛期までを彷彿とさせるインターネットならではのキャラクター性の濃さ、独特のユーモラスさを感じ取ることができます。

【チャンネル開設日】 2017年1月
【登録者数】 約20.1万人
【再生回数】 2200万回以上

ハードオフとは?

ここで整理しなければならないのが「ハードオフ(HARD OFF)」とは何かです。

「楽器・家電・家具・オーディオ・ゲーム・パソコン・カメラ・フィギュアなど取扱商品多数!中古品の買取(店頭買取/宅配買取/出張買取)・販売のハードオフグループ」

引用:https://www.hardoff.co.jp/

と記載がある通り、中古品リユース販売業を展開する企業です。1972年に新潟県でオープンしたオーディオ専門店「株式会社サウンド北越」が母体です。

中古本・中古家電販売のチェーン「ブックオフ」とグループ会社だと勘違いされることが多いようですが、違う会社が運営しています。創業者同士が個人的に親しくしていた縁から、互いのフランチャイズに加盟する関係のようです。私も10年ぐらい前にインターネットでその事実を知るまでは同じ会社だと思っていました。同じビル内や近所に店を構える、ロゴのテイストが同じだからです。

ハードオフの魅力の一つに「カオスさ」があると思います。ジャンク品コーナーは古今東西のネタ的な商品から家にある壊れた何か、みたいなものも多くその分とても安いです。まるで山から宝物を掘り出すような楽しさがあります。

「弾いてみた」が転機に

とはいえ、永田チャンネルもすぐに今のスタイルを確立したわけではありません。最初の動画を見てみると、中古ギターの紹介などを時折公開していました。

それでも再生回数は5-6万と立派なものですが、転機が訪れます。

ハードオフにあるジャンク品だけで紅を弾いてみた、という動画が150万回以上再生。「何を褒めたらいいのか分からんくらい、全部すごいわ」などと絶賛のコメントが多数つきました。

永田さんのチャンネルの魅力を紐解く

自社のリソース「ジャンク品」を最大限活用

リサイクルショップに行くのが好きな方って結構いらっしゃるのではないでしょうか?一部が壊れていたり、長年使われていた形跡があったりする商品って新品にはない魅力がありますよね。

そう、ジャンク品は宝の山なのです。永田さんのチャンネルが視聴者の目に留まったのは、「壊れていて使いようが無い」と思われているジャンク品を最大限活用し、輝かせたことにあるでしょう。

とりわけ人気があるのはX JapanやWANDSでどちらも100万回以上再生しています。

音が出ないキーボードの鍵盤を叩いて打楽器のように使ったり、変形したギターをエビ反りギターと表現したり、明らかに壊れているアイテムたちも永田さんが組み合わせれば一つの芸術に。

また、永田さんはもともとは音楽活動をされていたそうで、ジャンク品で演奏しているとは思えないクオリティに仕上がっているのも見どころの一つです。

PRよりも自分が楽しむ

永田さんのチャンネルが注目を集めたポイントの一つに、商品に対してのPRっぽさがないことも挙げられます。

曲の中で使用するジャンク品を紹介する場面もありますが、値段やどこのコーナーで購入できるかの記載などありません。商品を紹介する動画であれば、皆さんに購入いただけるように「どこでいくらで買えるか」記載してしまいますよね。

商品の宣伝ではなく、あくまで永田さんが楽しんでいる姿に魅了される方も多いのではないでしょうか。

ショート動画も導入

ここ1か月はショート動画を多く更新しており、近年の流れにのっています。「歌ってみた動画」はTik Tokやリールに投稿されることも多く、ショート動画との相性も良いでしょう。

ショート動画はレコメンド型なので、自分から検索しなくても永田さんのチャンネルと接する機会が作られます。
つまり、ショート動画を活用することで、ハードオフやジャンク商品に興味がないというユーザーも視聴者にできる可能性があるのです。

今のところはすべて1-5万再生を記録しています。

従業員を後押しするハードオフの姿勢

このように永田さんのチャンネルは企業公式でありながら、永田さん個人が運営しています。

炎上の防止や社員を誹謗中傷から守るために、個人のSNSで所属する企業名を出すことを禁止している会社もあります。
企業によって考え方はそれぞれなので、どちらが良いと一概に言えませんが、社員のやる気を後押しする姿勢によって、店舗だけでなくハードオフ全体のプロモーションとなっています。

それに対しては視聴者からは「経営者からしたら絶対に手放したくない人材。いや、人材というより人財と表現した方が適切な人。」「永田さんの動画見てハードオフの知名度は爆上がり 下手な広告打つよりずっと印象に残るし、会社の評価が上々なら視聴者としても嬉しいですね」などのコメントがついています。

ちなみにサブチャンネルがありそちらはジャンク品縛りがなしでよりディープな永田ワールドが展開されています。

まとめ

今回は、自社のリソースを最大限輝かせている「永田 ハードオフ久留米国分店」を下記の3つの観点でご紹介いたしました。

  • 「使えない」というイメージのジャンク品をアイデアで輝かせる
  • 直接的な商品の宣伝はせず、自分が楽しめる動画を投稿
  • ショート動画の活用で幅広い層との接点を作る

今後の動画も目が離せませんね。
楽しくYouTubeを運営していきたいという企業の方、ぜひ参考にしてみてくださいね。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊するも現在は自粛中。

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