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ショート動画でも話題。スラッジコンテンツとは?

ショート動画でも話題。スラッジコンテンツとは?

TikTokを中心としたショート動画で2023年になり海外で話題となっている「スラッジコンテンツ」をご存知でしょうか?

スラッジコンテンツ(Sludge content)は主にTikTokなどのショート動画コンテンツで急速に広まりました。

スラッジコンテンツとは?

スラッジとは日本語で「汚泥」という意味で、「クリエイターたちが2つ以上の無関係な動画を切り貼りしてつくった動画」のことを指します。

わかりづらいので代表例を見てみましょう。

@d_andrew_g Family Guy Content #familyguy #familyguymemes #fyp #funny #content #sludge #shipost #quagmire #subwaysurfers #slime #satisfying #brickbreaker #minecraft #minecraftmemes ♬ original sound – D_Andrew_G

ASMR、漫画、映画のシーンなどが一つの画面内に配置されています。複数の無関係な動画が進行することで目が追い付かず、混乱を感じる方も多いかもしれませんが、Z世代を中心にこのような動画が好まれています。

探す際にはTikTokなどの動画サイトで「#sludgecontent」というタグがついているものを一覧していくとその傾向が掴めるかもしれません。

スラッジコンテンツの特徴

スラッジコンテンツが受けている理由について海外では様々な分析・考察がされています。

「タイパ」を重視するZ世代に刺さった

1つは「タイパ」を重視するZ世代に刺さったと言われています。Z世代は「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視し、少ない時間で効果や満足度を得るかを大切にしていると言います。

特にスラッジコンテンツでは複数の動画を一気に視聴できるので、タイパが非常に良いということになります。

インターネットの伝統

スラッジコンテンツの動画の中には、画面が綺麗に分割されているものもありますが、動画が互いに重なり合って目まぐるしいパッチワークのようになっているものもあります。後者のバリエーションでは、画面上のコラージュの上に動画がポップアップし続けます。

NBC』では、タフツ大学のニック・シーヴァー氏が、「スラッジコンテンツの起源は不明だが、インターネット上で認知されている断片を再パッケージ化する伝統と関連している」と述べています。

つまり、インターネット上の著作権回避に関する伝統だというのです。映像に他の映像を重ねることで著作権を回避してきたインターネットの歴史があり、そうしたアンダーグラウンドな伝統だと言います。

エンゲージメント率が高い

POLYGON』で編集者のオストノックス氏は、「スラッジコンテンツが通常よりもはるかに高いエンゲージメントが得られたのは間違いありません」とコメントしています。

また、総再生時間も増加したといいます。画面内の一つの動画に飽きても他の動画を見続けるからです。また、『dot.LA』によると、TikTok動画の平均的視聴時間の8倍視聴されているといいます。

オストノックス氏は、「ポッドキャストを聴きながら家事をするようなもの」と同動画が流行った理由を述べています。

なぜスラッジコンテンツが投稿されるのか?

では、なぜスラッジコンテンツが流行したのでしょうか?そこにはTikTokの収益プログラムに関係があります。

現在、TikTokではクリエイターの一部は収益を受けることができます。2023年6月現在では、上位約4%の動画が広告収益を得ているといいます。

そこで、クリエイターはいかに広告をクリックしてもらえるか、いかにバズるかを考えるようになりました。しかし、その中には「怒り」を買うことを目的にした動画もあります。そういった動画は「レイジファーミング」や「レイジベイティング」と総称されています。日本でもわざとSNS上で炎上させることで話題を作るというケースがありますね。

そうした動画はコメントやリアクションが多いため、TikTokでは「長時間の視聴やコメントなど、エンゲージメントの高い動画」として認識されることになり結果的に収益が上がります。

こうして、インターネット上では刺激的で偏向に満ちたコンテンツが増えてきました。今回のスラッジコンテンツはそうした「怒り」を買うため人々を挑発する動画へのカウンターパンチだと言うのです。

『dot.LA』によるとCNNの新CEOクリス・リヒト氏は、CNNは視聴者からの反応を得ることを目的とするコンテンツから事実に基づいたニュースに重点を置くべきだと述べています。人々は、クラブミュージックで言うところのチルアウトできるようなアンビエントな雰囲気を一方で求めているというのです。

まとめ

CBC』で、オランダのティルブルフ大学助教授サイフ・シャヒン氏は、「これは、知的かつ能動的に消費されるのではなく、受動的に消費されることを意図した、コンテンツの質を下げた大きなトレンドの一例だ」と述べています。

インターネットの世界は今や誰しもが楽しみ、そして誰しもがクリエイターになる時代です。そして、情報が詰め込まれているからバズるわけでも、価値があるから流行るわけでもありません。

Z世代はテレビや映画ではなくインターネットで育ったとも指摘しています。私たちがいくら考察してみても、こうした動画は若い世代では常識の範囲内として処理されていくのかもしれません。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊するも現在は自粛中。

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