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新時代のポップ・アイコン。リナ・サワヤマのMVをご紹介

新時代のポップ・アイコン。リナ・サワヤマのMVをご紹介

画像出典:UNIVERSAL MUSIC JAPAN

ロンドンを拠点に英国の音楽シーンでセンセーショナルな活躍を見せているリナ・サワヤマ。

シンガーソングライターとして作詞、作曲、プロデュース、MVのディレクションまでを手がける他、ファッションモデルや女優としても活躍するなど、マルチな才能を発揮し、世界から熱い眼差しを向けられているいま大注目のアーティストです。

スターダムを駆け上がっている彼女ですが、欧米での人気に比べると、母国の日本での知名度はまだアンダーグラウンドな水準にとどまっていますが、世界的な女優デビューとなる映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』の日本公開(9月22日)を間近に控え、アジア圏での本格ブレイクも目前に迫っているといえそうです。

(『ジョン・ウィック:コンセクエンス』予告編映像)

そこで本記事では、クリエイティビティの高さでも定評のあるリナ・サワヤマの魅力に迫りながら、彼女の名作MVをご紹介します!

リナ・サワヤマ。三つの魅力

リナ・サワヤマは、1990年に新潟県で生まれ、移住先であるロンドン(イギリス)をベースに活動しているシンガーソングライターです。

自身のクリエイティビティの裾野を広げ、ファッションモデル、女優など、昨今では音楽創作にとどまらないマルチでワールドワイドな活躍を披露。英国では、「NEXTレディー・ガガ」と評されることも多く、新時代のアイコンとして絶大な存在感を発揮しています。

①アジア人としての矜持

優れたアーティストの多くが人生で遭遇した苦しみや悲しみを創作のエネルギーに変えているように、リナ・サワヤマのアーティスト活動には、日本から遠く離れたイギリスの地でアジア人として暮らすことの不条理がリアルに刻まれています。

大きな成功を収めている彼女ですが、英国籍を持たないがために同国の音楽賞を受賞できない不遇な経験も味わっています。

(現在では、彼女の活躍とエルトン・ジョンをはじめとする支持者の異議申し立てによって、英国音楽シーンのルールが変更。現在は、イギリス生まれのアーティスト、またはイギリスのパスポート保持者(二重国籍可)、もしくはイギリスに5年以上滞在する永住者を選考対象としています。参考:UNIVERSAL MUSIC JAPAN

②ダイバーシティを体現

バイセクシャル当事者であることをオープンにしている彼女は、従来のジェンダーの枠組みにとらわれないクィア(ジュンダー規範から解放された性のあり方を指し示す概念)な発言やパフォーマンスでも話題になることが多いです。

人種やセクシュアリティによって差別的な体験をすることも少なくなかったと語るリナ・サワヤマのMVは、自由と多様性を愛するポジティブなエモーションに満ちあふれ、あっと驚く意外なアイデアや仕掛けも満載。新時代の幕開けを告げるクリエイティブな映像作品は、どれも必見です。

③重いテーマをポップに表現

ディレクションを自身で担うこともあるMVでは、社会問題をポップかつユーモラスに描いたものが多く、批評性とエンターテイメント性が高いレベルで同居。バッシングを恐れずに自身の思想や信条をストレートに表現する彼女のクリエーションは、新作がリリースされる度に多様な議論を引き起こしています。

現地のメディアでは「次世代を担う100人」にも選出され、今もっともホットなアーティストの一人として世界中のクリエイターから熱い眼差しが注がれています。

リナ・サワヤマのMVをご紹介

①ディレクションを自身で担当『STFU!』

2019年にリリースされた楽曲『STFU!』のMVは、リナ・サワヤマが自らディレクションを手がけています。タイトルの『STFU!』は、黙れやうるさいを意味するスラングの頭文字を四文字に集約したもの。

本MVを鑑賞する際にぜひ注目してほしいのは、冒頭とエンディングの会話劇です。ステレオタイプの価値観を一方的に押し付けてくる白人男性を通して、マイクロアグレッション(無意識に行われる差別的な振る舞い)への強い怒りを表明しています。

過激なヘヴィメタルサウンドと躍動感あふれるダンスの掛け合わせがとても面白く、楽曲の内包するパワーを映像でも見事に表現しています。

②シングルマザーの親子がテーマの『This Hell』

「少数派の意思表明」としての芸術を体現しているリナ・サワヤマ。2022年に公開された『This Hell』は、シングルマザーの母親と娘の関係性をテーマに、社会の逆境に立ち向かう全ての女性たちにエールを贈った作品です。

暗く重いタイトルとは裏腹に、楽曲そのものはハイテンションなパーティーソングで、リナ・サワヤマ本人が軽やかに歌い踊る様子がひときわ目を引きます。一筋縄ではいかなかったという自身の母とのやり取りをベースに書かれた歌詞には、移民(UK在住の日本人)としてのアイデンティティが強く表れています。

自らの政治的な理念や考え方を音楽を通して次世代の人々に残したい。そんなリナ・サワヤマの信念が表現されているので、興味のある方はぜひ歌詞の内容もチェックして見てくださいね。

③短編映画のようにドラマティックな『Hold The Girl』

2022年8月に公開された『Hold The Girl』。ブルガリアで撮影された本MVは、ショートフィルムのような物語性を感じさせるドラマティックな一本です。

日本ツアーでは「First Love」を披露するなど、リナ・サワヤマが敬愛する宇多田ヒカルの影響が垣間見える楽曲。彼女らしい繊細で力強いメロディーが胸を打つ名ソングです。

東欧の古びた家から逃れようとするリナが、彼女を引き戻そうとする目に見えない力に立ち向かう様子を通して、過去の出来事を乗り越えて前に進む人間の力強さを描いています。

④ポップな中で批評性が光る『Comme Des Garçons (Like the Boy)』

大きな成功を収めたアルバム『SAWAYAMA』の中でも、屈指の人気曲『Comme Des Garçons (Like The Boy)』。

「男らしさ」の概念をシニカルな目線で描き、ブラジルで人気のドラァグクイーン歌手とコラボレーションした同作は、リナ・サワヤマにしか作れないクィア精神あふれる楽曲です。

皮肉や怒りを感じさせる歌詞とは裏腹に、MVでは、ユーモアを忘れない遊び心満載のポップな映像が大きな見どころに。視聴者に鮮烈なイメージをもたらすメイクやアート性の高い衣装を含め、新世代のファッション・アイコンとしての一面も強く表れた作品です。

⑤80sカルチャーをモダンに昇華『Frankenstein』

2022年10月に公開された最新シングル『Frankenstein』のMVがこちらです。

ダンスパーティーを舞台に内気で孤立する少女と、鏡から出現したもう一人の自分の様子が対照的に描かれています。リナ・サワヤマ本人が披露するフランケンシュタインを模したダンスも印象的な映像になっています。

アッパーでディスコ調の楽曲ですが、ロック色の強いダブルのライダースを身に纏ったファッションやギターサウンドなどから80年代のハードロックやヘヴィメタルの影響も感じさせます。

古き良きカルチャーをモダンに昇華するセンスや社会性を帯びた歌詞をあくまでもポップ・カルチャーの文脈で表現する点など、レディ・ガガとの共通点もいくつか確認できる、示唆に富んだ一本です。

まとめ

ポップな表現の中に社会性の強いメッセージを込めたリナ・サワヤマの映像作品からは、彼女ならではのセンスやクリエイティビティを感じます。世界を舞台に活躍する彼女の今後の活躍にも注目していきたいです。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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