SPECIAL

ドラマ好き映像プロデューサーによる、テレビドラマにおける「つい思い出してしまう人物」の考察

ドラマ好き映像プロデューサーによる、テレビドラマにおける「つい思い出してしまう人物」の考察

はじめまして、今年の4月にエレファントストーンに入社しましたプロデューサーの田中です。

関西から上京してきて、刺激の多い生活をさせていただいております。私は今回の転職を機に“映像制作”という新たな業界に挑戦させていただいたのですが、映像と言うと自分はやはりテレビドラマが大好きです。

最近は、日曜劇場『VIVANT』(TBS系)が話題になりましたが、毎週見ていたという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

今回はそんなテレビドラマ大好きな私が、テレビドラマをもとに魅力的なキャラクターについて考察していきます。

ストーリー派? キャラクター(人物)派?

ドラマ好きの人と話しているとよく聞かれるのが、ストーリー派かキャラクター(人物)派かという点です。簡単に言うと、ドラマを見る上でストーリー性を重視するか、キャラクター性を重視するかということです。自分は話の先がつい気になってしまう「ストーリー派」なのかなとずっと思っていました。

一方で、好きな作品について話したり、かつて見た作品を思い出したりしている時は「あのキャラおもしろかったな〜」とか「(俳優)さんが演じていたあの役柄最高だったな〜」など人物を思い出すことが多いなと感じています。(話の展開は忘れてしまうこともしばしばです…)

これは完全に私の個人的な考えになってしまいますが、視聴中は話の展開に夢中になりがちですが、作品を見た後に長く記憶に残るのは人物の魅力なのではないかと思うのです。

大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』を見られた方も多いかと思うのですが、「逃げ恥の話をしよう」と言われると、平匡さんとみくりさんのあの素敵な人柄を思い出されるのではないでしょうか。そしてさまざまなドラマを見ていく中で、面白いと感じる人物、どうしても気になる人物、応援したくなる人物には何か共通点があるのではないかと思います。

懐かしの大ヒットドラマ『やまとなでしこ』から、私の大好きな登場人物である中原欧介(堤真一)と、神野桜子(松嶋菜々子)を参考に、テレビドラマが終わっても記憶に残るキャラクター像について考察していきたいと思います。見られていた方は、懐かしんでいただきながら、まだ見てない方は、これをきっかけに見ていただけたらと思います。

①「二面性」がある

まず初めに、ドラマの中に出てくる魅力的な人物には「二面性」があるのではないかと思います。

中原欧介は数学の研究者でした。一流大学を卒業後、その才能を認められ海外に留学。魚を使って小学生にわかりやすく算数を教えたり、神野桜子に落ちていた新聞紙を拾って見せ、「これを42回折れば宇宙まで届くんですよ」と誰もが驚く知識を披露します。欧介はこのように人が羨む能力を持ち合わせている人間なのです。

一方で、海外で数学に没頭するがゆえに恋人に愛想を尽かされたトラウマを持ち、逃げ帰ってきて実家の魚屋の店主をつとめている。人数合わせで外科医のふりをさせられた合コンで、かつての恋人にそっくりな神野桜子が現れ、一目惚れ。自分をお金持ちだと勘違いする桜子にアプローチを受け、欧介は舞い上がって「自分は医師だ」と嘘をついてしまいます。

しかもかなりのキメ顔で(このシーン大好きです。「そんなの絶対いつかバレるやん!」と突っ込みたくなりますよね。「頭脳明瞭な数学者なのに、そこはそんなかんじなの!?」と。

ただどこか気持ちがわかるような気もします。親しくなりたい気持ちに負けて自分を少し偽ってしまうのは共感できる点だと思います。

このように魅力的な人物には、「憧れの要素」と、「共感の要素」があるのだと思います。また、この点はどちらか一方だけでは、成り立たないのだと思います。見ている人に「すごい!」と思わせるだけでは、自分から遠い人物であると思われてしまい、「わかる!」と思われるだけでは「なんだ、自分と同じか」と思われるだけだからです。

憧れる対象の中に自分と同じ共通点を見つけることで、人は惹きつけられるのだと思います。

②「○○すぎる個性・ならではの行動」がある

火事で燃えさかるアパートの中、「大切な洋服があるから」と言われ火の中に飛び込んでいく人なんているのでしょうか。お金持ちであるという嘘がバレて嫌われた後も欧介はストーカーに襲われる桜子を助け、桜子が体調不良で倒れた際には一晩中看病をします。

これらの行動は全て恋愛感情からではなく、人間としてしているように感じました。中原欧介は「お人好しすぎる」人です。またそれは彼の行動とセリフに反映されています。時には「小皿に注がれた醤油目線」の発言まで。(笑)強烈なキャラと、欧介らしいな〜と思う言動にはやはり惹きつけられてしまいます。

一方、桜子は客室乗務員という華やかな仕事をする傍ら、収入の全てを洋服に注ぎ込み、カップラーメンが主食。そして毎日のように合コン三昧。出会った男性にはまず車のキーで値踏みして、狙った男性には「今夜はたったひとりの人に巡り会えた気がする」とうっとり。桜子は裕福ではない幼少期をすごしたことから、「お金持ちが好きすぎる」性格となりました。

現代では炎上しそうな発言も多くあるのですが、どこか魅力的に見えてしまうのは、自分で決めた目的のためにまっすぐであるからだと思います。また自分を人と比べることも、人を蹴落とそうともせず、決してぶれたりしない。そんな嫌味のない、単にお金持ちが好きすぎる性格が多くの視聴者に好かれたのではないかなと思っています。

ただそのブレないはずの性格が次第にブレていくのですが・・・また見返したくなってきました。

③「変化」がある

そしてついに最終回、詳細を述べるのは控えさせていただきますが、欧介は恋愛へのためらいや、一度は諦めた数学者としての夢と向き合うことを決意。桜子に想いを打ち明けます。強烈なキャラを持った二人なのですが、関わり合うことで次第に変化していきました。

これは私の推測もあるのですが、この二人が惹かれあった理由は互いに「自分にないものを持っていたから」ではないかと思っています。

先述した通り、欧介は数学に夢中になるあまり彼女にフラれ、恋愛にトラウマを抱えますが、そんな元彼女にそっくりな桜子には仲良くなりたい一心でお金持ちであるという嘘をついてしまいます。諦めたはずの数学なのに、要所要所で楽しそうに数学の話を披露して、どこか諦めきれていない一面を見せています。

そんな中途半端で心の整理がつききっていない欧介にとっては、「お金持ちと結婚したい!」という自分の気持ちに正直で、真っ直ぐに行動する桜子がどこか眩しくて影響を受けたのかなと思います。

一方で、全ては金だと思っていた桜子にとっては、決して裕福だといえない状況でも、どこか楽しそうに生活する欧介は本当の意味で「豊かな人」に見え、もっと知りたい!と興味を持ったのだと思います。互いに過去のトラウマが関連しているからこそ簡単に心変わりはせずに、ためらいも大きいのですが、各話で一つずつ困難をともに乗り越えることで繋がりが強くなっていきました。

葛藤しながらも変化する姿に、見ている人は感動するのだと思います。

まとめ

みなさんの周りにもこんな方、いらっしゃいますでしょうか。これからドラマを見て、いいなと思う人物が現れた際にぜひ検証していただければと思います。

映像を楽しむ一つのきっかけになりましたら幸いでございます。

この記事を書いた人

田中悠平
エレファントストーンのプロデューサー

田中悠平の書いた記事一覧へ

タグ

RELATED ARTICLES 関連記事