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美の革命!キュビスムを感じさせるMVをご紹介

美の革命!キュビスムを感じさせるMVをご紹介

こんにちは、映像制作のエレファントストーンが運営するオウンドメディア「ZOOREL」です。日本では、50年ぶりの開催となる大規模なキュビスム展『パリ ポンピドゥーセンター キュビスム展―美の革命 ピカソ、ブラックからドローネー、シャガールへ』が評判を呼んでいます。

※京都市京セラ美術館で2024年3月20日~7月7日まで開催。

少し難解なイメージのあるキュビスムですが、現在のアートシーンでは基本テクニックの一つとして定着しており、映像表現の領域でも隠し味のようにさりげなく用いられることがあります。そこで今回は、キュビスムについて解説しながらその影響を強く感じさせる独創的なMVを厳選してお届けします!

西洋美術史上の大革命!キュビスムとは?

キュビスムは、パブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックの二人を中心として巻き起こった芸術運動です。抽象画の先駆けとも評される彼らの作風は、様々な角度から捉えた複数のイメージを一つの平面の中でコラージュし、物体のすべての面を同時に見えるように描く、きわめて独創的な手法によって生み出されています。

モノの見方そのものを根本的に変えたこのムーブメントは、芸術におけるもっとも大きな革命の一つとして、絵画にとどまらず彫刻や建築、映像などあらゆる芸術表現にまで波及し、後世のアートシーンに多大な影響を与えています。

知っておきたい!キュビスム三つの特徴

最近はこのキュビスムの技法を用いたMVが公開されているのを目にします。初めてこの言葉を聞く方やキュビスムについてまだあまり知らない方にMVをより面白く視聴していただくため、三つの観点から簡単にその特徴をお伝えしていきます。

①マルチアングル(多視点)

キュビスムの最大の特徴は、様々な面や角度から対象を観察してそれを一つのキャンバス上に再構築する点にあります。ピカソやブラックによってその技法が創始される以前は、一つの視点から対象を正確に描く「模写」こそが絵画の至上命題であり、ルネサンス以降、長きにわたって画家たちを縛り付けてきた絶対的なルールでした。

その呪縛をうち破ったのが、伝統的な遠近法・明暗法から解き放たれた自由な表現を探求していたポール・セザンヌ等の後期印象派の作品群であり、彼らの革新的なアイデアもそこから強く影響を受けています。

②幾何学的なフォルム

キュビスムの作品では対象物の具体的な特徴を捨て去り、高度に抽象化することでフォルムが極端に単純化されています。場所、人物、家等の全ての物体を円柱、球体、円錐といった幾何学的なフォルムに還元しており、「キューブ(立方体)」を語源とするキュビスムの名もこの形態的な特徴に由来しています。

目に見えない本質的な事物の構造を目に見える形で象徴的に表現したキュビスムの技法は、当時の画壇からは異端視されるほど前衛的でしたが、現代では「私たちが目にしない日はないのではないか?」と思われるほど広告デザインやアニメーションの領域にも深く浸透しています。

③題材の自由化

西洋絵画の世界では19世紀の終わりごろまで、宗教、神話、特権階級の人々といった描くべきテーマが厳格に決められていました。そんな芸術アカデミーによって権威づけられていた暗黙のルールに反旗を翻したのが、ゴッホやセザンヌなど印象派の画家たちです。

彼らの自由な精神性や技法を深く受け継いたキュビスムのアーティストたちは、絵画のモチーフやテーマをさらに拡張していきます。キュビスム以降、題材の自由化は極限まで押し進められ、現在では世界に存在するすべての事象がアートの対象となり、抽象表現主義のように現実世界に物体のない作品も鑑賞者から当たり前のように受容されています。

キュビスムを使用したMV事例

1. おいしくるメロンパン -「Utopia」

今注目のロックバンド、おいしくるメロンパンが2022年にリリースした「Utopia」。同年に発売されたミニアルバム「cubism」のオープニングを飾る楽曲であり、MVでもアルバムタイトルの“キュビスム”に因んだ映像表現がなされています。

本作の監督は、ONE OK ROCK、キノコ帝国、凛として時雨のMVを手がけている映像作家のフカツマサカズさん。このMVの大きな特徴となっているのが、キュビスムの手法に基づいた幾何学的な構図です(1分10秒~)。立方体のフォルムを持つ建造物と音楽ステージをバランスよく配置することで、絵画のように印象的なカットに。窓枠やテレビ、スタンドライトといったステージ内のインテリアも単純な形態で構成されており、より重層的な視覚効果を生み出しています。

先日公開された新曲「五つ目の季節」のMVにおいても、その情景描写の中でさりげなくキュビスム的な構図が見え隠れしています。小説のような歌詞の世界ともリンクしたポエティックな映像美が紡がれているので、ぜひ、あわせてチェックしてみてくださいね。

2. odol -「four eyes」

先進性とポピュラリティが混在した、独特の魅力を放つ三人組バンドのodol。2018年に公開した楽曲「four eyes」のMVは、複数のカメラを使用することで、過去と現在という二つの瞬間を多角的に捉える等、キュビスムからの強い影響を随所に感じさせる内容になっています。

MVのディレクションは、Mr.Children、緑黄色社会、モノンクルといったアーティストの最新MVを手がけている林響太朗さんが担当。本作で注目したいのが、ライティングとYouTubeの画面比率を上手く利用することでキュビスム的な画面構成をつくり出している点です。

動画を視聴すると、暗い部屋の中にときおり差し込まれる光の効果によって平面図形のような陰影があらわれ、長方形のディスプレイが額縁やキャンバスのように感じられる瞬間を何度も確認することが出来ます。

3. D.A.N. -「Sundance」

独特な筆線で中毒性の高いイラストやアニメーションを描き出し、多方面で活躍しているイラストレーター/映像作家のオオクボリュウ。ここ数年は、星野源、斉藤和義、Benny SingsのMVやアートワーク等、多彩なアーティストとのコラボレーションを展開しており、表現のフィールドを広げています。

2018年に公開された三人組バンドD.A.N.の「Sundance」のMVでは、実写映像の中にキュビスム風の3DCGアニメーションを織り交ぜ、ユーモラスな映像世界をつくり出しています。

D.A.N. の軽快でミニマルなビートに、オオクボリュウ監督のアニメーションが絶妙にマッチ。単純化やデフォルメ(誇張)を得意とするキュビスムとアニメーションの親和性の高さがよく分かる1本になっています。

まとめ

今回キュビスムの手法が使用されたMVをご紹介する中で、ロック、J-POP等のジャンルの垣根を問わずこの手法が使用されていることが分かりました。もしかしたら、あなたの好きなアーティストのMVでもキュビスムが使われているかもしれませんね。

※参考文献
松井裕実(2019)『キュビスム芸術史ー20世紀西洋美術と新しい〈現実〉』名古屋大学出版会
布施英利(2022)『現代アートはすごい:デュシャンから最果タヒまで』ポプラ社


 

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この記事を書いた人

ZOOREL編集部/コスモス武田
慶應義塾大学卒。大学時代から文学や映画に傾倒。缶チューハイとモツ煮込みが大好き。映画とマンガと音楽が至福のツマミ。

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