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フィンランド史上最大の予算
映画『ヘヴィ・トリップヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』

フィンランド史上最大の予算 映画『ヘヴィ・トリップヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』

フィンランド史上最大の予算をかけて作られた映画が日本にやってきた。12月27日にシネマート新宿&心斎橋ほかで公開された『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』(原題:Heavy Trip/Hevi reissu)だ。

副題に俺たち崖っぷち北欧メタルとある通り、こちらの作品はフィンランドのとある田舎町にある「ヘヴィメタル」バンドのインペイルド・レクタム(日本語訳すると直腸陥没)があるきっかけをもとにノルウェーのフェスを目指すという作品になっている。バンド名からわかる通り、この作品はコメディタッチになっている。

日本でコメディタッチのヘヴィメタル映画といえば、同名の漫画を原作にした『デトロイトメタルシティ』がある。だが、あの作品は一般人から見たステレオタイプな「ヘビメタ」像を偏見に満ちて描いた作品であり、実際のヘヴィメタルファンからするとリアリティには欠けていた。

この作品ではヘヴィメタルではなく「メタル」と訳している通り、ヘヴィメタルの現実をきちんと再現している。ちなみにマニアはヘビメタと言われるのは嫌いで、ヘヴィもつけずに「メタル」というのが通常である。

その本気度の高さはフィンランドが世界最大のメタル大国とも言われているからだ。だからこそメタルを知っているものこそ腹から笑えて、ちょっと泣ける作品なのだ。ユッカ・ヴィドゥグレン&ユーソ・ラーティオは作品制作の理由をこう語る。

「フィンランドに笑える映画がほとんどないことです。含みのあるインテリなネタにほくそ笑むのではなく、腹を抱えて思いきり笑えるという意味でね」

「音楽に大きな情熱を持つ田舎者など何の面白みもないと思われがちでしょうが、実際は多くのインスピレーションを与えてくれます。彼らは金持ちや有名人になる見込みも薄く女性にもモテないかもしれませんが、あの音楽を奏でることができるのです。

音楽を愛する気持ちだけでね。名声が大きくものを言い、売り上げとルックスが重視される現代の音楽業界において、彼らのようなバンドはブレない正真正銘の芸術という点で最後の砦と呼べるかもしれません」。

メタル大国フィンランド

フィンランドと聞くとピンとこない読者もいるだろうが、北欧の国のひとつ。近くにノルウェー、スウェーデン、海を渡ればアイスランドがある。信じれらないかもしれないが、フィンランドではヘヴィメタルは国民音楽でヒットチャートの上位にヘヴィメタルが散見される。

特にアルバムランキングにはChildren of Bodom、Insomnium、Amorphis、Nightwishといった名前が並ぶ。

総人口550万人に対して、メタルバンドは3000、フィンランドは人口10万人あたり53.2のメタルバンドが存在し、人口比率で世界で最も多くのメタルバンドがいるメタル超大国である。

ヘヴィメタルを聞いたことがない人は「うるさい」「悪魔崇拝」「デスボイス」「KISSを象徴とする白塗り」といった印象を持つだろう。

しかし、実際のヘヴィメタルはジャンルのていはなしているものの、非常に幅の広いジャンルである。上述の動画はフォーク、シンフォニック、ゴシックといった要素を持つフィンランドのバンドたちである。このように「民族性」「クラシック要素」も人気の要素であるし、決してうるさいだけの音楽ではないのだ。

フィンランド史上ナンバーワンの予算

さて、話を映画に戻すとフィンランド史上ナンバーワンの予算というが、正直「思ったより金はかかっている」という感想をちらりほらりときいた。

フィンランド+ヘヴィメタルという異色の組み合わせから、チープなB級、C級映画を予想していたが、ある意味で王道のストーリー、映像になっていたというのが正直な感想だ。ただ、ハリウッドと比べると豪華なCGがあるわけでもなし、これでナンバーワンなのというのもまた否めないが……。

音楽の本気度も高い。STRATOVARIUSのベーシストであるラウリ・ポラーが手掛けている。あのクラシック音楽家ジャン・シベリウスの子孫であるポラーは、ヘヴィメタルバンドで活躍するかたわら映画音楽なども手掛けているが、この映画で表現されているのは本気もののメタルである。多分、メタルを知らない人と一緒にいったら耳をつんざく爆音にきっと逃げ出してしまうだろう、とちょっと不安になったほどだ。

とはいえ、そんな心配は無用だ。2018年のSXSWでプレミア上映されて以降、同作品は高い評価を得続けている。シネマトゥデイで星4つ、フィルマークスでも星4つと日本のレビューサイトでも好調だ。

私も見に行った際にグッズがほとんど売り切れ……直腸ボム(オリジナルドリンク)をきめながら観覧しようと思っていたのだが、思わぬ人気ぶりにびっくりした。

フィンランド大使館も応援しているこの映画、シネマート新宿では毎週金曜日はデスボイスでチケットを購入すると割引になるというユニークなサービスも行っている。新年映画はじめにいかがだろうか?

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この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊するも現在は自粛中。

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