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「ブレスト」を使いこなしてアイデアを導き出す方法【ブレスト超実践講座 前編】

「ブレスト」を使いこなしてアイデアを導き出す方法【ブレスト超実践講座 前編】

こんにちは、エレファントストーン ディレクターの嶺です。みなさん、良いアイデアが出ないでお困りになったことはありませんか?

かくいうエレファントストーンのメンバーもしょっちゅうそれで悩んでいます。私たちの仕事においては、「企画を考える」「提案書を作る」という仕事が年がら年中発生するんですね。ただ自分で言うのも何ですが、わたくし嶺はアイデア出しに苦手意識はあまり無く、お客様から企画力やアイデアを評価していただけることも多いです。なぜか?

それは、「ブレスト」を積極的に活用していることが大きいと思っています。

ブレスト = ブレインストーミング

「ブレスト」ってやったことはありますか? 「提案内容についてブレストしましょう」みたいな感じで、「アイデア出し」とか「話し合い」みたいなニュアンスでお使いになる方もいるんじゃないかなと思います。ただ、実は「ブレスト」というのは、明確にルールや作法が決まっている一種の競技みたいなものなんですね。

原語は「brainstorming」という一つの英単語です。「barin」は脳みそ。そして「storming」は「嵐、暴風」という意味ですね。直訳すると「脳みそ暴風」。こう書いてみると面白い和訳ですが、これ、すごく本質を捉えた表現だなと感じます。そう、ブレストとは、「脳みその中に暴風を巻き起こして超活性化させること」なんです。

実は、他のエレファントストーン社員も「ブレスト」という言葉は使っていたものの、この作法にしっかり乗っ取って行なっていなかったということが分かりました。そこで、エレファントストーン社内で「ブレスト」をもっと活用してもらうため、嶺が講師となって「ブレスト実践講座」を2021年2月に3回実施。社員に正しい「ブレスト」を体験してもらいした。

<<参加した社員の感想>>

– 自分ひとりだけの視野では限界があることが、いろんな個性や意見がブレストで混ざり合うことで、無限のアイディアが浮かぶのでは?と思えた。

– 頭の中で思ったことをそのまま言ってもいい安心感と、言ったことををその場にいる人に受け入れられる快楽みたいなものを感じるようになりました。

– 今までブレストって「アイデアを出さなきゃいけない」って強迫的に考えがちで参加が億劫でしたが、今では楽しみになっています!

このように、一度正しい「ブレスト」を体験しただけで様々にポジティブな効果を感じてもらえました。本記事では、このブレストを講座として実践した結果や反応を踏まえて、「ブレスト」未経験の方でも分かりやすい形で方法と魅力をお伝えできればと思います。

ブレストの事前準備

「ブレスト」で検索すると、やり方を紹介している色々なページが出てくると思います。自分もそういったやり方を参考にしながら、自分流にアレンジして「ブレスト」を行なっています。

◯日時を設定する

自分はだいたい1時間で設定します。必ず事前に「ブレスト」を行うことが予告された上で各自リサーチなど準備期間を設けてから実施するようにしてください。参加者が事前準備や情報を頭に入れない状態で実施しても、望んだ効果は出ることはありません。

◯テーマ(課題)設定を明確にする。

「ブレスト」で話し合う課題は明確であるほど良いです。例えば先日社内で行なったブレスト実践講座では、「エレファントストーンのYouTubeチャンネルの登録者数を2021年中に1000人達成するための番組内容案」でした。最初参加者から出したテーマ案は「YouTubeチャンネル登録者を増やすことが出来る映像は何か?」だったのですが、それをより具体的にしたのが前述のテーマです。

ここまで具体的にしないと、「いつまでに達成を目指すのか?」「登録者数を増やすとはどれくらい増やしたいのか?」などの軸がブレてしまい、参加者が異なる前提のまま話すことになり、結果良いアイデアが出なくなってしまいます。

◯ファシリテーターと書記役を設定する

ブレストはファシリテーターの腕にかかっているといっても過言ではありません。どれだけ発言しやすく意見を生み出される「暴風」を巻き起こせるかは、ファシリテーターが場うまくを掻き回す力にかかっています。上手いファシリテーションには言語化力、質問力、その人に対する信頼感、など様々な能力が求められます。もし「ブレスト」経験者が周りにいたら、その人にファシリテーターをお願いするのも一手です。

書記も同じく重要で、付箋で意見をホワイトボードに貼っていったり、ブレスト用のツールでディスプレイに映しながら、参加者全員がここまでの話の流れを一目で読み取れるような記録の取り方を心がけて行います。エレファントストーンでは、GoogleのJamboard機能をよく使用しています。

慣れている人の場合はファシリテーターと書記を兼任しても大丈夫ですが、議事録の記録に手間取りファシリテーションがおろそかになったり、その逆のようなことが起こってはいけないので、参加人数が十分にれば別々に担当した方が良いです。そして、きちんと議事録を取るメンバーが一人いることで、他の参加者は記録を取る作業から解放されテーマに集中することができます。

ブレスト4原則

そして準備をしっかりしたらいざ実践!ですが、「ブレスト」中必ず守る4原則があります。これを参加者全員がしっかりルールとして守らないと、「ブレスト」にはなりません。

1、発言に対しては否定(批判)をしない
2、質より量を重視する(悩まない、考えすぎない)
3、発言を組み合わせていく
4、ブレスト中は判断や結論を出さないようにする

格闘技の試合で開始直前に審判がルールを選手に確認するように、ファシリテーターがこの4原則を守って行うことを最初に参加者に宣言して、全員がこの認識をキチンと持って取り組めるようにします。この最初に宣言するというプロセスは、「ブレスト」に慣れていないメンバーがいるうちは特に重要です。この宣言が無いと、やっぱり先輩後輩や上司部下の関係性がある中で、特に年次が下の人はなかなか自由には発言はできません。

1、発言に対しては否定(批判)をしない

この「否定しない」がもっっっっとも「ブレスト」において重要なことだと考えます。「つまらない」「ありきたり」「◯◯なところはいいけど、△△なところはダメだよね」「予算にハマらない」「無理でしょ」…誰かがそんなリアクションをした瞬間に、発言をした相手の脳みそにはロックがかかり、心ががんじがらめに抑圧されてもう面白いアイデアは出てこなくなります。

皆さんもぜひ思い出してみてください、自分の発言に対して上司やクライアントからそんなリアクションをされた時のことを…批判や否定というのは、それくらい相手の脳みそに悪影響を与えるものなのです。

「ブレスト」中に誰かの発言に対して許されるリアクションは、「肯定」のみです。「良いね」「面白いね」「最高」。GOOD、YES、SURE、EXCELLENT! そうしたポジティブトークを徹底することで初めて、参加者が「何を言っても肯定してもらえる」と感じ、場の発言のハードルがどんどん下がっていきます。発言のハードルが下がると、普段は言えないような意見が言えたり、思った瞬間に発言することが出来てくるようになるのです。ポジティブトークが「ブレスト」をするための第一歩と言えます。

また、意識する必要があるのは、ツッコミやイジリも批判(否定)の一種ということです。例えばお笑い芸人が出ているバラエティ番組を想像してもらえば良いですが、いじられキャラの人が発言した時に、仮に良いこと言ったとしてもリアクションでイジった返しをされよね。あれも否定や批判の一種なんです。「なんでやねん」って、そもそも否定語ですよね。

ツッコミやイジリは、一見笑いが起きて場が温まるようにツッコミしたりイジった側の人は思うかもしれませんが、された側は否定や批判をされた時と同じような脳みその働きが起きて、脳みそにロックがかかります(これは自分の個人的見解ですが、「ブレスト」を重ねた経験からすると、ツッコミやイジリも禁止すると新人や若い子からの発言頻度がグッと増えます)。お笑い芸人的なコミュニケーションは普段の雑談では許されるかもしれませんが、「ブレスト」の場においては明確に禁止です。

でもこれ、「ブレスト」に限らず社会のあらゆる人間関係において重要なことですね。あまり無責任なことは言えませんが、子どもって褒めまくるとメチャ伸びますからね…。

<<参加した社員の感想>>

– 普段の仕事の話し合いなら絶対自分は言わないであろう、韓国アイドルの話題とかを自分がスルッと発言したことに驚きました。

– ポジティブコミュニケーションってブレスト以外の場でも大事だなと実感。

2、質より量を重視する(悩まない、考えすぎない)

2つめは、「量を重視する」ということです。これは一つめの「否定しない」と同じくらい重要なこと、というかセットなんです。両方とも共通している目的は、発言のハードルを下げること。「しっかり考えて発言しないといけない」「もしかしたら間違っているかもしれない」と考えると、もうポンポン発言することはできないですよね。「間違えるかもしれない」という恐怖というのは、相当なものなのです。

何故学校の授業で先生が促しても生徒は挙手をしないのかというと、もちろん照れもあるでしょうが「不正解を言って先生に否定されるor周囲の生徒に笑われる恐怖」が本質だと思います。まず一つめの「否定をしない」が徹底されることで、仮に間違ったことや不正解を言ってもバカにされたり笑われたりする恐怖が解消されます。そして「質より量の方が重要」と開始前に宣言されていることで、「間違っても良い」「見当違いでも良い」空気が醸成されていきます。そうすることで、参加者がとりあえず思ったことを発言できるモードになっていくのです。

ここで「質より量」を促すためには、ファシリテーターがとにかく話を参加者に振りまくって、「間違っても良いから思ったことバンバン言って!」「どんな些細なことでも良いから!」と言いまくることが大事です。自分がファシリテーターをやる場合は、何度も繰り返しこれを参加者に伝えます。そして、何か発言してくれたら「良いね!」「面白いね!」と肯定し、どんどん発言しやすい空気を作っていきます。

自分の感覚的には、5〜10分ほどファシリテーターが「質より量」を促す誘導をしたら、場は自然に回りだしてどんどん発言が増えていくようになります(もちろん、議論がある程度目指す方向に進むようにファシリテーターがうまく誘導することが必要です)

そして、「質より量」と促し続けて脊髄反射的な発言が増えてくると脳みそが直感的になってきます。直感ってバカにしたものじゃなくて、実は人間の脳みそが無意識に導きだした正解であることが多いんです。でも普段の生活の中では直感にはフタがされることが多くて、社会通念や場のヒエラルキーのような意識・常識が、直感を邪魔してしまうんです。

社会生活においていつ何時も常識より直感を優先しましょうということではないですが、「ブレスト」においては直感は非常に重要な感覚です。アイデアを出すとは、自分の意識外にある直感を如何に引き出すかというプロセスと言うこともできます。

<<参加した社員の感想>>

– ブレストの共通ルールとして「否定をしない」「質より量を出す」などを最初に打ち出していただいたこともあり、自分もそのスタンスでいれたし、相手もそのスタンスでいてくれているという安心感の中で発言ができた。

3、発言を組み合わせていく

そして「批判しない」「質より量」の2つを遵守してどんどん参加者の発言が増えていってからが「ブレスト」の真価。ここから「参加者のアイデアが組み合わされてもっと良いアイデアが生まれる」モードに突入していきます。

最初にブレスト実践講座を開催した時の事例を挙げますと、たまたまメンバーが全員サウナ好きだったため、「サウナに興味のないエレファント社員にサウナを好きになってもらうためにはどうすればいいか」をテーマにして話しました(こういうテーマでも良いんです)。そこで、最初にファシリテーターである自分から「サウナに限らず、知り合いに誘われて行ったら何かにハマった体験ってある?」と質問しました。

<<そこで出た参加者2人から>>

-「友達に誘われて全部道具とか交通手段とか用意してもらってサーフィンに行ったら楽しくて、サーフィンにハマった」

– 「ウニに苦手意識あったけど、知り合いに有名な寿司屋に連れて行ってもらって良いウニ食べたら美味しくて、それ以来ウニが好きになった」

というエピソードが出てきました。ここからファシリテーターである自分は、

– 「両方とも良いエピソードだね!まず友達や知り合いの誘導があったという口コミ効果が働いていることと、両方ともちゃんとお膳立てされていて「良い体験」が初体験となった点が共通しているよね」

という風にリアクション。そこから、ちゃんとお膳立てされた良い体験を一回すると好きになってハマったり、その後は自分の労力やお金がかかってもそれ以上の価値があると思えるようになる、それは「価値観の成功体験」と言えるんじゃないか…と話が即座に広がっていきました。

この「発言を組み合わせる」こそ、複数人で「ブレスト」という行為を行うことのメリットが大きく出ている点だと思います。自分一人では出てこないエピソードや意見が、発言のハードルが下げられてドンドン出てくることで、面白い組み合わせが生まれ、今まで見えなかったアイデアが生まれてきます。

この「組み合わせる」においてもファシリテーターの役割は大きいです。異なるエピソードの共通項を見つけること。一見近しいエピソードの差異を見つけること。そういう組み合わせを見つけ、話し、どんどん話を横へ上へ広げていくことでどんどんアイデアの種が見つかり、膨らんでいきます。

<<参加した社員の感想>>

– みんなからどんな考えが出るか面白いし、それが一気に膨らんでハマっていく感じは、学生時代のうちわのダベリにも通じる盛り上がりがあってメチャ楽しいです

4、ブレスト中は判断や結論を出さないようにする

そして最後に注意すべきポイントですが、この「ブレスト」の時間内で結論を出そうとしないことが重要です。

結論を導き出す際は、どうしても実現可能性やスケジュール、予算といった「現実的な要素」を強く意識せざるを得なくなってしまいます。「今日のブレスト1時間で、新製品の名称を決めましょう」と言ってしまうと、どうしても脳みそに現実というフィルターが強くかかり、自由な発想が制限されてしまいます。

自分の場合は「ブレスト」1時間の時間配分は下記のように想定しています。

– 0〜5分:「ブレスト」ルールの確認、本日のテーマ(課題)の共有
– 5〜10分:ちょっと遠回りな話題や時事ネタから話を始める(アイスブレイク)
– 10〜50分:テーマの本題にちょっとずつ近づいていくことを意識しながら発言を活発化させ、どんどん発言し、組み合わせてアイデアを広げる(40〜50分くらいで盛り上がりのピークが来ることが多いです)
– 50〜60分:ファシリテーターがここまでの話を整理してまとめ、ネクストアクションに繋げる

「ブレスト」のゴールを何に設定するかは、議題にもよるし、参加者のブレスト力にもよると思います。そこはケースバイケースで設定して良いポイントだと思います。

<参加者の感想>

– 企画が決まらなくて一人で悶々とする時間ってすごく無駄だなと思っていたので、時には周りを巻き込んで意見を聴きながらブレストしていくのはとても有効な方法だと思いました。

以上が「ブレスト」を行うときに必ず守るべき事前準備、そして実施中の4原則となります。

ただ「ブレスト」は有効なタイミングが結構限定的なものでもあります。

例えば、映像広告の提案書を作成するプロセスの中では、最初に企業や商品のリサーチを行い、基本的な情報や過去の広告を頭に入れてから提案の方向性・コンセプトを定めるタイミングで実施します。そこで「ブレスト」を行い出てきたたくさんのアイデアの種をディレクターやプロデューサーが膨らませていきます。または、ある程度登場人物設定などが固まったのちに、「このキャラクターが何をすると面白いか」のようなアイデアを考えるタイミングでも有効ですね。

ただ、ここまで座学で解説しても実際どう進めればいいのか、発言にどうリアクションをしたり話を広ればいいのか、イメージが湧かない方もいると思います。特に「結局、ファシリテーターってメッチャ難しくない!?」と感じられたかもしれません。確かにファシリテーターの力量は重要です。

後編につづく

後編では、「ブレスト」実践編と題して、実際に社内で行われた「ブレスト」の記録と実際の発言を用い、実際の「ブレスト」中の会話分析をいたいと思います。そこでファシリテーターはどうリアクションし、どう会話を広げていくのか? こちらの記事をご覧ください。

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この記事を書いた人

嶺隼樹
エレファントストーンのディレクターです。 Twitter:@junkimine

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