MARKETING
独自の視点で世界観をセルフプロデュース。「北欧、暮らしの道具店」の魅力に迫る
企業のYouTubeチャンネル開設が当たり前になっている昨今、その使い方も多様化しています。
動画広告や動画配信の市場が拡大する中で視聴者の目にとまるためには、企業のセールスポイントの強引なアピールや、直接的すぎる商品紹介は逆効果。他とは異なる新しい視点や斬新なアイデアこそが、動画プロモーションの成否を分ける重要なポイントです。
そこで今回は、「世界観を売る」ことで人気チャンネルとなっているECサイト「北欧、暮らしの道具店」の取り組みを詳しくご紹介します。
どんなチャンネル? 北欧、暮らしの道具店
【チャンネル開設日】
2011年10月2日
【登録者数】
49.7万人
【総再生回数】
約8203万回(2022年3月時)
【YouTubeの効果】
チャンネルスタートの2011年時では数億円だった売り上げが、2021年7月期では45億円を突破。
コンテンツの内容
自分らしい暮らし作りを支える生活道具や、日々のなかでささやかな非日常を楽しむ北欧雑貨やファッション、小物などをEC販売している「北欧、暮らしの道具店」。
そのYouTubeチャンネルの特徴は、商品を売るのではなく、多様な人々の暮らしを届けながら独自の世界観を発信し続けていること。「フィットする、暮らしつくろう」をコンセプトに、ルームツアー、モーニングルーティン、料理レシピ、海外の暮らしの模様、短編ドラマなど、バリエーション豊かな動画コンテンツを公開しています。
暮らしに関わるあらゆるモノ・コトを網羅。世界観を構築する5つのコンテンツ
「北欧、暮らしの道具店」のYouTubeチャンネルでは、いったいどのような取り組みが行われているのか? 結論からお伝えしますと、チャンネルを運営している「クラシコム」では、インテリアや雑貨にとどまらず、生活の主役であるひとの魅力にフォーカスしながら、ファッション、映画、音楽など私たちの暮らしを取り巻くすべてのモノ・コトを取り込んだコンテンツ作りを行なっています。
以下では、実際に動画を視聴しながら、その唯一無二の世界観を多角的に構成している5つのコンテンツを具体的に解説していきます。
きめ細やかな気配り光る。ルームツアー
アイテムは素敵だけど、使い方やコーディネートが分からず購入を控えてしまった経験って誰もが持っていますよね。ルームツアー動画には、商品購入後のリアルな生活風景を提示することで、購買機会の損失を減少させる効果があります。
「北欧、暮らしの道具店」では、スタッフの自宅をルームツアーで一般公開。これほど嫌味のない自社商品のPRも珍しいですよね。
ルームツアー動画は数あれど、キッチン、ダイニング、リビングと生活空間によって動画を細分化するアイデアも他ではあまり見られないものです。
動画に登場するアイテムはすべてホームページでリスト化。概要欄にそのURLをリンクすることで視聴者の購買意欲を高めるひと手間も見過ごせないチェックポイント。忘れずに真似したいところです。
人と暮らしの魅力いっぱい。モーニングルーティン
有名YouTuberや芸能人の暮らしぶりをのぞき見出来ることでYouTubeの人気コンテンツとなっている「モーニングルーティン動画」。
「北欧、暮らしの道具店」では、有名無名を問わずさまざまな人の朝時間にフォーカスすることで、日々の暮らしのヒントとなる情報を発信しています。
主婦歴42年と大ベテランの方の朝習慣に密着した一本。ナチュラルで温もりのあるインテリアに囲まれながら無駄のない時間を過ごされていますよね。
「丁寧な暮らし」を絵に描いたようなモーニングルーティンを実践されていて、とても憧れます。
こちらの動画では、花屋をされているフローリスト(園芸愛好家)さんの朝習慣をおしゃれに紹介。映像の中で自社商品が登場することは一切なく、あくまでも人と暮らしの魅力を伝えることに特化しています。
この投稿をInstagramで見る
Instagramでは30秒のショートバージョンを公開。世界観が一目で伝わるサムネのカットも計算され尽くしています。
細部にあふれる美意識。レシピ紹介Vlog
ショートフィルムのように洗練されたカメラワークで料理のレシピを紹介するVlog『わたしの好きな時間』シリーズ。
音楽、テロップ、光の陰影、タイトル、ロゴマークと言った作品を構成する細部にまで美意識が浸透しており、「北欧、暮らしの道具店」ならではの世界観を築き上げています。
プリンのレシピは料理家の中川たまさんが監修。動画に登場したお皿も掲載されたリンク先に飛ぶことですぐに購入することができます。
ずっと作ってみたかった参鶏湯。意外にも準備が少なく、煮込むだけで簡単でした。煮込みはじっくりことこと、その間にお掃除や読書をすれば有意義な気分になれそう📚季節の変わり目、じんわりあたたまる参鶏湯に心も体も満たされます。#わたしの好きな時間 動画最新話https://t.co/c0tWPjURu3 pic.twitter.com/784lramHMQ
— 北欧、暮らしの道具店 (@hokuoh_kurashi) March 1, 2022
最新話は、公開数日で五万回再生に近づく人気ぶり。Twitterなど他のSNSとのシームレスな連動は基本事項ではありますが、効果覿面です。
団地を舞台に音楽を主役に。新感覚の料理ドラマ
上のVlogによる料理レシピの発展系とも言えるのが、こちらの音楽を主役とした料理ドラマです。
一人暮らしの団地を舞台に、美味しい料理×モダンな音楽が主役の新感覚なショートドラマをシリーズで公開。全8話の総視聴回数は750万回を超えています。
また、クラシコムでは独自にセレクトした音楽のプレイリストをSpotifyでも公開し、2021年6月にはオリジナル映画も上映。
インテリア雑貨が主体のECサイトでありながら、グルメ、ファッション、音楽を取り込みながら日々の暮らしをトータルでプロデュースするアイデアは素晴らしいの一言。今後のさらなる進展にも大注目です。
静かに胸を打つ。暮らしのドキュメンタリー
日々の暮らしに密着したドキュメンタリー作品を定期的に公開。
北欧テイストで統一されたインテリアとともに、家庭料理や暮らしの知恵を静謐な映像で情緒たっぷりに紹介しています。
主人公は、先に紹介したモーニングルーティンにも登場している方です。シリーズ「うんともすんとも日和」では、ご飯屋や雑貨店に店主、主婦、女優などこれまで30人以上の方が出演していますが、どの回でも共通した雰囲気を感じることができるのは、一貫した美意識や世界観あってこそのこと。
ひとりの人物の魅力を多様な視点から捉えて複数のコンテンツを作成し、互いに連動させる手法は非常に参考になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、ECサイトでありながら直接的な商品紹介を行わず人気チャンネルとなっている「北欧、暮らしの道具店」の取り組みについてご紹介いたしました。
・ルームツアー
・モーニングルーティン
・Vlog
・料理ドラマ
・暮らしのドキュメンタリー
紹介した上の5つのコンテンツには、インテリア、雑貨、ファッション、映画、音楽と私たちの暮らしを彩るすべてのモノ・コトが宝石箱のように詰まっています。
他にも北欧やフランスで暮らす人の日常を描いた作品、短編ドラマなど他にはないユニークな企画が盛りだくさんの「北欧、暮らしの道具店」。世界観をセルフプロデュースするためのエッセンスが凝縮されたほんとうに素敵なチャンネルなので、ぜひ視聴してみてくださいね。
今後も映像づくりのロールモデルになるようなYouTubeチャンネルを見つけ次第、定期的にお届けしていくつもりです。お楽しみに!