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グッと提案が良くなる!映像制作における与件整理&ヒアリング術

グッと提案が良くなる!映像制作における与件整理&ヒアリング術

エレファントストーンのプロデューサー・相場です。

映像制作の工程において一番最初にぶつかる「与件整理」ってとても大事ですよね。

正しく与件が整理されていると、コンペの場合は筋の良い提案につながり勝率アップにつながりますし、制作チーム内での認識合わせも円滑になります。

逆にクライアントのやりたいことやイメージを正しく汲み取れず与件が整理できていないと、そもそも受注ができませんし、受注出来てもクライアントは十分に満足できないままなんとなく終了。その後連絡は取れず…といった悲しい結末を迎えてしまうという可能性も出てきます。

そんな事態にならないよう、筋の良い与件整理を行うにはクライアントへのヒアリングの質を高めることが肝要です。

この記事ではヒアリングの質を高め、スッキリわかりやすい与件整理を実現するための基本的なポイントをご紹介します。与件整理だけに限らず、プレゼンテーションにも使える汎用的なポイントです。

「何が言いたいのかわからない」「つまりどういうこと?」「それはなんで?」と言われることが減るかもしれません。ぜひご参考ください!

具体的なシチュエーションで与件整理を考えてみよう

今回は、与件整理が必要な具体的なシチュエーションを元に最終的な結論(=提案シナリオ)への導き方を考えていきます。

ある日、あなた宛にこんなメールが届きました。

なかなか散らかった内容ですね。笑
こんなご相談に対して、どんなご提案をすると受注に繋がりそうでしょうか?

次の2つポイントを意識してヒアリングを行い、与件の整理をしてみましょう。

ポイント①ラダーアップ/ラダーダウン

ラダーアップ/ラダーダウンとは、キーワードやフレーズに対してラダー(はしご)をかけるようにして、思考を上り下りする手法です。上り下りとはつまり、抽象化と具体化を繰り返すということです。

抽象化していくことをラダーアップ、具体化していくことをラダーダウンと言います。表面的なフレーズや文章だけでは知り得ない全体像や背景や、詳細なイメージを掴むことができます。

ラダーアップは「それは何故ですか?」、ラダーダウンは「具体的には?」「つまりは?」という問いかけをすると良いでしょう。

本ケースのメールのこの部分で考えると、

見る人が飽きない今風な映像にしたいです。

ラダーアップ:「それは何故ですか?」

“式典後全社員にアンケートを取るんですが、映像の印象もアンケート項目に入る予定でして、あんまり印象に残らない映像だとバツが悪くて…”

ラダーダウン:「どんな映像だと印象に残りそうというイメージはありますか?」

“なんとなくですけど、docomoのahamoのCMわかりますか? あんな感じで人が登場しながら周りをカラフルな図形が動く感じにしたいんですよね。賑やかなので印象に残りやすいと思うんです。”

以下のメールの部分に対しても、

B社は会社なのでちょっと安心かなぁと思いますが、業界内でどんな評判の会社さんなのでしょうか?

ラダーアップ:「どうして安心だと思いましたか?」

“会社さんなので連絡が早くて安心感がありました。映像が初めてなのでわかりやすく説明してくれるのも嬉しかったです。”

ラダーアップ:「どんな評判か気になる理由ってなんでしょうか?」

“B社さんって人当たりは良さそうなんですけど、いまいち作品がパッとしないというか、イメージに近い映像実績がなくて。今回は賑やかな映像にしたいので、その辺りの作品は制作が可能なのかなって気になりました。”

ラダーダウン:「具体的にはどんな会社さんだと安心だと感じますか?」

“映像制作を依頼するのが初めてで不安なので、細かく連絡をとってほしいです。どんな工程になるのかも予め知りたいです。失敗できないので…。”

といった具合に、この方法を使えば与件整理にあたって必要な情報を掴みやすくなるでしょう。

ポイント②「ピラミッドストラクチャー」

情報の深掘りができたら、情報を構造化しましょう。構造化することで情報がスッキリまとまり、第三者でもすぐ状況が理解できる与件整理と提案シナリオが完成します。

まずはメールとポイント①のヒアリングで入手した内容を箇条書きで整理をしてみましょう。ここで重要なことは「事実」を列挙することで、“こうだろう”という「解釈」は入れないことです。

<手に入れた情報>

こんな感じでしょうか。ただ、これではまだ情報を羅列しただけです。ここから情報を整理をして結論(=提案シナリオ)を導き出します。その時の考え方のヒントになるのが「ピラミッドストラクチャー」です。

ピラミッドストラクチャーとは、あなた自身が伝えたい「結論」と「その根拠」をピラミッド状に図式化するフレームワークだ。別名「ピラミッド構造」あるいは「ピラミッド原則」とも呼ばれる。

ある結論が「論理的に正しい」ことを説明するためには、それを証明する複数の根拠が必要になる。これを図で表現すると、結論を頂点として複数の根拠が下部に配置されることになるため、必然的にピラミッド構造になる。これが「ピラミッドストラクチャー」と呼ばれるゆえんだ。

参考:https://www.missiondrivenbrand.jp/entry/thinking_pyramidstructure

端的にいうと、結論を支える骨組みとなる根拠を作って、その根拠を肉付けする情報を揃えていくということです。それではピラミッドストラクチャーを作るために、上記の情報をあらためて整理してみましょう。

今回は、以下の通り、
赤字映像制作進行上のコミニュケーションやスケジュールに関する情報
青字クリエイティブに関する情報
緑字費用に関する情報
として整理しました。「パオンさんの上司がいう“コスパ”とは何か?」や「AとBに対しての見積もりの印象」についてラダーアップ/ラダーダウンができるとより解像度が上がりそうですね。

まだ情報取得の余地がありそうな場合は、この段階でポイント①に戻って再度深掘りしていくのも良いでしょう。

では、これ以上情報の入手ができない、かつ自分もB社と同じかそれ以上の見積になりそうな場合、受注を勝ち取るためにあなたは何を結論付けて提案をしますか?

パオンさんに納得感をもってもらえる提案をするため、次はピラミッドストラクチャーにおける「根拠」と「結論」のパーツを作りましょう。情報を整理して眺めると、結論(=提案シナリオ)を導く根拠(=重視すべきポイント)となりそうな事柄が2つ想起できます。

1つ目は、赤字にあたるコミュニケーションについてです。

パオンさんは映像制作が初めてで失敗ができないので、丁寧で密な対応をしてくれる制作パートナーを探していそうです。パオンさんはかなり心配性なのかも知れません。提案時に制作スケジュール表も添えてあげると安心感が高まりそうです。

もう1つは青字の映像制作のクオリティの部分です。ある程度作りたい映像の方向性のイメージがあるので、それに対応できそうな制作パートナーを求めている様子ですね。自社における類似の制作事例を提示すると効果的そうです。

上記のポイントをざっとまとめると、こんなイメージになります。

実際は根拠を肉付けする情報の取捨選択や重要度の検討をする必要があるのですが、このあたりの精度は経験を積むことで高まっていくところだと思うので、今はあまり気にせず進みましょう。

さて、ここで競合の状況を星取表で整理すると、

クリエイターAさん:コミュニケーション×、クオリティ○、見積○
他社B:コミュニケーション○、クオリティ△?、見積×

といった形になります。競合の状況を踏まえると、自社でどんな提案をするべきか結論(=提案シナリオ)が見えそうです。

結論(=提案シナリオ):
「弊社には過去に制作した類似事例があるので、そちらと同クオリティを担保した映像制作が可能です。また、実際の制作の際は類似事例と同じスタッフをアサインします。ご納期も問題なく、開始前に納品までの全体スケジュールをご案内いたします。また打ち合わせ回数も上限を設けておりませんので、ご不安な点があればすぐにお打ち合わせしましょう。」

実現可能かはさておき…今回の場合、上記のような根拠を持った結論が導き出せれば競合に勝って受注できそうですよね。

まとめ

ご紹介した2つのポイントは基本的ながらも汎用性が高い手法です。映像の現場のみならず、リサーチからプレゼンまで、ビジネスのあらゆるシーンで活躍するので身に付けておくと強い味方になります。

「ちょっと何をするべきか分からなくなっちゃったな〜」という状況に直面した時はぜひこの方法を思い出して、活用してみてください!


 

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この記事を書いた人

相場和貴
エレファントストーンのプロデューサー

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