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筋書きのないドラマをカメラにおさめる「スポーツドキュメンタリー」傑作選

筋書きのないドラマをカメラにおさめる「スポーツドキュメンタリー」傑作選

近年のスポーツシーンでは、密着カメラが入りチームの赤裸々な様子をおさめて公開することが多くなっています。

スポーツをリアルタイムに追うということは、未来にあたる結果はもちろんわかりません。それでも、表舞台には見えないところでの選手同士の熱いやり取りまで見られるリアルな迫力があり、密着型スポーツドキュメンタリーは人気があります。

今回はスポーツドキュメンタリーの傑作選をお届けします。

「六月の勝利の歌を忘れない 」

日本でのスポーツ密着ドキュメンタリーの先駆けともいえるのが、2002年のサッカー・日韓ワールドカップ日本代表に密着した『六月の勝利の歌を忘れない 』です。『スワロウテイル』などで知られる映画監督の岩井俊二氏が監督・編集を手掛けていることでも話題になったのですが、驚くべくはその内容です。

通常ならファンの知るところでない、さらには新聞やテレビも入らないような試合後のロッカールームでの選手たちやチームの懇親会のようなオフショットシーンが映し出されていたからです。

当時のサッカー日本代表は初めての自国開催でしたが、まだワールドカップで一つも勝利したことがなく、もちろん決勝トーナメントにも進んだことはありませんでした。ということは、内容は良いことや喜ばしいことばかりではありません。

フランス人のフィリップ・トルシエ監督(当時)は激情家でも知られ、情熱的で選手とは熱いコミュニケーションを図ります。そうした生の空気感が伝わったことも評価につながり、Vol.1、2ともにAmazonでは★4.6、4.8と高得点を記録しています。

『オール・オア・ナッシング~ニュージーランドオールブラックスの変革~』

ラグビーの世界一を義務付けられたニュージーランドオールブラックスの話。2017年シーズンのラグビーオールブラックスの戦いぶりを描いています。『オール・オア・ナッシング』はスポーツのドキュメンタリーとしてAmazon Prime Videoオリジナル作品として作成・配信されてきました。しかし最初のうちはNFL物が多くラグビーが題材になるのははじめてのことでした。

Prime Videoの概要欄では、

「世界スポーツ史上、最多勝を誇るチーム、ラグビーニュージーランド代表オールブラックス。その秘密に包まれた舞台裏と困難なシーズンに直面する彼らの姿を初めてカメラが捉えた。肉体的に過酷なラグビーにおいて、伝統と100年にわたる覇権を固守するため挑戦を続けるチームを4か月以上追った。」

引用:オール・オア・ナッシング~ニュージーランド オールブラックスの変革

とあります通り、シーズンを通してチームに追った長期ドキュメンタリーです。

全6話でAmazonの評価は★4.6と高評価を得ました。エピソードごとに注目されるべく主人公が変わり、バリエーションに富んだ展開があります。選手やチームだけではなく、その周りや家族までが丁寧に描かれています。

『Formula 1: 栄光のグランプリ』

スポーツドキュメンタリーに力を入れて成功を収めているのが、Netflixです。

2023年には、サッカーカタールワールドカップ、ツール・ド・フランス2022、シックス・ネイションズ、Quarterback (原題)のドキュメンタリー配信が決まるなどサッカー、自転車、ラグビー、NFLとスポーツドキュメンタリーを数多く制作して配信しています。

その中で最も成功しているのが、『Formula 1: 栄光のグランプリ』です。2019年に配信を開始し、2023年にはシーズン5を放映中。名前の通りF1の過酷なシーズンを追ったスポーツドキュメンタリーです。

シーズンを追って、チームを決めずに全体の中から面白いエピソードをドキュメンタリーとして配信しています。と言っても広く浅くではなく、サーキット内外に関わらずチーム内外の様子、人間関係といったところにまでカメラが入り込んでいます。各シーズン10話ですから、2022年までにすでに40話が配信されています。

F1自体は過去に地上波で放映が行われていた時代から比べると有料放送でないと放映を見ることができない状態が続いているだけに、ドキュメンタリーから復活を期したいところですね。

まとめ

スポーツドキュメンタリーの良いところは、予備知識なしで誰でも見られるという点です。そのスポーツをたとえ知らない・ルールがわからないとしても、人間ドラマを楽しめます。再現ドラマやフィクションにはないノンフィクションとしての良さ、しかもそれが世界最高峰の舞台や世界最強のチームだったら、そこには一流の選手たちが織り成すドラマがあります。

まだまだここに紹介しきれていないスポーツドキュメンタリーの傑作はたくさんあります。また、いずれお届けしたいと思います。

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊するも現在は自粛中。

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