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インハウスでの映像制作における人材育成とは?【映像制作インハウス化 成功への道 #2 】

インハウスでの映像制作における人材育成とは?【映像制作インハウス化 成功への道 #2 】

場所:アネスト岩田株式会社 AAAstudio(スリーエースタジオ)

こんにちは!エレファントストーン ディレクターの嶺です。

昨今、映像制作業務を外注せず、社内で部署を作りインハウス化(内製化)を行う企業が増えてきています。しかし、いざやろうとしてみてもどこから始めればいいのか分からなかったり、部署を作って実践してみても上手く行かなかったりというケースも少なくないようです。

今回、エレファントストーンがこれまで複数の映像制作をさせていただいたアネスト岩田株式会社様(以下、アネスト岩田)がインハウス化を行ったとのお話を聞き、弊社プロデューサーの美谷島とディレクターの嶺による担当者様へのインタビューを実現。実際にインハウス化を行った方々の貴重な生の声を特集として3記事にわたりお届けします!

特集第二弾となる今回は、制作を担当されているインキュベーションチームの皆さんにフォーカスし、技術習得の方法や人材育成についてお伺いしていきます。

小針さん/アネスト岩田株式会社 インキュベーションチーム
アネスト岩田で映像制作内製化を行うインキュベーションチームチームリーダー。スタジオの立ち上げや現在のスタジオの責任者を務める。

島崎さん/アネスト岩田株式会社 インキュベーションチーム
アネスト岩田のインキュベーションチーム。スタジオ設立当初から映像制作と写真制作を担当。

山中さん/アネスト岩田株式会社 インキュベーションチーム
アネスト岩田のインキュベーションチーム。1年前に異動し、動画編集や写真撮影、映像ウェビナーなどを制作を担当。

習得に近道なし!映像制作スキルをどのように向上させるのか

「皆さん元々映像や写真にプライベートで携わっていたとのお話を伺って、制作が好きという熱量が大事だと改めて感じました。実際にチームとしてどのようにスキルの習得を目指されているんでしょうか?」

小針「自分たちもこの仕事をやっていて、映像や写真作りが好きじゃなきゃこの業務は成立しないなと思うんですよ。例えばエレファントストーンさんみたいないわゆるクリエイティブを仕事にしている会社さんって、社員さんはクリエイティブが好きだから仕事として選んでるじゃないですか。

で、インハウス化はそれをメーカーの社内で再現しようとしているわけで。自分たちもやる以上は、カメラが好きだったり編集が好きだったりしないと続けられないし、成長できない。やはり制作へのモチベーションが我々にあったのが大きなポイントだと思ってます。」

(アネスト岩田 小針さん)

小針「もう一つは、制作を兼業じゃなくて専業としたことですよね。やはり、映像制作って学習コストがすごく高いんですよ…。頭の中にやりたいイメージができても、それを形として落とし込むのがとても難しいんですね。本当はこういう表現がしたいのにできないとか、そこが初めに苦しいと感じるギャップだと思うんです。

それができるようになるまで勉強や練習をするのに時間がかかるので、まず専業じゃなければその時間も確保できない。当然、正直1日8時間の仕事の中だけでは限界もある。練習や勉強だけでアウトプットしない訳にもいかない。

そして、新しい知識をどう吸収したり練習するかというと、やっぱりプライベートの時間もあるんですよね。自分たちは3人ともプライベートで映像や写真を撮っていたので、例えば音楽のライブを撮ることで練習や勉強になっている。だからプライベートの時間も成長しているんですよね。そして、それが好きなことをやっているという感覚なので苦ではない。だから成立したところはあると思います。」

美谷島「それを自然にできていてるのが素晴らしいですね…!ちなみにプライベートの時間で学ばれている部分はもちろんあると思うのですが、このスタジオを作るにあたって、例えば自分たちがもともと使っていたわけではないような機材も選んで購入していく必要があると思うのですが、そういう機材選定や使い方の知識の吸収ってのはどういう風にされたのですか?」

小針「機材を買うという点でいうと、私は承認決済を行う側なんですが、必要になったら都度買っていくスタイルで少しずつ増やしてきました。『こういう映像を作らなきゃいけなくなった。だからこういう機材が必要だな』ってなると、Amazonで金額を調べてポチっています。だからプロ用機材というよりは、民生用機材のようなものも少なくないです。

プロの制作会社さんに相談して選んでくれる機材って確かに良いものなんですけど、自分たちが使えないぐらいのオーバースペックだったりとか、価格も高かったりするので、結局使われなかったり満足に使いきれないみたいなことが起きたと思うんです。
自分たちは必要に駆られたらAmazonですぐ買うという形で、今ある機材は全部ちゃんと使ってるものですし、使えないものがないという状態です。」

「買ったけど思ったのと違って使えなかったなどの失敗はなかったんでしょうか?」

小針「買ったけど使えなかったというのは思い浮かばないですね。」

「Amazonでポチポチ購入して外れないって、その打率の高さって簡単じゃないと思うんですが…。」

島崎「機材選定は、本当に買うとなる前にはリサーチしたり、近くに使っている人がいたらちょっとお話を聞きに行ったりっていうのはしっかりやっています。実際に現場でどう運用されているのかを聞いた上で可否を判断するというのは取り入れてますね。」

「プロ用の撮影機材屋に行ってみよう、みたいなことは思わなかったんですか?」

島崎「一部はそういうものもありますね。プロ用の機材を取り扱っているところに通って店員さんにお話を聞いたことももちろんありました。あと、自分たちは照明でも中国製の安価な機材とかも気にせず使います。Amazonで安いものをまず買って使ってみて、それで良ければそのまま使うし、だめだったら買い直します。」

「ちなみに、もともと皆さん一定の知識があったとは思うのですが、コンサルティングというか、スタジオ運用をいわゆるその道のプロに最初に相談しようという発想はなかったんですか?」

小針「そういう意味では無かったんですが…言っていいのかあまり分からないんですけど、どうしても自分達だけでできないことや習得できない新しいことってあるじゃないですか。

例えばウェビナーでいうと、オンラインとリアルの同時開催のウェビナーで、リアルではPA機器・音響機器を使って、プラス配信もするってなれば、いろんなケアが必要になってきて一気に難易度が上がりますよね。実際にそういうことをやる機会があったんですね。

その時は、外部のプロフェッショナルの会社さんにお願いしてやってもらうんですけど、自分たちとしては『全部そのノウハウを盗もう!』という気持ちで横から見て勉強させてもらいました。お仕事のご相談を受けてもらえなくなっちゃうからあまり言いにくいんですけれども(笑)。どんな機材を使っているのかとか、どういう操作をしているのかとか。

その次の日にはもう全部機材を欲しい物リストにずらっと出して…ということもありましたね。そういう経験も糧にして、一段ずつスキルを上げていっているというか、できることの幅を広げていっていますね。」

「いや、その学習意欲は本当にすごいと思います…!われわれ映像のプロからするとちょっと恐ろしいですが(笑)」

全企業共通の悩み。どうやって人材を育てるか?

「僕からぜひ聞いてみたいのは、今後のリソース面、人材採用や教育についてです。
今インキュベーションチームに所属されている3人は元々映像や写真をプライベートでやられていたと思うのですが、今後の部署の運用を考えると新しい人を配属したり、新メンバーを教育したりということが発生してくると思います。今後の構想があれば教えていただけますか?」

小針「まさに、それがすごく課題に感じているところです。正直、現時点でリソースがもう十分では無いんですね。理想を言うと、もっと早いペースでコンテンツをどんどん作ってアップしていきたいんです。

例えば、トラブルシューティングの動画1つだけをアップしても、わざわざそのチャンネルを見る方は少ないと思います。コンテンツの網羅性を高めるために、スタートダッシュとしてスピード感を持ってコンテンツを揃えていきたいのですが、まだそこまで手が付けられていない状態です。」

「チャンネル内のコンテンツを充実させることは確かに大事ですよね。解決策として何か検討されていることはありますか?」

小針「解決策は色々あると思うのですが、プロのクリエイターさんを派遣してもらう人材派遣の会社さんもあるので、そういう方に来ていただいて制作リソースを補充すると同時に、実務の中で私たちに技術を教えるOJTとなってもらい、私たち自身のスキルも伸ばしていくのがいいのかな…と検討しています。」

(アネスト岩田株式会社 山中さん)

山中「今の自分達には、CGとかモーショングラフィックに対するスキルが足りないと感じています。撮影や編集のスキルは比較的カバーできているのですが、部分的にCGアニメーションが必要な時や、オープニングタイトルに凝ったモーショングラフィックを使いたいと思っても作れないので、そこはまだまだ弱いところです。そういった人材を補うにしても、それこそ専門学校や仕事で数年間勉強してきたみたいな人がいないと、インハウスとしては成果が出るまで時間がかかりすぎると思っています。」

「確かに、教えてくれる師匠がいないって良い面と悪い面ってありますよね。自分たちで試行錯誤するってとても大事だしそれゆえの成長があるんですけど、一定以上のクオリティを目指した時に限界を感じる。レベルの高い人からビシバシしごかれる、いわゆる徒弟的な関係にもやっぱり意味があるんですよね。

そして、インハウス化で立ち上げたばかりの組織では徒弟的な関係が生まれづらいですよね。派遣型クリエイターをOJTにするというアイデアは、フェーズが進んでいる今の皆さんだからこそのものですね。」

小針「今は何か学びたいことがあるとYouTubeなどで調べているんですけど、もし隣の席にプロのクリエイターがいたらわからないことがあってもちょっと聞いてすぐに落とし込める。それだけで時短になって、スキルも上がっていくと思います。」

「それこそOJTとして隣にプロがいてくれたら心強いですよね。」

小針「映像制作スクールのような集合教育で体系的に学ぶことももちろん必要だとは思うんですけど、私たちインハウスで制作しているメンバーとプロのクリエイターの違うところって、目的から逆算して一番効率的な方法でやるという制作に対する優先度というか、基本姿勢だと思うんです。それだったらOJT形式で、自分たちがよく使うような表現や技術だけを効率的に学んで身につけていく形がいいのかなと考えています。

また、その時代によって求められるクリエイティブの形も会社の方針も変わっていくと思います。必要な施術が写真なのか動画なのかCGなのか…そこをぐるぐる変えながら吸収していくスタイルがメーカーのインハウス制作の最適解なのかなと今は考えているところですね。」

美谷島「なるほど。確かに先ほど網羅性の話でもありましたが、社内でスピーディーにたくさんの映像を制作していくとなると、制作会社以上に効率が大事というのはすごく納得感があります。」

小針「どこまで自分たちでやって何を外注すべきかの判断も難しいなと感じています。ここは外注したほうが安いっていう損益分岐点があるはずなので、費用対効果はすごく考えます。ただ、その分岐点はもうちょっと高いところにあるんじゃないのかなと思っていて、今はまず社内メンバーのスキルを上げていく方向で考えていますね。

逆にお伺いしたいんですが、エレファントストーンさんは2011年に設立されてずっと映像制作をされている訳ですよね。何を自分たちでやって、何を外注するかどういう基準で判断されているんですか?」

美谷島「そこは私たちエレファントストーンも同じような考え方です。すごいスピードで新しい技術が出てきて、お客様のご要望も多様化・細分化している中で、移り変わるニーズに対応していかなければならないし、自分たちだけでは習得にもマネタイズにも限界があると感じています。

弊社にはカメラを回して撮影できるディレクターもいればモーショングラフィックができるエディターもいて、自分たちの力だけでもある程度のジャンルは制作できるのですが、やっぱり技能の専門分野って細分化されていますよね。なので3DCGや建築のCADデータを扱う際は専門の外部パートナーに依頼したり、映画のシナリオを作る際はシナリオライターさんの力を借りたりと、いろいろな分野のパートナー企業やフリーランスの方とチームを築き、幅を広げていっています。

正直そうしないと生き残るのは難しいなと感じますし、5年後、10年後、会社として価値を発揮し続けるのって生半可なことじゃないですよね。」

「同時にエレファントストーンならではの映像制作の考え方やノウハウがあって、そこは軸として譲らないし外注もできないものとしてあり続けていて、今はそれを深掘りして明確な形にしていっているフェーズですね。」

まとめ

特集第二弾の今回は、インキュベーションチームの皆さんにフォーカスして、スキルアップに大切なことや今後の人材育成についてお伺いしました。

特集ラストとなる第三弾では、今アネスト岩田さんが考える企業がインハウス化を行う上で意識すべきポイントを聞いていきます。次回もお楽しみに!

“映像制作インハウス化 成功への道”シリーズはこちらからご覧ください!

第一弾:BtoBメーカーのアネスト岩田がインハウスを始めた経緯【映像制作インハウス化 成功への道 #1 】
第三弾:実践企業に聞く、メーカー企業がインハウス制作を成功させるためのポイント【映像制作インハウス化 成功への道 #3】

対談の様子はアネスト岩田さんのYouTubeチャンネルでも公開中です!

この記事を書いた人

嶺隼樹
エレファントストーンのディレクター / マネージャー Twitter:@junkimine

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