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BtoBメーカーのアネスト岩田がインハウスで映像制作を始めた理由【映像制作インハウス化 成功への道 #1 】

BtoBメーカーのアネスト岩田がインハウスで映像制作を始めた理由【映像制作インハウス化 成功への道 #1 】

写真左から嶺・美谷島(エレファントストーン)、山中さん・島崎さん・小針さん(アネスト岩田)

こんにちは!エレファントストーン ディレクターの嶺です。

昨今、映像制作業務を外注せず、社内で部署を作りインハウス化(内製化)を行う企業が増えてきています。しかし、いざやろうとしてみてもどこから始めればいいのか分からなかったり、部署を作って実践してみても上手く行かなかったりというケースも少なくないようです。

今回、エレファントストーンがこれまで複数の映像制作をさせていただいたアネスト岩田株式会社様(以下、アネスト岩田)がインハウス化を行ったとのお話を聞き、弊社プロデューサーの美谷島とディレクターの嶺による担当者様へのインタビューを実現。そして、お話から見えてきたのは、企業としての決断力と徹底的にやりきる力の凄さです。実際にインハウス化を行った方々の貴重な生の声を特集として3記事にわたりお届けします。

小針さん/アネスト岩田インキュベーションチーム
アネスト岩田で映像制作内製化を行うインキュベーションチームチームリーダー。スタジオの立ち上げや現在のスタジオの責任者を務める。

島崎さん/アネスト岩田 インキュベーションチーム
アネスト岩田のインキュベーションチーム。スタジオ設立当初から映像制作と写真制作を担当。

山中さん/アネスト岩田インキュベーションチーム
アネスト岩田のインキュベーションチーム。1年前に異動し、動画編集や写真撮影、映像ウェビナーなどを制作を担当。

対談の様子はアネスト岩田さんのYouTubeチャンネルでも公開中です!

インハウスで実際に制作しているコンテンツは?

「2018年にアネスト岩田さんのコーポレートムービーを制作してから弊社でもさまざまな映像を制作させていただいていますが、今どういった映像をインハウス化して制作されているのでしょうか?」

(アネスト岩田株式会社 島崎さん)

島崎私たちの会社は、コンプレッサという空気を圧縮したりする主に工場で使われる機器と、塗装に使用するスプレーガンという製品を製造するBtoBのメーカーで、世界20ヵ国以上に拠点のあるグローバル企業でもあります。

今インハウス化して行っている映像制作としては、主に社内向け用途と社外向け用途で大別されています。社内向けの制作としては、社内向けの技術講習会やさまざまな発表、またウェビナー開催などがあります。特に、ウェビナーはコンテンツが豊富で、社内の要望も非常に強いため数多く制作されています。それと人事系の発表だったりとかというのもあります。

社外向けですとECサイト用の写真撮影や、ウェビナーでの製品紹介、それと決算説明事業報告動画のようなものも作っています。本数として多いのはウェビナーですね。」

美谷島「インキュベーションチームの皆さんは毎日映像制作で稼働されているんですか?」

山中「ほぼそうですね。撮影は2,3日に一回の頻度です。編集は何かしらの形でほぼ毎日していて、もう稼働率としてはMAXです。」

小針「3人だとちょっと人数が足りていないぐらいですね…。」

「逆に、社内ではできなくて、僕たちみたいな外部の制作会社に外注するのはどういうケースなのでしょうか?」

小針「やっぱり製品写真でも、toC向けで高い意匠性が求められるようなものは外部にお願いしています。例えばセットを組んだりするようなものです。我々のメインの商材であるハンドスプレーガンって本当に職人さんの道具で、デザインももともと車のデザイナーをやっている方にお願いしていて、こだわって製造しているからこそ、それを表現しなくちゃいけない。そして、金属なので反射で光ってしまい、現状社内で制作するのは難しいんですよね。」

「商品に映る光の反射のコントロールは非常に難しい専門技術ですね。本来は暗幕で覆って余計なものが金属やガラスの面に映り込んで反射しないようにコントロールして…。」

小針「工業用のラインの中で使っている場面みたいなのは自分たちで撮るんですけどね。そこは目的から逆算して、この用途ではどういうものが求められるのかを考えて、内製するか外注するか判断しています。映像も同じくですね。」

「なるほど。ちなみに編集に関して、例えばテロップのデザインとかはどうされていますか?」

島崎「基本的に独学で勉強しながらやっています。」

「どういう作り方をしているんですか?Premiere Pro(映像編集ソフトウェア)上で作っているんですか?それともPhotoshopやIllustrator(デザイン専門のソフトウェア)を使っているんですか?」

島崎「基本的にはPremiere Pro上でできる範囲で作っちゃっています。凝ったテロップも素敵ではあるんですが、工数少なめで出来ることを基本としているので。ただ目的として、凝った演出が必要と判断すれば、外注することもあります。」

インハウス化への第一歩。何からどう着手したのか?

「そもそもアネスト岩田さんが映像制作をインハウス化しようと始められた経緯を教えていただけますか?」

小針「われわれBtoBの業界でも、オンラインで商品を販売したりウェビナーを開催したりするのが当たり前になり、商品の主戦場がリアルからデジタルに変わる波が来ていました。当時の社長の壺田が『今後デジタルコンテンツは必須であろう』と考え、やはりスピードを求めると外注するよりも、インハウスでコンテンツを作っていくのが一番良いのではないかと考えたんです。

そして社内に撮影や編集ができるスタジオを作ろうということで、プロジェクトがスタートしました。」

「一からスタジオを立ち上げるのって正直手探りだったんじゃないかなと思うのですが、どういう風にプロジェクトが進められたんでしょうか?」

小針「元々、商品の使い方を解説するウェビナーや簡易的な商品撮影は社内で行なっていたんですね。ただその時は、毎回セットや照明を一から組んで撮影していました。そうするとどうしても準備や片付けの手間も毎回かかり非効率だったんです。そういった経験があったので、スタジオを作る際は、『どうすれば準備の手間を少なくできるか?』という発想で、要件を固めていきました。」

「もともと映像制作のノウハウは一定溜まっていたんですね。そういった進め方は、初期メンバーの小針さんと島崎さんのお二人で考えられたんですか?」

小針「はい、島崎と一緒に相談しながら決めていきました。もちろんスタジオを作るということは社屋をいじることになるので、設計会社さんとも相談しながら作っていきました。」

「スタジオを作る上で、特にこだわったポイントはありますか?」

小針「我々らしいポイントとしましては、例えばスタジオ備え付けの照明です。
商品の写真を撮る時に何が一番大変かというと、やっぱり照明のセッティングだと思うんです。照明にはどうしてもスキルが必要になってくる。ただ、我々のようなBtoBの商材写真でそんなに照明を細かく突き詰めていく必要があるのかと言われると、必ずしもそうではないと私は思っているんです。

工場の機械室に置かれるようなものなので、お客様が商品を買う意思決定をする際に意匠性というよりは安定性や機能性が求められる。だから、語弊を恐れず言えばある程度キレイな写真が撮れればいいんです。どちらかというと、クオリティが高いものを時間をかけて出すというよりも、そこそこの品質の映像・写真コンテンツを、いかにスピードを持って出していくかということが大事だと思ったので、照明を都度セッティングする必要のないように備え付けで作ったんですね。商品をここに置けば、スイッチをオンして光量を上げるだけでキレイに撮れる。

さらに言えば我々インキュベーションチームも、いろいろなコンテンツを作っているので、どうしても付きっきりで全部自分たちで撮影することはできない。だから我々だけではなく事業部や開発・設計の担当者でも、すぐに写真が撮れるようなスタジオになっています。」

映像制作チームを0から作る!メンバー選定の秘訣とは?

「今回のプロジェクトの立ち上げを担当するのがお2人になったのはどういう選定理由だったんですか?」

小針「実は私はプライベートでコスプレイヤーをやっていまして。コスプレってお互い写真で取り合うんですね。なので、私はもともとポートレート写真を好きで撮っていたんです。そういうことも周りは知っていたので私が写真関係の担当になって、島崎は映像担当ですね。彼は映像をプライベートで元々撮っていたので…。だから、映像と写真を作れるメンバーっていう選定基準で集められた感じですね。」

島崎「プライベートでは音楽ライブの撮影をしたり、音楽配信や収録、PV撮影などを趣味で少しやっていました。その関係で、ウェビナーを配信しようとなった時に自分が担当するようになっていきました。」

「じゃあ、お2人ともプライベートでやられている土台があったんですね。ちなみにインキュベーションチームになる前は何をされていたんですか?」

島崎「主に塗装設備の担当をしていました。なので、業務としては結構ガラッと変わっています。」

小針「私も品質保証でコンプレッサ関係のクレームをいかに減らしていくかを担当していました。完全に技術寄りな仕事だったので、全く別分野から異動してきた感じです。」

「プライベートでやられていたとはいえ、業務として専門的に映像や写真をやっていた訳ではないお二人に裁量を委ねて立ち上げをされた会社も凄い!と思いました。お話を聞いていると、トップダウンというよりも自分たちで何をやるか考えて決定されている印象があるんですが、比較的その辺り自由度があるんですか?」

小針「そうですね。スタジオを作ろうってこと自体は当時の社長の壺田からの号令で始まったんですけど、どういうふうに運用していくかとか、どういう機材を揃えていくのか。どういう形のスタジオにしていくのかも含め、全部自分たちで考えて作っていっています。」

「そこの裁量を委ねる感じが、すごくアネスト岩田カルチャーだなと感じます。それはコーポレートムービーや新卒採用ムービーを作った際に自分も感じたところでした。
そして最初の2人が立ち上げて、山中さんが3人目として入られたのは、どういった経緯でしたか?」

山中「私は社内公募があってインキュベーションチームに異動してきました。
もともと私は塗装の研究開発とマーケティングの仕事をやっていて、感染症の流行でビジネスも色々影響を受けていたときに、ある意味デジタルマーケティング的なことをやっていたんです。

例えば、商品を試したくてもお客さんが来社できないから、お客さんがリモートで実験を見れるようなシステムを自分で構築したり、海外の展示会場にリモート中継してWEB会議みたいな形で商談をできるようにしたり、そんなことをやっていました。」

「リモートで実験を見る設備は自分も拝見しましたが、あれは山中さんが立ち上げたんですね!山中さんもプライベートで映像や写真などの活動をされているんですか?」

山中「私もプライベートでDJと音楽制作をやっていまして。基本的にはメインは音楽なんですけど、プロモーションで動画や写真を撮るスキルもある程度はあったんですね。なので社内公募があった時に面白そうだし自分の力が活かせると思って、異動した経緯になります。」

(エレファントストーン 嶺)

「改めてお話を聞くと、前提として自分達で考えてやってみるカルチャーが社内にありますよね。映像制作の内製化を成功されているのは、それが大前提ですね。そういう社風の会社じゃないと、なかなかできないような気がします。

実は、他の会社さんでもインハウス化の支援で講座的なことをやらせていただいたこともあるんですけど、なかなか苦戦されている会社さんの方が多いです。例えば撮影や編集の初歩の技術を広報部署の方にレクチャーしても、少し時間が経ってからお話を伺うと『結局手が回らなくなってきて、また外注するようになってしまった』といったことが起きています。結局他の業務と兼業でやろうとしても、映像制作の工数って相当大きいじゃないですか。なかなか両立は難しいですよね。

また、インハウスを立ち上げる際に専業させるためのプロのクリエイターを社員採用してみても、そのクリエイターが会社とカルチャーマッチしなくてハレーションが起きたり…あとは映像制作をどう業務として評価すべきか、評価基準はなんなのか、みたいなところも難しかったりします。

アネスト岩田さんの場合は、まずちゃんと専業させる体制を作っている。そして、外部からの採用ではなく、もともと映像や写真が好きで技能のある社員から人選して立ち上げている。そしてその上で裁量を委ねてやらせる…ここの部分から、もうすごく違うなと感じます。」

まとめ

特集第一弾の今回は、アネスト岩田のインハウス化ご担当者3名からインハウス化に至った経緯やどのようにプロジェクトを進めていったのかをお伺いしました。

次回第二弾ではインキュベーションチームの皆さんにフォーカスし、技術習得の方法や人材育成について聞いていきます。次回もお楽しみに!

“映像制作インハウス化 成功への道”シリーズはこちらからご覧ください!
第二弾:インハウスでの映像制作における人材育成とは?【映像制作インハウス化 成功への道 #2 】
第三弾:実践企業に聞く、メーカー企業がインハウス制作を成功させるためのポイント【映像制作インハウス化 成功への道 #3】

この記事を書いた人

嶺隼樹
エレファントストーンのディレクター / マネージャー Twitter:@junkimine

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