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実践企業に聞く、メーカー企業がインハウス制作を成功させるためのポイント【映像制作インハウス化 成功への道 #3】

実践企業に聞く、メーカー企業がインハウス制作を成功させるためのポイント【映像制作インハウス化 成功への道 #3】

画像:アネスト岩田株式会社 AAAstudio(スリーエースタジオ)外観

こんにちは!エレファントストーン ディレクターの嶺です。

昨今、映像制作業務を外注せず、社内で部署を作りインハウス化(内製化)を行う企業が増えてきています。しかし、いざやろうとしてみてもどこから始めればいいのか分からなかったり、部署を作って実践してみても上手く行かなかったりというケースも少なくないようです。

今回、エレファントストーンがこれまで複数の映像制作をさせていただいたアネスト岩田株式会社様(以下、アネスト岩田)がインハウス化を行ったとのお話を聞き、弊社プロデューサーの美谷島とディレクターの嶺による担当者様へのインタビューを実現。実際にインハウス化を行った方々の貴重な生の声を特集として3記事にわたりお届けします!

特集第三弾となる今回は、インハウス化を実践されてきたアネスト岩田さんが思う「インハウス化を成功させるためのポイント」をお伺いしていきます。

小針さん/アネスト岩田株式会社 インキュベーションチーム
アネスト岩田で映像制作内製化を行うインキュベーションチームチームリーダー。スタジオの立ち上げや現在のスタジオの責任者を務める。

島崎さん/アネスト岩田株式会社 インキュベーションチーム
アネスト岩田のインキュベーションチーム。スタジオ設立当初から映像制作と写真制作を担当。

山中さん/アネスト岩田株式会社 インキュベーションチーム
アネスト岩田のインキュベーションチーム。1年前に異動し、動画編集や写真撮影、映像ウェビナーなどを制作を担当。

インハウス化に唯一絶対の正解は無い

「ここまでお話を聞いていて、一口に『インハウス』といっても会社によって求められる業務の形は千差万別だと感じました。例えば弊社のような制作会社がメーカーさんのインハウス化を支援するとしても、パッケージ化されたプログラムを提供するよりは、コンサルティング的に現在の組織構造やニーズを伺った上で、『ではこういうスタイルにしましょう』とご提案する形が必要だとも感じました。

そして、最初から完璧に機能させることは難しい前提で、ある程度時間をかけてステップを踏んでいく必要がありますね。」

小針「そうかもしれませんね。やっぱり、我々のような業態にとっては社内で映像制作を行うって全く新しい取り組みじゃないですか。だから、スタート段階で理想の運用の姿を描いたりとか、一発目から理想のスタジオを作るっていうのが正直かなり難しいと思うんですよ。

やはり、まずは動き始めてみるみたいなところがやっぱりすごく大事で。長い時間かけて出来上がったものが使いにくいことってやっぱりあると思うので、まずは簡単な形でもいいから作ってみて『いずれこうしたい』『ああいうこともやりたいよね』と増やしていく。」

「もちろん初めたての段階でも理想はあると思いますが、最初から100点を出すのは難しいですし、そこからのトライアンドエラーが大切ですよね。」

小針「編集作業用のパソコンひとつとってもそうですよね。最初は知識がないのでノートパソコンを買ったんですが、自分たちの撮影の質がだんだん上がり、パソコンのスペックが足りなくなって新しいパソコンを買い足したんです。でも、最初から良いパソコンを買えば良かったのかと言うと、多分それはそれで使いこなせなかったと思います。

経営の観点で見ても、費用ばかりかかって使いこなせていないように見えると、それ以上応援してもらえなくなっちゃいますよね。」

「そういったトライアンドエラーの感覚は、ものづくりをしているメーカーさんならではという感じもしますね。業種によって、トライアンドエラーの姿勢が会社に根付いていないこともあるでしょうし。アネスト岩田さんがインハウス化に成功しているのは、そういう相性も影響がありそうですね。
自分達も普段色々な場所に行って撮影を行いますが、メーカーさんとか工場で撮影をすると撮影機材に興味津々で質問してきてくれる方が多いです。」

小針「それは確かにあると思いますね。普段業務でやっていることがまさにトライアンドエラーを繰り返して改善していくことなので。」

「正直、アネスト岩田さんのインハウス事業の立ち上げノウハウは販売できるくらい価値があると思っています。

やっぱりインハウス化を検討されている企業、特にメーカーさんは多いけど、ハードルが高くてなかなか走り出してない会社さんが多いんじゃないかと。ただ、やはり会社によって状況はさまざまなので、どこまで再現性があるのかを判断するのは難しいですが…。」

結局大切なのは、人。

美谷島「ここまで色々お話を伺ってきましたが、みなさんがインハウスを成功させる上で最も大事だと思うことがあれば教えていただきたいです!」

小針「やっぱり人の部分が特に大切なのかなと。環境を作るのはお金をかければできますが、人の成長はそう単純ではありません。

「今日いろんな話を伺って、インキュベーションチームの皆さんの姿勢が成功に繋がっていることをすごく感じました。」

小針「いまインハウスで運用しているスタジオは、これまで外注していたものをインハウスで出来るようにしたことで経費を抑えるコストセンター(※1)なんですよね。このスタジオ自体がお金を生んでいないから、あまり人を増やし過ぎるのも良くないっていう考えになっちゃうじゃないですか。

私たちとしては、このスタジオをプロフィットセンター(※2)としても機能するように成長させていきたいという気持ちがあります。それができるようになると、お金を生むところなので新しい人材も呼びやすくなりますし、規模としても大きくできる。」

利益を生み出す』というと、新規事業を立ち上げるようなイメージですか?」

小針「そうですね。ただ当然、新規事業を立ち上げるようなことになると相当な苦労があるし、儲かるかどうかはやってみないと分からない部分もあります。ニーズを顕在化させるとか、顧客の解像度を上げるとか、そういうのって実際に市場に出てトライしてみないと分からないじゃないですか。自分たちが作るクリエイティブがどれだけお客さんにとって魅力なのか、それを知るためにもまずちょっと出てみたいという気持ちもあるんですけどね。今スタジオを運営しているインキュベーションチームは新規事業を立ち上げるチームということでもあるので、今考えて動き始めているところです。」

「すごく良いスタンスですね!インキュベーションチームの皆さんの事業者目線のスタンスが本当に素敵だなと思うのですが、その視点を自然にを持つようになるのって難しいですよね…。そういう事業者目線の発想って、社内教育されるものなんですか?」

山中会社の風土ももちろんありつつ、プライベートの経験も強いのかなって思います。我々はプライベートでも色々な分野のクリエイターとして活動しているのですけど(※特集#1を参照)、それには主体性がすごく重要で、自分の責任で全て動かないといけません。

自分でお金を出して、自分で学習して、アウトプットを出す。その中で鍛えられて、そういう考え方が醸成されたのかなっていうのは感じているところではあります。」

小針確かにその感覚はあるかもしれないですね。山中も自分で作曲していたり、島崎も映像や写真撮影をやっていたりしているので、『自分でサービスを提供できるだけのスキルを持ちたい。』『自分のスキルを高めていけばもっといい仕事ができる。』っていう考え方が根底にあるメンバーが集まっているのは大きいと思います。

その上で、やっぱりこのスタジオを任されてるっていう意識ですよね。どんな機材を買うかとか、スタジオにどんな音楽を流すとかも含めて、割と自由に任せてもらっているんですよ。自分たちには当然、その上で会社にとっても良い空間である必要があると思うんですけど、これを守るも壊すも自分たち次第だよねっていう感覚で、上からちゃんと管理しろって締め付けられる状態ではなくて自分達で綺麗に整えて改善することで『スタジオ良いよね。』と言ってもらう。そういう主体性みたいなところはすごく強いかなとは思いますね。」

お話を伺っていると技術的なところもそうなんですけど、そもそものインハウス制作を行う組織の座組みの作り方であったり、そこで働く人がそもそもクリエイティブに強い興味感心があるとかモチベーティブなマインドが形作られていないと、どんなにやっても効果を出すのが難しいだろうなと実感しました。」

小針すごく重要ですね。どんな仕事でも自分の仕事を自分ごととして捉えられるかが大事だと思います。この仕事でいえば、駅のホームを歩いていてポスターを見た時に『すごい、これカッコいいな』って思えるかですよね。その人が日常を生きていく中で、チラシを見た時に『このデザイン良いからちょっと真似てみようかな』と興味を持てないと正直厳しいかなと思っています。興味を持てない人に『日常生活でアンテナ張って』と指示しても出来ないので。

逆に、今は業務で品質保証をやってますとか開発をやってますとかでも、興味・関心のある人がモチベーションを持って取り組めれば、インハウス化はできるんじゃないかなって思いますね。」

まさにそうですね。弊社でも新人教育の中で難しさを感じる部分でもあります。例えば、演出という仕事はどうしたら面白くなるか、どっちがカッコいいかなどを判断して選択して作っていく作業ですが、まさにおっしゃったように、そこに興味が無い人には難しい。『こういうのカッコいいな』って思える感性があるんだったら、最初は素人だとしても成長していける可能性は大きいと思います。」

島崎やっぱり自分たちも、元々好きだったことを仕事に活かして楽しくやっているというのが一番モチベーションになっているのかなと感じています。プライベートの趣味では普通使えないような機材も、ここだったら自分達の判断で導入して使うことができる。撮影で少しずつ使っていくと、スキルはガンガン上がってくるわけですよ。」

要は会社の利益と自分自身が心で感じるメリットを一致させているということですよね。映像技能の練習をやりたいと思ってやるのか、強要されるのかで全然違いますね。アネスト岩田さんのお話を聞いていると、インハウス化を進めた皆さんが、そこを一致させられているというのが強みですし、組織や事業の立ち上げにおいてとても大事なことだなというのを感じました。」

※1 コストセンター:コストだけが集計され、利益は集計されない部門
※2 プロフィットセンター:利益を生み出す部門

対談を終えて

アネスト岩田さんに色々お話を伺う中でまず見えてきたのは、インハウス化の組織づくりをその企業の特性に合わせて行うことがとても重要だということです。

今の時代、数ヶ月で学べるスクールも沢山ありますし、YouTubeだけで独学で学ぶこともできるので、映像制作の技術習得自体は誰にとっても不可能ではありません。

ただ、技能習得にも実務にも多大なリソースが割かれるもので、なかなか他業務との兼務では成果を出すのは難しいです。さらに、自ら積極的に学ぶ姿勢のある人材を登用しなければノウハウが蓄積されずクオリティは上がっていかないですし、そうした人材の働きが適切に評価される評価制度も構築していかねばなりません。

しかし、いわゆる「クリエイティブな仕事」とされる映像制作を社内で行うにあたってどのような軸で評価すればいいのか、他業務との評価軸の性質の違いに悩む企業も少なくないと思います。ここの設定を間違えてインハウスの映像制作業務が下手な特別扱いや、逆に何が評価されるのか分からない閑職扱いになってしまうと、人材離脱にも繋がってしまいます。

まず「インハウスでの映像制作を会社の中でどのように位置付けるのか」「どういう価値を生み出す部署と定義するのか」そこを考えることがインハウス化成功の第一歩だと言うことを、アネスト岩田さんから学ばせていただきました。

アネスト岩田の皆様、ありがとうございました!

 

“映像制作インハウス化 成功への道”シリーズはこちらからご覧ください!

第一弾:BtoBメーカーのアネスト岩田がインハウスを始めた経緯【映像制作インハウス化 成功への道 #1 】

第二弾:インハウスでの映像制作における人材育成とは?【映像制作インハウス化 成功への道 #2 】

対談の様子はアネスト岩田さんのYouTubeチャンネルでも公開中です!


 

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この記事を書いた人

嶺隼樹
エレファントストーンのディレクター / マネージャー Twitter:@junkimine

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