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音楽の世界観を増幅させる、VJ(ビデオジョッキー)の世界
こんにちは、エレファントストーンの深津です。
皆さん、VJという職業をご存知でしょうか。VJというのはビデオジョッキーあるいは、ビジュアルジョッキーと呼ばれる言わば映像版のDJです。
DJが音楽を繋げる中、音楽とリンクさせるように映像をリアルタイムでミックスして いく人のことを言います。今回はそんなVJの魅力について書きたいと思います。
ライブやフェスで流れている背景の映像、気にしたことありますか?
VJがつくり上げる映像を一番身近に見ることができる場所、それはライブやフェス、クラブですが、演奏やパフォーマンスを見にいくことが主目的になるフェスやライブだと、映像まで気にしていない人や映像の存在に気づかない人も意外と多いのではないでしょうか。
映像と音楽が綿密にリンクしているおかげでその映像もその空間や世界観の一部として馴染んでいるとある意味“気づきづらい”映像ですが、今やライブの世界観をつくり出すためには必要不可欠な存在となりつつあります。
とはいえ、ライブではさまざまな種類の映像が見られると思います。フェスなどではバンドロゴだけが映っていたり、MVのワンシーンが流されていることも珍しくありません。片や、クラブなどではBPMに合わせて普段見ることのないようなリズミカルな映像が展開されていることもあります。
このようにVJとはアーティストや音楽ジャンル、そして場所や空間によって適した映像を流すことで音楽の世界観を増幅させる役割があるのです。
VJが特徴的なアーティスト
ここからは実際に私が見てきたVJが魅力的なアーティストやイベントについてご紹介していきます。
The Chemical Brothers
もはや音楽と同じくらいVJが重要なアーティスト。トムとエドが奏でるダンスロックに合わせ、MVに登場する個性豊かなキャラクターたちが巨大なモニターに現れます。映像とリンクさせることを前提としたパフォーマンスは、セットも驚くほど巨大であり、毎公演その規模の大きさに驚かされます。
映像だけではなく、巨大なセットやライティング等、総合的にこの規模の空間体験ができるアーティストはなかなかいないのではないでしょうか。私も2019年のフジロックで見ましたが、全身を包み込むような舞台演出の虜になりました。
The Chemical Brothers – Go (Live at Glastonbury 2019)
電気グルーヴ
石野卓球とピエール瀧による日本を代表するテクノ・エレクトロユニット。ライブでは立体的な液晶モニターを使用し、アーティスト本人たちをモデリングしたと思われるキャラクターたちが楽曲の世界観に合わせてさまざまな姿を見せてくれます。
VJはもはやグループメンバーとも言っても過言ではないほど、毎公演担当しているDEVICEGIRLSこと和田一基さん。彼がつくり出す唯一無二の映像の特徴は、定番な映像展開もありながら、そのライブだけでしか見ることのできないリアルタイムで行われる映像ミックスにあります。一度見たら病みつきになること間違いなしですが、電気グルーヴ以外に、フジロックフェスティバルのラストアクトを彩る総括VJも名物です。開催される3日間、日中に撮り溜めておいた素材も使用しているとか…!
実際に私も見たことがありますが、そのフェスに参加した人に響く「思い出ハイライトVJ」にはグッと来るものがありました。
電気グルーヴ 「人間大統領」from『TROPICAL LOVE TOUR 2017』
Tycho
情緒的なインストサウンドが特徴のTycho。僕が初めてステージを見た時は、そのメロウでアンビエントな旋律にぴったりのビジュアルエフェクトに引き込まれた記憶があります。キャンバスにアクリル絵の具を弾かせたような豊かな色彩の映像が楽曲の世界に深みを持たせていました。夜の森に広がっていたその光景は未だに忘れることができません。
Tycho-Daydream @ TAICOCLUB716
JUN INAGAWA(MAD MAGIC ORCHESTRA)
イラストレーター、DJ、アニメの原案などを手がけるマルチアーティストのJUN INAGAWA。そんな彼はMAD MAGIC ORCHESTRA、通称MMOと呼ばれる大規模なパーティを定期開催しており、そこでは彼のつくり上げる唯一無二の空間が広がります。
その中でも印象に残るのが代官山Unitで行われた”MMO Surrender”というイベント。武蔵野美術大学電子音楽研究会とコラボし、サークル状の立体的な液晶を3枚使った空間演出が特徴的でした。そこでは時代を超えたクラシック映画のオマージュや幾何学模様を使ったリズミカルな映像が展開され、様々なDJによって繰り広げられる音楽の世界をVJで拡張していたと思います。
MAD MAGIC ORCHESTRA × MAU EMS – Official Aftermovie|武蔵野美術大学電子音楽研究会
VJのつくる映像は表現の幅が広い
これまで紹介してきた映像のように、VJがつくり出す映像には様々な種類があります。The Chemical BrothersのようにBPMに合わせてリズム良く動くグラフィカルな映像もあれば、Tychoのようにアンビエントな音楽と合わさった幻想的な映像まで、その種類は数え切れません。
そのため、「VJのつくる映像とは」を定義することは非常に難しいことだとは思います。映画やドラマであれば基本的には四角いフレームの中で物語を構築していきますが、VJはどうでしょうか?
小さいクラブのスクリーンで流すこともあれば、スタジアムの大きなモニターで流すこともあるでしょう。平面なのか立体なのかも異なってくる。そのため、VJがつくり上げる映像は表現の可能性の幅が広く、多くの種類が存在するのです。
私自身、ライブやクラブでさまざまなVJを見てきましたが、場所やアーティスト、VJによって無数に存在する映像表現には毎回驚かされます。再現性がなく、場所や空間によって毎回異なる映像体験ができることがVJを見ることの魅力の一つだと思います。
【おまけ】元祖VJ?映像とリズムをシンクロさせた古き良きアニメーション
ここからはちょっとおまけです。VJがつくり上げる映像には「映像と音がリンクする」すなわち「映像と音楽が融合する」という特徴が挙げられます。
そういった映像はデジタル技術が発達する前からつくられていましたが、その時代にはVJという職業はありませんでした。ただ、現代のVJがつくり上げる映像に類似した、言わば原点のような作品はアナログ全盛期のはるか昔につくられていたのです。それがこちらです。
Norman McLaren /Synchromy
こちらは、カナダのアニメーション作家のNorman McLarenの『Synchromy』(1971年)という作品です。フィルムを使用した実験的な映像やカリグラフィを得意とする作家ですが、見事なまでに音楽とリンクした本作品は、視覚的にも反復するリズムを感じる映像に仕上がっています。
まとめ
VJがつくる映像は、ライブで行われる一回限りのパフォーマンス作品とも言えます。ネット上でアーカイブされた映像を見ることもできますが、VJの凄さや魅力を感じるには実際に足を運んでみることが1番です。
今までVJの存在を気にしていなかった方も、この記事をきっかけに魅力に気づいていただけていたら嬉しいです。
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