SPECIAL

映画館探訪~渋谷『ル・シネマ』Bunkamuraに佇む秘密基地

映画館探訪~渋谷『ル・シネマ』Bunkamuraに佇む秘密基地

今回から定期的に、私が訪れたことのある映画館を紹介していきたいと思う。栄えある第一回は、渋谷は道玄坂にあるBunkamura内「ル・シネマ」だ。

私が最初にBunkamuraに訪れたのは小学生の頃、そして映画館で映画を見たのは中学生ぐらいの頃だったと思う。ジャンヌ・ダルクかなんかの映画だったと記憶している。

当時、映画館といっても新宿『バルト9』のような最先端の劇場も、ショッピングモールに併設された大型の劇場であるシネマコンプレックス(シネコン)という形態もなかった。

映画館といえば少し汚く、そして大人の香りがする……そんな世界だった(確か入れ替わり制もなく一度見た映画をそのまま見ることもできたはず)。そんな中で訪れた「ル・シネマ」は小さめながらも清潔、ビルの高層階にあるというのも当時は珍しく、なんだか大人になった気がしてとても印象に残っている。

いざ「ル・シネマ」へ

その姿は平成が終わろうとする今でも変わらない。

映画館までのお気に入りのコースは、渋谷駅から徒歩で東急デパートへ入った後にレストランフロアから専用のエスカレーターを使って映画館のあるフロアへ下りていくルートだ。



直接、隣接するBunkamuaからエレベーターで登っていくのもよいのだが、デパートの端にこじんまりと存在しているエスカレーターにのって降りていくと映画館の狭い入口が見えてくる、というのが何とも「秘密基地」に来た感があって、たまらない。

ちなみに、しばしばレストラン階にあるほかのエスカレーターと間違える人がいるのか、映画館へは奥のエスカレーターから連絡しております、と書かれた表札がある。そう、中央のエスカレーターにのると本屋に行ってしまうので注意が必要だ。

エントランス・ホワイエには、映画館前にちょっとした食事を販売するカウンターがある。しかし、他の映画館と違い食べ物は映画館へは持ち込むことはできない。そばにあるテーブルや立食で食べてから映画館へ入る。ここでは、ポップコーンの音で映画が害されることはない。

単館系

「ル・シネマ」で上映されている作品は、あまりメジャーなものは多くない。いわゆる単館系といわれるものが多く、近くにある渋谷HUMAXやTOHOシネマズのような大きなスクリーンに巨大な予算がかかった……というような映画は上映されていない。

円山町にある「ユーロスペース」や渋谷から表参道方面に進むとある「シアター・イメージフォーラム」と同じく、そこでしか観られないこだわりのある作品が上映されている。中には上映期間を延長するロングランの映画も登場しているという。

現在(3/1現在)は、『あなたはまだ帰ってこない』『ヴィクトリア女王 最期の秘密』などが上映されている。

映画館内には2つのミニシアターがあり、ル・シネマ1が150席、ル・シネマ2が128席となっている。私が席を選ぶときには「前列3つは見上げる形になるので4列目から後ろがおすすめ」と言われた。

ミニシアターなので席数は決して多くもないが、小さくもなく丁度良いイメージを受ける。

帰りはBunkamuraで文化を感じて



さて、映画を観終わった後のお楽しみは(今度はエレベーターで下へ降りて)Bunkamuraを見て回ることだ。

Bunkamura内にはクラシック音楽を中心にコンサートを行う「オーチャードホール」、演劇を行う「シアターコクーン」、美術館の「ザ・ミュージアム」、展覧会などを行う「ギャラリー」がある。

どれも芸術・アートのジャンルに属するもので、自分の想像力やインスピレーションを掻き立てるものだ。


私がとりわけ好きなのは地下1階の景色だ。

吹き抜けの中庭には滝があり、端にはレストラン、そして横にはお気に入りの『ブックショップ ナディッフモダン』が見える。


この本屋は「絵画、彫刻、映画、写真だけでなく、音楽や建築など視覚芸術にとどまらない20世紀の芸術を幹とし、人・時代・場所を支点として好奇心の枝葉が広がっていくように、文学やライフスタイル系の書籍、絵本やデザイン雑貨なども集めた樹木のような書店」と公式サイトでうたわれている。


ヨーロッパの本屋のような雰囲気があり、階段を登っていく中二階のような部分の作りがたまらない。ここで1日物思いにふけたい気にさせてくれる。30年以上変わらぬ佇まいを見せており、ほっとした気分にさせてくれる。

この日は1階ではいくつかの展示が行われていたが、どれも自分の知らない世界のもの。ここでは1フロアごとに自分の知らない世界の扉を開けてくれる。好奇心の尽きない人間にとっては、まさに秘密基地のような場所だ。

 

この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊するも現在は自粛中。

ZOOREL編集部/黄鳥木竜の書いた記事一覧へ

タグ

RELATED ARTICLES 関連記事