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悲喜こもごもはネットで?「プロ野球のドラフト」配信の競争が激化

悲喜こもごもはネットで?「プロ野球のドラフト」配信の競争が激化

17日(木)の17時より開催されたのが「プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」、いわゆるプロ野球のドラフト会議だ。これまで指名にまつわる悲喜こもごもが起こっていたドラフト会議だが、今年は大船渡高校の佐々木朗希投手や星稜の奥川恭伸投手、明治大の森下暢仁投手の「BIG3」をはじめとした投手が豊作。注目度も高く「当たり年」と呼ばれていた。

このドラフト会議、予想通り奥川、佐々木投手らに複数球団が指名が集まった。平日の夕方としては異例の平均視聴率11.0%を記録し、暗い話題の多いテレビ業界に明るいニュースを届けた。ところが、11%という数字以上に潜在能力があるという。その理由は時間帯だ。

今回のドラフト会議では平日夕方開始ということで、一番のターゲット層である会社員の男性がテレビで見ることはできなかった。そのために多くはインターネットでの配信サービスに流れたのだ。

ネットで見れる生中継、生配信サービスは以下だ。

Paravi(パラビ)

特設ページにて生配信を行ったのがParavi(パラビ)だ。

2018年4月にスタートした動画・映像配信サービスで、いわゆるNetflixやAmazonプライムと同じカテゴリのサイトだ。Paraviは月額925円(税抜)の定額課金による有料サービスであるが、初回登録から30日間は無料なためそれを生かしてドラフトを見ようと登録したユーザーも多い。

東京放送ホールディングス・日本経済新聞社・テレビ東京ホールディングス・WOWOW・電通・博報堂DYメディアパートナーズの6社の共同出資。サイトには「WOWOW」というボタンがあり、WOWOWを別料金(税抜2,300円)で視聴することができる。このように都度課金のサービスが別途あるのも特徴だ。

なお、Paraviの開設に伴いTBSオンデマンドはサービスが終了となっている。今回のドラフトでは”流しのブルペンキャッチャー”こと安倍昌彦氏の解説で、1位指名から終了まで完全生配信した。

BASEBALL GATE

Paraviにも出資している博報堂DYメディアパートナーズが運営する野球サイトが「BASEBALL GATE」だ。

プロ野球専門のサイトということもあり、生放送との相性は抜群。私も今回BASEBALL GATEで視聴していたが、生配信の画面とは別に、ドラフト候補の選手名鑑、ドラフト会議に関するニュースと、相まって見ることができる。これはネットでの映像配信と非常に相性が良い。

例えば、誰か知らない選手が指名されたとしても、画面下の一覧表から「選手名」を押せば彼らの写真やデータを見ることができる。

例えば奥川投手をクリックすると

このようなデータが見ることができる。

リアルタイムに指名が進むドラフト会議は「休憩」時間も多い。その隙間時間を埋めるためにも「データ」の充実はとても役に立った。

特に 週刊ベースボールが協力とあってか、他のサイトよりもデータ、写真の充実が図られていた。そう、ドラフト会議ではリアルタイムに指名がされるため、マークしていないスカウトが足で稼いだ選手が指名されることもある。

そうした時にデータがなく、データ配信が追い付かなかったりデータが少し遅れて出たりするサイトもあったのだが、その中では一番早かったと思う。

SPORTS BULL

同じくParaviに出資している電通系列のスポーツサイト・アプリが「SPORTS BULL」だ。KDDIと運動通信社がベースに博報堂DYメディアパートナーズ、ミクシィ、講談社、およびプロサッカー選手の本田圭佑氏が手がける個人ファンド「KSK Angel Fund」が出資する豪華な陣容を生かしたニュースのまとめや配信がウリ。

いわゆるスポーツ版Smart News、スポーツナビに近いようなサイトだ。

こちらでも同じように生配信が行われていた。SPORTS BULLでもBASEBALL GATEと同じく週刊ベースボールとコラボし、選手名鑑がライブと共にリアルタイム更新され、仮にトイレに行っている間に誰か指名されても下の表で確認できる親切設計となっていた。

若干だが、BASEBALL GATEと比べると写真が少なく、このあたりはスポーツ総合サイトとプロ野球専門の差であろうか。

このようにドラフトは、プロ野球サイトがテレビ局や広告代理店の出資を行っていることもあり、その出資先で豊富な配信が行われている。テレビ局にとっては全国の社員総動員体制で迎えるマスコミの「お祭り」とも呼ばれるドラフト会議だが、現在はインターネットやアプリでの配信でデータと共に楽しむ方法が広まっている。

これは、ニコニコ動画で将棋の人気が高まったように、インターネットの映像サービスと非常に相性の良いものだといえるだろう。

一方でプロ野球は既得権益の最も厳しいところ、テレビ、新聞、専門の雑誌以外の取材は100%NGで、今回もそうした分野が出資していないプロ野球専門サイトなどでは生配信が行われなかった。このあたりは依然旧体制の名残が残っていて、筆者としては悲しいところだ。

ちなみにドラフト会議は関東よりも関西の方が人気で、昨年は20.9%とさらなる高視聴率を記録していた。

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この記事を書いた人

ZOOREL編集部/黄鳥木竜
慶應義塾大学経済学部、東京大学大学院情報学環教育部で学ぶ。複数のサイトを運営しZOORELでも編集及び寄稿。引きこもりに対して「開けこもり」を自称。毎日、知的好奇心をくすぐる何かを求めて街を徘徊するも現在は自粛中。

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