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アフォーダンスと私たち 第4回 -ナッジについて①-

アフォーダンスと私たち 第4回 -ナッジについて①-

アフォーダンス第4回の本記事では、行動経済学の第1人者、米国シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が提唱する「ナッジ」についてご紹介します。

アフォーダンスのシリーズで、なぜ行動経済学の知見である「ナッジ」を取り扱うのか。どうも自分にはアフォーダンスとナッジという2つの考え方は、よって立つ基盤がどうも似ているように感じるからです。その理由はおいおい。

ナッジとは?-環境をデザインすることによる自発的な行動変容-

ナッジとは人が意思決定する際の環境をデザインすることで、環境を享受する人に(あくまで命令をするのではなく)自然と自発的な行動変容をもたらすための仕組みです。

「環境をデザイン」「自発的な行動変容」

この辺りがナッジを理解するためのキーポイントとなってきています。

ナッジとは英語では「ひじで小突く」「そっと押して動かす」という意味。行動変容をそっと促すナッジは、しばしば母ゾウが子ゾウを鼻でやさしく押し動かすようすに例えられることもあるそうです。

様々なナッジ -階段ピアノ/吸い殻入れ型投票箱/便座に描かれたハエ

環境をデザインすることで、自発的な行動変容をもたらナッジの具体例をいくつかご紹介します。

Piano Stairs -階段ピアノ-

「どうやったら階段を使ってもらうのか?」こういう課題を与えられた時、あなたならどういう施策を思い浮かべるでしょうか? 「階段を使いましょう!」というビラを階段の段差の部分に張る? それとも消費カロリーのビラを貼る? この動画では、「階段の段差をピアノの鍵盤にする」という斬新な手法で「どうやったら階段を使ってもらうのか?」という課題に対して答えています。

Hubbub Campaigns -吸い殻型投票箱-

もうひとつ。次の課題は「どうすれば投票をしてもらえるようになるだろうか?」。Hubbub Campaignsの回答は..「吸い殻入れを投票箱にしてしまおう」。喫煙者なら誰しも投票してしまいますね。ただ、その時に棄権はポイ捨てとなるのだろうか……?

オランダ・スキポール空港の男子便所 -便座に描かれたハエ-

最後にもうひとつ。課題は「どうすれば、便所の中央めがけて小便を放出してくれるのだろうか?」深刻な課題ですね。回答は..「便座の中央にハエを描こう」そうすると、人はハエを実物のハエと見間違え、ハエめがけて小便を放出するのではないか……? 実際この取り組みは成功し、床へのおしっこ飛び散り率は、ハエの絵導入後、80%減少したようです。

アフォーダンスとナッジ

いかにして人を自発的に行動をしてもらうのか? これは不特定多数の人と共に運営する必要のある国、会社、社会にとって、緊急性の高い課題です。

こうした課題に対して、ナッジはこう回答します。「人がつい(=自発的に)運営者が求めるような方向に行動を変容してくれるように環境を変えればいい」。

そういえば、アフォーダンスの定義も環境に関わるものでした。
「モノはある特定の営みの可能性を開いている(Ex.机は平→物を置ける)。動物は、その営みの可能性を受け取り、行動が可能になる(EX.持っている珈琲を机に置く)。」

この観点でいうと、ナッジとアフォーダンスは、とても近しい概念のように思えます。

例えば、オランダ・スキポール空港の男子便所では……

モノはある特定の営みの可能性を開いている = 便器にデザインされた蠅は、人間にとって「蠅を狙う」という営みの可能性を開く
動物は、その営みの可能性を受け取り、行動が可能になる = 人間は、便器に蠅を見つけ、蠅めがけて放出することになる

まとめ

ようやく、アフォーダンスとデザインが結び付いてきました。デザインはアフォーダンスをうまく利用することで、人をある特定の方向に誘導することが可能なのです。

今回説明はしていませんでしたが、ナッジは、人のある特定の心理的な傾向に対して、訴えかけるような概念のようです。次回はこのあたりについて書いていきたいと思っています。

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この記事を書いた人

今津祥
エレファントストーンのエディター

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