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宇多田ヒカル✖庵野秀明のトークセッションが映像クリエイター必見だった(後編)
前回に引き続き、アーティストの宇多田ヒカルさんがエヴァンゲリオンで知られる庵野秀明さんとインスタグラムで対談を行った内容を紹介します。
二人が揃って公の場に出るのは今回がはじめてのこと。第三者を交えず、ゆっくりとお話しをされたのも何と10数年ぶりだそうです。
突如として実現された、日本を代表する天才クリエイター同士によるトークセッションは、
「よい映像とは何か?」
「クリエイティブとは何か?」
といった表現行為をする上で誰もが直面するテーマについて熱く語り合った充実の内容で、まさにクリエイター必見!
本記事では前編に引き続き、およそ35分にわたる対話のエッセンスを印象的な発言をピックアップしながら簡単にご紹介。ぜひチェックしてみて下さい!
宇多田ヒカル「映像は編集がすべて」
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宇多田ヒカル「(映像)は編集がすべてなんだなくらいに感じた」(24分17秒〜)
本作は、宇多田ヒカルさんが撮影した素材をもとに、映像編集をスタッフの辻田さんが行い、それを庵野さんが視聴した上で指示を送り、再度辻田さんが編集し直すというスタイルで制作されたようです。
庵野秀明「カットを割る機械があれば、映画はすべて編集が決めるといっても間違いない」(24分35秒〜)
上の庵野さんの発言は、編集を担当したスタッフに対する労いの言葉でもありますが、現在では急速なスマホカメラの進化によって誰でも手軽にきれいな映像が撮れるだけに、いろいろと考えさせられることが多いですよね。
こうした事柄は、今後クリエイティブの領域でも高度な分業制が加速し、それぞれの個性が掛け合わされることで、予期せぬ表現・新しい表現が生まれる可能性を示唆しているとも考えることができます。
作家性・娯楽性・スポンサー・テクノロジーの四すくみの上で成り立つ創作物
庵野秀明「シンエヴァも100%自分のやりたいものにはなっていない」(44分40秒〜)
“観客が見たいもの”“自分が表現したいもの”“企画者や出資者が要求するもの”の板挟みの中で葛藤した経験は、クリエイターならば誰もが持っているのでははないでしょうか?
「大衆性」「作家性」「スポンサー」という三すくみな欲望のせめぎ合い、テクノロジーに関する技術的制約、人的リソースの環境的制約というクリエイティブを構成する四角形の中で、クリエイターは自己の創作スタイルを確立していく必要があります。
庵野秀明「映画というか、映像はやりたいことよりも、やれること、やらなければいけないことが大きい」(44分50秒〜)
唯一無二の世界観や作家性を持つ庵野さんほどのクリエイターが、「まず、お客さん、次にスタッフ、キャストでぼくは4の次」と、あくまでも視聴者ファーストな作品作りを一貫して強調されていることは、ともすれば自分がやりたいことばかりにとらわれがちなクリエイター心理を見つめ直す上で、大いに参考になります。
そして庵野さんは最後にこう言い放ちます。
庵野秀明「作品は観客が見たときにはじめて完成する」(51分53秒〜)
「喪失」をテーマにした共通した作品作り
宇多田ヒカル「そんなに打ち合わせとかしていないのに、私の歌と庵野さんの作品(『シン・エヴァンゲリヲン劇場版』)がなんか合っていると感じた」(41分32秒~)
庵野秀明「近い感覚があるような気がしましたね、(宇多田さんの)歌を聞いたときに」(41分57秒〜)
本作は、宇多田ヒカルさんが撮影した素材をもとに、映像編集をスタッフの辻田さんが行い、それを庵野さんが視聴した上で指示を送り、再度辻田さんが編集し直すというスタイルで制作されたようです。
宇多田ヒカル「私の歌のテーマは、喪失というものにどう向き合うか」(42分35秒〜)
庵野秀明「(エヴァンゲリヲンは)最終的には、喪失を受け入れるっていうだけの話」(43分45秒〜)
言語的な認識を介さずとも、直感的に共通理解が出来上がってしまうのは、天才クリエイターならではのことかもしれませんが、その背景には「喪失とどう向き合うのか」「喪失をどう受け入れるか」という創作上の共通テーマの存在も関係しているようです。
なお、宇多田ヒカルさんのInstagramには、過去にはONE OK ROCKのTAKAさん、ヒップホップMCのKOHHさん、俳優の中村倫也さんなど多彩なゲストも出演。今後も天才クリエイターの共演に期待大の「ヒカルパイセンに聞け!」から目が離せません!
宇多田ヒカル✖庵野秀明のトークセッションが映像クリエイター必見だった(前編)
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